見出し画像

不思議な話 【引っ越し】

これは私が大学生の時の話です。

ある夏の日、バイト先の仲の良い先輩から
『引っ越しするけどお金抑えたいから、彼氏と一緒に手伝って!ご飯奢るから!』とお願いされ、近所だった事もあり彼氏と一緒に手伝いに行くことになりました。

集合場所は引っ越し先のマンションで、朝10時頃に自転車で向かいました。少し分かりにくい場所でしたが先輩がマンションの前で待っており、すぐにわかりました。

パッと見は綺麗に見えるし、入り口には洋風の可愛いアーチがあり
家賃は安いと聞いていたけど、オシャレな雰囲気でいいなぁと思いました。


「休みの日にわざわざありがとう」

『いえいえ、ご飯はお願いしますね!笑』

というやり取りをしながら、入り口にあるアーチをくぐりました。

くぐり抜けた瞬間に何故かゾクッと寒気がしました。

一瞬何が起きたか分からず、辺りをキョロキョロ見渡しました。
すると目の前に駐輪場があり、その辺りが気持ち悪い感じがするのに気付きました。

異変を感じたのは私だけだったようで、二人の様子は変わりなく
変な雰囲気になるのも嫌なので黙っていました。


階段を上がり先輩の新居に向かいましたが、その途中も寒気が止まりませんでした。
嫌な予感がして気持ちが落ち込む中

「ここが私の家」と案内されました。

まだ朝だというのに部屋の入り口から見える室内は違和感しかなく
入るのがとても嫌な感じがしました。

「どうした?遠慮せず入って」

『……はい』

私はこれからこの家で一人暮らしする人に素直に【何か変な感じがする】とは言えず
我慢しながら引っ越しの手伝いが始まりました。


荷物がとても少なかったので、作業自体はお昼過ぎには終わりました。

『思ったより早く終わったなぁ…ありがとう!じゃあ遅めのお昼行こうか』

と一旦外で食べに行く事になり、ホッとしました。




「すっかり遅くなったなぁ…ていうか遠慮なく食べ過ぎ!笑」

「いやぁ…お腹ペコペコで、すみません」

という二人のやり取りを見ながらマンションに帰ってきたのですが

辺りは暗くなっており、昼間の違和感は更に刺さるような不快感に変わっていました。


気持ち悪い…ここ絶対何か変…と思いながら部屋の前に来た時に

あまりに気持ち悪く、直感でここに長居してはいけないと思いました。


「じゃあ家に着いたし飲み直すか!」

『……先輩、すみません。ちょっと疲れたみたいで体調悪くて…』

申し訳ないと思いつつ、ウソをついて帰る事にしました。

マンションから十分に距離を取ってから、彼氏に違和感について聞いてみましたが
何もわからなかったようでした。

あれは気のせいだったのか何なのか?あまり気にせず過ごしていたのですが



1ヶ月程経ったある日、先輩が神妙な面持ちで話しかけてきました。

「新しく引っ越した家さぁ…絶対何か居てる」

私は違和感の事はもうすっかり忘れていたので

『??どういう事ですか?ネズミでも出るんですか?』

「いや…違う」

「うち物少ないから押し入れ使ってなくて、押し入れの前にベッド置いて寝てるけど…夜電気消してシーン…となった後」

「押し入れから人が動く音が聞こえる」


『…え!?』

「押し入れの中で誰かが体育座りでじっとしてて、少し横に動いてゴソって音した」

「そんな感じの気配と音が押し入れから毎日聞こえる。絶対何か居てる」

私はあの違和感はやっぱり気のせいじゃなかったのかと、そう思いました。ただお金がないと困っていた先輩を余計に怯えさせるのは可哀想だと思い
気のせいでは?と誤魔化しました。

その後は特に変な事はなかったようですが
自分の感覚に確信を持った、不思議な体験でした。

他にも不思議な話を書いていますので
怪談や不思議な話が好きな方は、アメブロも見ていただけると嬉しいです

最後までお読みいただきありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?