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2024上半期よかったコンテンツ

2024年の前半も終わったので、ふりかえりも兼ねてよかったコンテンツをベスト10のランキング形式にしてみた。映画、マンガ、テレビドラマ、バラエティ番組とごちゃ混ぜになったランキングになっている。一応、上半期に発表された作品限定というくくりで。


第10位 大脱出2

DMM TVオリジナル作品。企画は水曜日のダウンタウンで有名な藤井健太郎。初手から「クロちゃんが首から下まで地面に埋められている」という絵面だけでもう不条理でめちゃくちゃ面白い。「2」は謎解き・ストーリー要素が「1」より2段階くらい進化していてすごかった。ただ、徹頭徹尾「芸人を極限状態に追い込む」ことで見えてくる人間模様をエンタメ化することへのこだわりとか手の込みように感服する一方で、最終盤の「鍵を探すくだり」は、もはや「面白い」とかではなくない?とか思ったりした。一応伏線回収ではあるんだけど。


第9位 悪は存在しない

濱口竜介作品。自分は映画について造詣が深いわけではないので、濱口竜介のどこが評価されているのか、この映画の何が優れているのかとかを語れるわけではないけど、上半期に観た映画の中では上位に来るおもしろさだった。というか純粋に「目が離せない」映画だった。

一応感想も書いてる↓


第8位 呪術廻戦 27巻

言わずと知れた呪術廻戦の最新刊。正直なところ、死滅回遊編以降は能力バトルの設定をやたら難解にする小賢しさとか、オマージュ・パロディの連発のあざとさとかがあって少し苦手になりつつあったのだけど、今回はかなり楽しめた。今巻のハイライトはなんといっても「高羽vs羂索」。いや、「vs」と書いたけど、途中からこの2人は「戦っている」のかどうかも怪しくなってくる。

「五条vs宿儺」という、内容的にも盛り上がり的にも今作における「頂上決戦」を前巻でやっておいて、その次の巻でこういう「悪ふざけ」をフルスイングして異化しようとするセンスが、照れ隠しなのか捻くれ方なのかわからないけど、この作者にしかできない強みなのかなとか思った。(ていうか、明らかにこっちの方がノリノリで描いてるよね?)

ここでやっていたこともいわばオマージュ・パロディの連発なわけだけど、その「元ネタ探し」的な考察にいちいち付き合わずとも、すべてが「何をこんなにバカなことをやっているんだ?」という感情に回収される面白さがあった。そもそもネタ元の平成前半?ごろのバラエティ番組とか、世代じゃないから自分は全然わからなかった。わからないけど面白かったことがすごい。

ファンタ学園とクリロナはわかった↓

こういうのもソーシャルメディアのオタクウケを狙った宣伝だな、と思う一方で、ちゃんと「やり切っている」のがすごいと思った。「実写化されていない漫画作品をこの動画のためだけに実写化する」というのはわりとセンシティブで神経をつかう作業だったと思う。その点でいえばアニメーションにした方がいくらか楽で安牌な選択だったはず。「この企画でいこう」と決まった会議の過程がすごい。


第7位 「山本裕典、ホストになる」Season2大阪編

Abemaのバラエティ番組内の企画で、山本裕典がホスト業界に飛び込んだ様子を密着したもの。昨今の様々な動画配信プラットフォームのコンテンツというのは、「アンチ地上波」とまではいかずとも「地上波ではできないこと」を競って実現しようとしているように見えるのだけど、その中ではAbema(のバラエティ)が一番面白いと思っている。(その点でいうとNETFLIX Japanはなんか履き違えてない?と思うことが多い)

この企画は「山本裕典」「ホスト業界」という、昨今のコンプライアンスからいうとグレーゾーンに抵触しそうな題材をつかっているのだけど、描いているのはきわめて王道なストーリーだった。とくにこのSeason2の「大阪編」は文字どおりの「友情・努力・勝利」で少年ジャンプをやっててアツかった。

ここ数年のホスト業界〜歌舞伎町界隈は「いただき女子りりちゃん」の件もあって、彼らの文化圏をエンタメとして消費することに若干の後ろめたさがないわけではないけど、(少なくともこの映像に映っているかぎりでは)この店舗は教育ふくめてしっかりしていることがわかって安心して見れた。あと、単純に売れているホストってビジュアルもよければ喋りも面白いので、画が保つんだなとか思ったりした。

あと、これは個人的に最近思っていることだけど、今さらテレビで「努力して成長する物語」とか「仲間と切磋琢磨される物語」とかを見せられても既視感がありすぎて、なんか嘘くさいなと感じたりノレないことが多いのだけど、こういうアウトロー・グレーな題材で描かれると、途端に「見たことがないもの」のように錯覚して、新鮮に楽しめるような気がした。なんか、異常に「リアル」だなと感じる。

その角度からいうと、同じAbemaの「千葉雄喜の勇気貸します。」もよかった。この番組の構造もいわばローカル局によくある「お悩み解決系低予算番組」とほとんど同じだけど、全身イレズミのいかつい見た目の男が田舎の風景に立っているだけで面白いし、毎回そこまで視聴者のお悩みを解決できているわけではないけど、そこになんかリアリティがある。

新年早々NHKで放送されていた「あたらしいテレビ2024」で漫画家の魚豊が言っていたことを思い出したりする番組だった。

「それでも、人間が前向きに生きるために"愛"とか"友情"とかは大切な言葉だと思うんですね。でもそれを直接的に口に出すと嘘っぽくなるから、情報商材っぽくなるから、僕たちはそれを否定した言い方で、ものすごくエクスキューズを入れた形で伝えなくちゃいけなくなっているような気がするんですよね。」


第6位 スキップとローファー 10巻

いま一番信頼しているマンガ。内容はさることながら当然面白いのだけど、今巻の「あとがき」に思わず言葉を失ってしまった。「内容」よりも「あとがき」のほうに重点をおいて評価する、というのは今回のケース上なんとも邪道というか不謹慎なことなのは重々承知しているのだけど、この「あとがき」で描かれていることの「何を描くか」「何を描かないか」「どこまで描くか」「どう描くか」みたいなところの表現にまつわるコントロールに、漫画家として、作家として、人間としてすごいと思った。(「すごいと思った」っていう感想じたいがきわめて他人事のような無責任な表現だとは思うけど、それでも)


第5位 私のトナカイちゃん

Netflixオリジナル作品。冗談みたいなタイトルのテレビシリーズだけど、世界中で予想外のバイラルヒットをしているらしい。30分前後×7エピソードの短尺のシリーズである上に、いわゆる「イッキ見」を促すような構成と、その「怖いもの見たさ」「わかっていてもやめられない」みたいなテーマ性が合致していたこともあって、よくできた作品だった。

単なる「売れない芸人がストーカーに悩まされるスリラー系」の物語なのかと思いきや、話数を重ねるごとに思わぬ方向に展開がツイストしつづけていき、目が離せなくなる。「食らった」度合いでいうと、今年これ以上の作品に出会えるかどうか怪しいレベルでメンタルにきた。

この作品が大きな注目を集めているポイントが、リチャード・ガッドという実在する1人の男が「原作」「主演」「製作総指揮」をつとめているということで、つまり彼が実際に体験したことをそのまま本人が演じている。ゆえにより真に迫るものになっている。さらにさらに、作中に登場する「ストーカー女性」のモデルとされた実在の女性がこのテレビシリーズによって自身の名誉を毀損されたとして訴訟を起こす騒ぎになっているらしい。

ネタバレにならない程度にラストに触れておくと、この一連のトラブルは(完全に解決されてはいないとはいえ)作中で「一件落着」的な結末を迎えるわけだけど、実際に自分が体験したことを「ストーリーにしてしまう」ことって少し恐ろしいなとは思う。自分自身のメンタルヘルスを題材にした作品で、物語の都合のために事実をねじ曲げて語るという行為に危うさを感じる。シリーズ構成があまりにも上手で、「面白すぎる」「見始めると止まらなくなる」作品だったのでなおさら。

作品鑑賞済の人ならば意味が通じると思うけど、結局のところ搾取〜共依存する相手が「Netflix」という巨大企業に変わっただけではないかという見方もできてしまう。

ストーカー女性からすると、このガッドという男が「100%被害者」というわけではないのに、自分のことを勝手に題材にされて、彼だけが世界中から称賛を集めている、という構図に同情できなくもない。このあたりの「場外乱闘」も含めて色々考えさせられる作品だった。


第4位 ヒストリエ 12巻

岩明均というと、「人間ドラマ」「骨太の物語」などといったストーリーテラーとして評価されがちなマンガ家だと思うのだけど、この人はビジュアルイメージ的な意味での「見たことのない絵」「面白い絵」を生み出し続けている作家だとも思っている。それは「寄生獣」でパラサイトに乗っ取られた人間の顔がパックリ割れたときの衝撃からずっとそう。そういう意味ではきわめて本来的な意味でいう「漫画」家だと思う。

あとは、「社会的な人間」という生物があったときに、それが「別の存在」に変化する瞬間(たとえば、死んだり、「獣」のようになったりするとき)に異常なオブセッションがある作家だと思っていて、それはデビュー作の「骨の音」からそうでもある。この12巻でもそのあたりが見どころだった。


第3位 ルックバック(映画)

「ルックバック」についての個人的な感想は、もう過去記事で3つも書いたので出し尽くした感があるし、この劇場アニメ版についても色々言いたいことがないわけではないのだけど、自分のオールタイムベスト漫画をつくるならまちがいなくトップ3には入る特別な原作が映画化され、それが高純度なクオリティでこの世に存在しているということが自分にとって祝福なのでこの順位にした


第2位 異人たち

なかなか心を抉られる映画ではあったけど、総じて「美しい」と思うことが多かった。音楽の使い方とか、幽玄な映像とか、原作の翻案の仕方とか。

以前書いた感想↓


第1位 パスト ライブス/再会

めちゃくちゃいい映画だったので、本当は別に一本分の記事を書いてアップしたかったけど、書きたいことが多すぎてまとまらなかったので先送りにしていた。

ひとつだけポイントに触れておくと、作中で語られる「イニョン」という概念(?)がかなりよくて、「恋人」だとか「幼なじみ」だとか、名前のついた「既存の関係性」にとらわれないありとあらゆる人と人との関わり合いを肯定しているところが素晴らしいなと思った。今は険悪で気まずい仲だったとしても、来来来世ではなにかの偶然で親友同士になっているかもしれない、と思えるようになれば生きていく上で少し楽になれる考え方をもらった気がした。「自分の人生が豊かになる映画」ってこういうことを言うのだと思ったりした。




個人的な総括


こうやってランキング形式にしてふりかえってみると、自分の情報のアンテナは「SNSで話題になっている作品」か「信頼している人がオススメしている作品」のどちらかばかりだなと思って少し反省した。栄養になるものばかり摂取するというのはそれはそれで悪くないことだと思う一方で、自分なりの角度から定点観測したりとか、あるいはたまには「毒」も摂っていかないと結果的に不健康になってしまう気もする。というわけで、試しに「週刊少年ジャンプ」の定期購読を学生時代ぶりに再開してみた。ジャンプを読むことでそれが解消するかはわからないし、途中でやめるかもだけど、とりあえず始めてみた。

あと、活字の本は積んでいるものを何かしらほぼ毎日読んでいるので、今年話題になった小説もいくつか読んでいたりはするのだけど、まだ自分の中で「小説」の感想を言語化したり、評価する軸みたいなものを持っているわけではないので、今回のランキングからは除外した。(「東京都同情塔」とか「歩山録」とかは面白かった)

人文書の場合であっても、読みたいところだけ読むとか、途中で読むのを断念して積んでるみたいなパターンが多すぎて、「1冊全体を評価する」みたいなことがなかなか難しくてランキングには入れられなかった。ので、下半期はこれらの反省点を活かしていきたい。

あと、EURO2024おもろかった。Abemaとwowowありがとう!!!

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