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蛍を見ながら藤井風について語る

先日、数少ない日本人の友達と蛍を見に、郊外の公園へ行った。

その友達とは去年知り合い、すぐに意気投合した。
彼女はイタリアに私の2倍以上住み、イタリア生活が日本よりもずっと長くなってしまった未婚仲間で、趣味の幾つかが似ているため、初めて会った時から初めての気がしなかった。また、お互いに7、8割が日本語、2、3割がイタリア語で会話できる関係なのも、多分良いのだろう。

さて、21時に公園の最寄り駅で落ち合う中年2人。
彼女は、ご両親が高齢となり、家庭の問題で結構疲れているようで、私も、仕事環境のごたごたで疲れているため、自然の中で蛍の光を眺めるのもよかろう、と誘ったのは私の方だ。
互いの近況を語り、アートと映画について語り、共通の友達について語り、そうこうするうちに辺りの暗さが増してき、蛍のぼーっという明かりがちらりと見えるようになってきた。1つ目の明かりが見えた時には、「おーっ」と歓声を上げる我々。その後、3つ、4つ、と数が増えるにつれ、周囲の人の数も増えてきた。

蛍の光を見るには、携帯の明かりや人の声はない方がいいと誰もが知っているはずなのに、そんなことはお構いなしで叫ぶ子供たち、酒を飲む人、歌うおばさん、自転車のヘッドライトを煌々と照らしてサイクリングをする家族連れ、野糞をする子供…全く以てありえない光景だが、それがイタリア、そう、2024年のイタリアの現実なのだ。
あまりにもうるさいので、私たちは「うるさい、静かにしろっ」と日本語で後ろに向かって睨み、怒鳴るが、所詮真っ暗闇、声だって小さいもので、そんな私たちの声は誰にも届かない😓

歌っている人が多かったせいか、会話は突如、背筋がぞっとする怪談話から歌手へ飛躍する。
友達が、「そういえば最近、『死ぬのがいいわ』っていうカゼ君の歌にハマって、今も頭の中で回っている」というのだ。

「カゼ君、って、『藤井風』君?」と返す私。
友達: 苗字は思い出せないけど、あの歌詞には、昭和を生きた人じゃないとわからないイロイロが詰め込まれているし、歌っている時の表情も曲に合わせて変わるし、それなのにまだ26歳って、逸材よね。
私: 普段はSportifyで色々混ぜて聴いていて、動画は意識して見たことないけど、そうなの?私はリズムやメロディーや声がいいな、と思って聴いていて、表情には注目してなかった・・・。
友達: あの表現力、そしてあのセクシーさ。私、あまり日本人男性の外見には惹かれないけど、カゼ君はセクシー、ほんとセクシー。今彼は成長期よねぇ。世界で色々な人と出会って、絶対バイセクシャルだけど(ノーコメント)、色々な人とかかわって、更に磨きがかかっていく。
私: 確かに、オーラがすごいよね。あれだと、60歳でも彼が魅力的だと思う女性なら口説きそう😄もし○○さん(友達)に近寄ってきたらどうする?
友達: え~っ、こんなまっ平らな体のおばさんに近寄るわけないじゃん(と凄く嬉しそう…シマ子、なんて質問を…😂)

(中略)

私: でもさ、そうやって、昭和の心を持つ若者が突然現れて、私たちの心をつかみ、若者世代にも世界にもそのメロディーを伝えてくれるって、本当にすごいことだよねぇ。藤井君にはこれからもずっと頑張ってほしいよね~。

云々、と、合計2時間半の散歩中、私たちは蛍を見ながら1時間半は藤井君について語っていたと思う。
帰宅したのは24時をとうに回り、稀に見る夜更かしをしたシマ子。

翌日の午前遅く、友達からのメッセージで目が覚めた。
「シマちゃん、昨日は誘ってくれたありがとう。蛍の光に癒されました。これ、カゼ君のYoutubeの動画。これが一番お気に入りだけど、その他もいいからよかったら見てみて」
とある。
続けて、「そういえば風君って藤井っていう苗字だったんだね」と。
そ、そうですよ、だから昨日シマ子はずっと、「藤井君」と呼んでいたじゃないか😅
でも、それくらい彼女は『風君』に夢中だったんだな、とちょっとくすっとなる。

前日は朝から他の町へ行き、夜もたくさん歩いてふくらはぎがパンパンだったので、「朝も出遅れたし今日は読書しよう」と割り切ったシマ子だったが、本を読んで眠たくなってきた時、「そうだ、藤井君の動画を見て目でも覚ますか」という気になり、友達から送られてきた「優しさ」の動画を見る。

「むむっ、な、なんという表情」と、藤井君の顔に釘付けになるシマ子。
そして、「花」「Workin' Hard」「まつり」「damn」「燃えよ」から、藤井君の中学生の頃のピアノの演奏まで、結局はYoutubeの4~5分の1の動画を見てしまった。

夕暮れ時、シマ子が友達に返したメッセージは、
「藤井君、まじ、やばすぎ!今までなぜ彼の動画を見なかったのか?!これからは犬の動画を減らして藤井君だなっ😆」
友達からは爆笑マークだけが送られてきたが、それくらい「藤井風」というアーティストは昭和の心をついてくる人だと思う。
いつか、彼のコンサートに友達と行ける日がくればよいが、そんな日を夢見て、暫くはYoutubeとSportifyで彼の歌声、表情を堪能しよう。

上に3本、リンクを貼ったので、昭和生まれの方、是非ご覧ください。

時折見せる表情が、20代の頃のRAG FAIRの土屋礼央さんに似ていなくもないな、と思うが、これは私が大昔、テレビ局の下請けで働いていた友達主催の飲み会で、土屋さんの向かいの席に着いたことがあるからそう思うだけであって、ナマの藤井君を見たわけではないから、実際のところはわからない。
いずれにせよ、土屋さんもとても魅力的な方でした。

そしてまた、蛍の光も、子供時代を思い出させてくれる郷愁に満ちた温かな光でした。


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