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 食と文化の謎 


マーヴィン・ハリス (岩波現代文庫)
板橋作美(訳)
2001.10.16
(amazon参考)

生物学的観点からは人間の食用にできるものの多くを、伝統や文化的な考えから拒絶して食事の幅をせばめている人間についてまず考察し、なぜ人間は肉を好むか、ヒンドゥー教徒にとって牛はどう神様なのか、豚はおぞましいか、馬は乗るものか食べるものか…といったことを章に分けて書き進めています。

そしてこの本の最も重要な考え方として、「食べるのに適しているのか」という観点があります。食べ物はまずは「うまい」「まずい」などと語られがちですが、それは試しに食べればわかることですし、「食べる」「食べない」は宗教的な面などで語られがちです。

しかし、ヒンドゥー教にとっての牛を例にあげれば、他の文化圏が想像しがちな「神様としてあがめる」といった単純な面ではなく、牽引動物として使役し、病没後または不要になった場合は、宗教や法的に問題のないルート(他宗教)を通じて市場に出ること、そしてそれらのサイクルがインドの現状(少なくとも執筆当時)に適合していることを、著者は指摘しています。

なぜ牛を食べてはいけないのか、なぜ豚を食べてはいけないのかー、その理由は「宗教で決められているから」というあいまいなものではなく、「その地域の気候や文化にとって効率が悪いから」という、ひどく合理的な理由に基づくものでした。食文化を絶対視されがちな視点でなく、環境を重視して見ることで、文化の越境の可能性を教えてくれる本です。




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