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23歳 初秋 自分へ

「てことで、俺明日で会社辞めるわ。」
2023年 初秋 18時04分 彼からそう告げられた。
その時、私は自分の意見を何も言えなかった。

この出来事がきっかけで私はこのnoteを書いてみようと思い立った。
普段はSNSでプライベート発信など一切したことがなく、むしろ自分の考えや、意見を書き出し、言語化することは苦手な方だ。
 困った時、迷った時には、人に頼るか、宇宙兄弟のムッタさながら、自分では処理し切れないくらいの情報を一気に頭に流し込み、自分が理解できる範囲で物事を割り切り諦めをつける。今までそう生きてきた。

 しかし、今回の出来事は今まで私が経験してきた出来事とは明かに違った。彼との出会い、そして23年春新社会人として4月から働き始めた私にとって、本当に本当に真剣に「自分とは何か」を考えるきっかけになっている。
 きっかけになっていると進行形で書いたのは、このnoteを書いている段階でも私の中でまだ結論が出ておらず、これを作成することにどのような終わりがあるのかが現時点で全く見えていないからだ。しかし、こうやって自分の思考を整理するために、初の試みとして自分の考えを文字に起こすということを体験することで、新たな思考法が身につくかもしれないと考え今回チャレンジしてみることにした。
 以下、「自分とは何か」を整理するために、この数ヶ月間で起きた自分の心持ちの変化を時系列順に記述してみることにした。ぐちゃぐちゃで今も訳がわかっていない部分もあるが、23歳の初秋の自分へ、そしていつかこのnoteを見返して未来で恥ずかしがりながらニヤニヤしている自分へ向けて素直にありのままの今の気持ちを書いてみる。

4月

 今春、真新しいスーツに身を包み23卒新社会人として、私達はある企業の新入社員となった。2ヶ月の研修期間を経て、6月から新入社員は各部署に本配属となり、また新たな生活がスタートしようとしていた。

6月初旬


 本配属から約1週間が経ったある日の就業時間後、彼は私を会議室へと誘った。
「ぶっちゃけ配属されて1週間、かなりこの会社には失望している。会社に失望しているというよりは、この会社で働く人でリスペクトできる人がいないと感じている。
だから、一刻でも早く俺はこの会社を辞めたい。今からそういう動きをしようと思っているが、お前(自分)はどうだ?」

 彼からの突然の告白に正直驚いた自分もいたが、その目から伝わってくる真剣さと、覚悟のようなものが、彼の言葉に重みを持たせ、これは真摯に向き合うべきだと私は一瞬で悟った。

 そもそも彼とは、入社後、研修期間中に仲良くなった。学生時代お互い何をやってきたのか、この会社になぜ入社したのかをざっくばらんに語り合う内に自分とは全く違う価値観や考え方をもつ彼に対して興味が湧いていた。
 彼は一つの物事に対して、目にみえる表面的な部分だけではなく、どういうプロセスを経て、その結果に至ったのかを深くまで考えることが得意だった。哲学的とも取れるかもしれないが、今まで、自分が見てきたもの、触れてきたことから、自分の価値観と物事をすり合わせ言語化する様に、私は素直に「こいつすげぇな」と感銘を受けていた。

 本配属の辞令後、たまたま隣の部署に配属された私達は、席も前後と近く、私は「同期の中で一番すごいと思えるやつの隣席って熱い、切磋琢磨しながら日々仕事がし合えるしラッキー」と思っていた。

 しかし、本配属後業務を行なっていく中で、彼の価値観と、実際にこの会社で経験できることに対するギャップが生まれていたのだろう。前述した通り、配属後1週間で彼は今の仕事の動きとは違う動きをする必要があると見切りをつけていた。
 私たちにとって今の会社で働くことは自分たちのキャリアの1ページにしか過ぎない。私が本当の意味でそのことを理解するのは、今、このnoteを書いている初秋だが、今思えば彼の中ではもうこの時すでに、明確に、冒頭で示した未来が訪れることは予測できていたのだろう。

 だからこそ、彼にとって、自分が本当にやりたいことのためには、この会社にいてはいけない、この会社に居続けることは、自分が自分に嘘をついているような感覚に陥ると感じ、心のサイレンが真っ赤に鳴り響いていたに違いない。

 私はというと、あの夜、会議室で「お前はどうだ?」と聞かれて、率直に自分の中から込み上げてきた思いは「やっぱりこいつおもしれぇ」という感覚だった。
 これから何をし、どのような行動を取るのかはまだ何も定まっていないが、彼の話を聞いていると、「自分を持っていてすごいな」と思うと同時に、身体の内部から熱が込み上げ、彼の話に何度も頷き、心臓の鼓動が高まる感覚を覚えた。そう、私は男として彼に、彼の生き様に惹きつけられていた。

6月中旬


 あの会議室でのミーティングの後、私達は、自分たちで事業を始めようと、仕事以外の時間は全てそちらに費やすようになっていた。元々、研修期間中お互いのキャリアについて話をするなかで「やっぱり将来的には独立して、人と違うことして社会にインパクトを与えたいよな」と話し合っていたため、私たちの動きは自然にその方向性へと傾いていた。細かい動きは省略するが、それからほぼ毎日、本業以外の時間は全て自分たちの事業のために費やすようになっていった。会社は副業禁止なので、社内にいる時は他の人にバレないようにコソコソと、家に帰ったら、必要な事項やどのように進めていくのかを電話しながら話していった。その時間は私にとってかなり楽しくこの時間に生きがいを感じている自分がいた。いくつか話のネタになりそうな事業プランを、VCや投資家、起業家にあてて、フィードバックをもらってを繰り返し、本を読み、少しずつ、少しずつ形にしようと前進しているところだった。

7月


「年内、12月までに何も走り出せなかったら俺たちのチームは解散だな。多分お前は会社に残ることになるだろうし、俺は、年内に事業として始められそうになかったとしてもとりあえず会社を辞める。アメリカにでもいってこようかな〜。」
7月、彼からこのような発言があり、自分たちの今の動きは年内にどうにかして形にしようと自然と期限が先に決まっていた。今の動きを続けて、年内にでも動き出せなかったら、おそらく彼は本当に会社を辞めるだろう。ただ、彼の性格からして、いつその日が訪れるのか、年内という期限は彼の中では自分を鼓舞するためのただの指標に過ぎないのではないかと思っていた。

8月


日々の仕事がある程度一人で回せるようになり、彼との事業に対して、時間があまり取れなくなっているのは明白だった。一方、彼はというと、周りからどんな目で見られようと気にせず、定時になったらさっと仕事を切り上げ、自分の事業のために時間を割き、黙々と目標に向かって突き進んでいた。この辺りからだろうか、私は、自分と彼との熱量の差、本気度に乖離を感じ、本気でこの事業に、自分に向き合っている彼に対して、少し引け目をとっていた気がする。自分が効率的に仕事を回せず、時間が確保できていないことも正直言い訳に過ぎない。欲張りかもしれないが、私はどちらも全力でやり切りたいとそう思っていたため中々結果が出ない本業に対しても、彼との事業に対しても煮え切らない気持ちでいた。

9月


そして、あの日が訪れた。 その日、彼は知り合いに紹介された投資家と面談を行い、その夜、Teamsのチャットに「相談がある。」と連絡が入った。いつもの誘い口調との違いに私は「どうしたのかな ついにその時が訪れたのかな」と内心腹を括り、覚悟を持って彼との待ち合わせ場所に向かった。
「明日会社を辞める。」そう私に宣言した彼の眼差しは、6月、初めて会議室に呼び出された時と同じ表情だった。「これは本気だ。嘘じゃない。というかもうすでに腹を括ってる。」そう感じた私は、何も言い出せないまま、彼の話を淡々と聞いていた。

もう限界だったのだろう。彼にしてみれば今の会社に残るメリットなど何もないし、それよりも今、走り出そうとしているが、全力でそちらにリソースを注げない状況の方がたまらなく嫌でしょうがなかったのだ。

そして、その覚悟を聞いた時、何も言えない自分が本当に情けなく感じた。「OK。俺もちょうどそのくらいの時期だと思っていた。俺もお前みたいに会社を辞めて、この事業にかけてみるよ。」そう言うことができていたら、こんな気持ちにはなっていなかっただろう。正直怖いんだ。内心彼が辞めることに対して、「待ってくれ、まだ早い。もう少し一緒に裏でコソコソと動きながら、計画を続けようよ。」そんな思いを抱きつつ、ただただ焦燥感に駆られていた。

 別に彼と共に、会社を辞める決意をすることが全てではない。しかし、自分が今の自分に一番落胆している所はこの出来事を通して感じた「俺には自分がない」という感覚だった。
 ここ数ヶ月、彼と議論を重ねる中でこのような気持ちになったことは何度かあった。「自分が本当にやりたいことはなんなのか?」「俺は何を目指してる?」「素直になっていないのでは?」考えれば考えるほど自分が何をしたいのか、自分がどういう意志を持って今の行動に出ているのか分からなくなった。ただ「面白そう」だからでは説明がつかない事態に、彼に対して真剣に向き合っていないような気がしてたまらない。
 そして、この日の夜、彼と電話で改めて真剣に話し合いをした。どういったプロセスでこの決定に至ったのか。自分は何を考えているのか。そもそも今まで生きてきた中で、またこれから生きていく中で自分の中の軸となっているものは何なのか。
 彼は上述したような「自分」に対する事柄をスラスラと自信を持って話し、それに対して、表面的でその場しのぎの言葉でしか返せない自分が本当に小さく感じた。もちろん彼にもその気持ちは見透かされており、「結局自分だから。今この悩んでいる時点でお前は会社を辞めるべきじゃないし、絶対にやめられないと思う。一緒に働きたい気持ちはあるが、別に将来の保証なんでどこにもない。」かなり心にグサっとくる言葉ばかりだった。彼と話していて、いつも感じる「俺は本当に今まで、自分に嘘をついて生きてきたのだ」と。今まで表面的に相手に好かれる自分を演じて、その場限りの関係性を構築することが多々あったと自分の過去の行動を振り返り始めた。
「自分にとってのリスクは何か?」
単純に聞こえるこんな問にすら本粋で答えることができない自分に嫌気がさしている。だが、ここで考えを放棄してしまえば、また今までの自分に逆戻りだ。ここはひとつ、自分の気持ちを整理するためにも何か行動を起こして「自分」に向き合ってみようと今このnoteを執筆している。

すでにこのnoteの執筆を始めてから3日が経過した。ちんたらと自分のペースで時間を見つけては思いを書く毎日。すでに現時点で文字数は4500を超えているけど、これを140程度で、もっとライトにネット上に投稿するのがみんながTwitterをやる気持ちなのだろうか。

 ここ数ヶ月本当にさまざまな人と会う中で、いろんな価値観や考え方に触れてきた。その中で若干の心情の変化を感じている。今まで生きてきた22年間でも、いろんな人と会う経験をしてきたのだが、自分の中で、人と触れあう時の感受性みたいなものが育ってきて、同じ話を聞いていても、なぜ、その人はそう言うことを考えるのか とか、なぜこの人は今の自分にこの話をしているのか とかを自然と考えるようになった。要するに自分の中で情報を受け取る時の受け皿が変化し、一度消化してよく考えるようになってきているのかもしれない。
 これは確実に彼との出会いに寄与している部分が大きいと思う。
 そういった面も含めて、彼には本当に感謝しかないし、先日も、彼の相談に乗ったつもりが、気がついたら、俺はどうしたいのか、どうなりたいのか について語るために時間が割かれていた。

今すぐに、自分はどうしたいのか・どうなりたいのかを言語化することはまだできる気がしない。ただ、俺の中で、尊敬する人、この人カッコ良いなと思う人は老若男女問わず、「自分を持っている人」だ。
「自分を持つ」とは一言で言えば自分はこれこれこういった理由で、現在の姿で生き、将来はこうなっていたい を語れる人。
まじでカッコ良いと思う。素直に憧れる。

執筆を進めていると、また心の中でさまざまな葛藤が生まれてきた。自分とはなんなのか。本当にやりたいことは何か。
もう一度、いや何度でも問おう。
人の目に、意見に、感情に左右され、世間の顔を窺って行動するのは嫌だ。
自分がやりたいことに対して、理屈を並べ、ブレーキをかけるのは嫌だ。
そっか、嫌だって感情は結構おもてに出しやすかったりするのだな。

そうこうしている間にも彼は自分の目標に向かって着々と準備を進めている。
その時、俺はどうする? ただ傍観しているだけ? 彼とは道が違ったと割り切って本業に注力する?
疑問符ばかりが生まれる毎日、ただ時間だけは無駄にしたくない。考えることをやめたら、、、いやそれだけは絶対に辞めてはならない。
「人は考える葦である」大好きな漫画アオアシに出てくるセリフだ。
迷い・悩み・考え続ける中でしか答えは生まれないし、今までの自分に一番足りない要素だ。

現実には「時間」という概念が存在する。これだけ訳もわからず迷っている中でも、時が来たら決断を出さなければならない。

素直になろう。全てぶちまけて自分の本当の気持ちを言葉にしてみよう。

23歳 初秋 の自分へ

お前はどうしたい?


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