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【瀬戸内旅】高松→松山5時間18分の”海走列車”

【はじめに】

東京に住む人間にとっては、まだまだ遠いイメージの四国。羽田からならどこも2時間ほどで着き、うどん、お遍路、海の幸など特産品や各地の特色も知っている。
しかし関東から西方への旅といえば京阪・九州が多く、今でも四国は「旅行したことがない都道府県」の上位に挙がる。
今回のNOTEは東京→伊勢→京都の旅の途中、ひらめきで四国へ寄り道をして、瀬戸内海沿いを走る夢のような列車に乗ったときのお話。

【一章】東京→伊勢詣り

私はいつも旅に出るとき、あまり詳細なプランは立てない性分である。今回の旅もそんな感じで、お伊勢さんを回って京都に行くかぁと漠然としたものであった。
そもそも東京→伊勢→京都の流れをどこから着想したかと言えば、落語である。
噺に出てくる江戸っ子の生涯の夢はと言えば、「伊勢参りをして、帰りに京大坂を回って来られればもう死んでもいい」と、マクラでつかわれる。現代では無理をすれば1日で終わりそうなものだが、当時は物理的にも経済的にも人生で一度きりの大旅行という覚悟であった。
東京から夜行バスで伊勢に向かう。到着するや朝イチからお社巡り、伊勢グルメと楽しむなかで、仲良くなった呑み屋の酔客に「高松から松山まで、瀬戸内海沿いを走る単線列車がある」という話を聞く。
私は鉄ヲタではないが、瀬戸の花嫁の歌詞にでもあるような、そんなのどかな情景に惹かれ、ルートを変えて高松へ寄り道をすることに。
そのまま夜行バスに乗り、伊勢→近畿→明石→淡路島と渡り、明け方、春真っ盛りの高松に着く。

朝の高松港。穏やかな瀬戸内海

【JR 予讃線】

 高松観光もほどほどに、松山へ向かう列車を探す。四国の北海岸線を東西に渡るJR 予讃線というものがあり、特急にのれば2時間半ほどで松山へ着くという。しかし一日に数本だけ、昔ながらに瀬戸内の各駅に止まるダイヤが今でも活躍していることを知り、せっかくなのでそれで松山を目指すことに。

瀬戸内海を走る予讃線。鉄ヲタでなくても期待が膨らむ

 お昼過ぎ、2両編成のかわいい車両で高松を出発。しばらくは内陸よりを走るが、丸亀の先あたりから瀬戸内海がチラホラとお目見えしてくる。沿線には至るところに桜が植えられ、のんびりとした旅が楽しめる。

線路脇の桜が至るところで迎えてくれる
新緑の瀬戸内海を走る

【ローカル列車旅の難敵】

 景色も素晴らしく、のどかな旅を提供してくれる予讃線だが車内にはトイレがない。5時間も乗り続けるのに、その恐怖に耐えなければならないのが一番のネック。
どうするのかというと、途中に20分や40分(!)の待ち時間の停車駅があり、このタイミングで駅舎に寄り、用を済ませるらしい。逆に言えばこれ以外のタイミングでもよおすと、途中下車して気長に次の列車を待つしかない。
ビール片手にのんびり観光列車、、とは難しそう。

5時間の長旅のゴールはアンパンマンがお出迎え

 終点の松山へつく頃には日も沈みかけていた。同じく高松から乗った鉄道ファンらしき中年男性や若い女性、途中乗車の外国人や観光客、学生と多数の乗客と共に駅に降りる。ここまでがのどかな駅ばかりだったので、さすが今でも観光と生活に根差した大都市であると感じた。
ここでひとつ問題が起きる。高松駅では交通系ICで入場出来たが、松山駅では使用不可。現金で清算をして取消証明書をもらい、後日他のJR駅にてIC取消処理をしてもらわなければならない。県またぎをするローカル列車旅あるあるか、、。

【松山の楽しみ】

 長旅の果てに、その疲れを癒してくれる温泉街が近くにあるのは、とても嬉しいことである。駅を出て目の前の私鉄に乗ると15分程で道後温泉駅までいける。同じく松山から4駅ほど先にある大街道には新宿、池袋のような繁華街が広がり、食べる買うはもちろん、bar文化が特に醸成された松山では夜の社交場を楽しむことが出来る。
 私の場合はこのまま、また夜行バスに乗り京都へ向かう予定だったので、温泉2軒をはしごして、大街道に戻り名物の骨付き唐揚げ&生ビール、bar3軒をダッシュでこなし松山を発った。

松山名物  骨付き唐揚げと生ビール

【さいごに】

 今回は5時間かかる各駅停車を選んだが、特急に乗っても同じ海岸線を走るので、充分に情景を楽しめるとわかった。昔から四国は交通の便が悪く、今でも苦労することがあるのだと松山の老マスターに聞く。なにかと効率重視の時代ではあるが、時間が許せばそんなゆっくりとした電車旅も、また贅沢なのではないかと思った。

道楽若旦那

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