愛とかエロとか

父曰く、人間には格のようなものがあるらしい。
日々を生きることによって格は上がったり下がったりして、なんと格を上げる絵やオブジェやペンダントもあるんだとか。

私が精神疾患を発症したとき、父はトイレ掃除や廊下を磨くことを提案してきた。
曰く「格を上げれば精神疾患は治る」とのことだ。なるほどわからん。
ねえ、お父さん。出来ないことを、なんで「やれ」って言ったの? 私のあるがままは許容してくれなかったね。
まあ、ボランティアを推奨する医師もいるみたいだし、あながち間違いでもないのかもしれない。
その医師もまさか格を上げるためにはそれを推奨しては居ないだろうが。

格とは、何だろうか?
曰く脳傷害の人は格が高いらしい。
だったら精神疾患も脳の病気なのだが。
面白いことに、それを伝えたら父が私を崇めはじめた。
お父さん、違うよ。
上でも下でもなく、対等に目線を合わせてくれたら、すごく嬉しい。
父はきっと一生、格のこだわりの中をさ迷い続けるのだろう。

憎みは歪んだ愛情 という言説を見かけて納得した。
いっぱい人の悪口を言いました。これからも、きっと言ってしまいます。
でも同時に、私、あなたを愛する資格が欲しかったんです。
あなたに、愛して良いよって言われたかった。
私は醜いから、性格が醜いから、これからも嫌われ続けると思います。
私は今、父を愛することが出来ているのだろうか。

あ、傷ついてたんだな。
色んな世界の不条理に。みんなが権利を主張した結果に。
傷ついて、傷ついて、上手く立ち回れなくて嗤われて。
それでも自分なりの権利を主張して、それすら挫かれて。
良いよ。だから世界は回るんだよ。
全て許したい、許されたいと願ってしまう私は、普通ではないのかもしれない。いや、普通なのかな、世の中そんな物語に溢れている。

「普通の感覚」というのは何なのだろうか?
私は今、金属製の薬とオレンジ色の薬を飲んでいる。
発達障害と診断されたときは白と黄色のカプセルを飲んでいた。
これがまたすごくて、世の中にはこんなに沢山の感覚が溢れていたのかと、湧き上がる「発見」に感動しきりだった。
今飲んでいる薬は、むしろ感覚を抑えるものであるらしい。
私という人間は放っておくと要らぬ感覚まで拾ってしまうのだとか。
私は普通がわからない。
凍てつく冬の、しんと静まった雪原の香りに思いを馳せるのは普通ではないのだろうか?

最近気づいたことといえばもう一つ。自分に、色気がないことに気がついた。
なんというか、昔はもっとエロかったように思う。
情動とか、リビドーとか、百歩譲ってパッションとか。そういうものと共に生きていた様に思う。
大人になった、のだろうか?
枯れてしまった、のだろうか?
なんにせよ、色気ムンムンの文章が書きたいものである。

色気といえば、類義語に色香という言葉があるように、香りに心を動かされる人も多いと聞く。
それを言われると私の体臭はずいぶんとジャンキーなものであると思う。
もともと食べ物に左右されやすい体質なのに、スナック菓子やカップ麺が大好きだからだ。
すきピが出来たら花でも食べて暮らそうか。
今、物凄く「にぼしアーモンド」が食べたいのだけれど。

話の持っていき方が強引で申し訳ないのだけれど、そういえば煮干しを食べると頭が良くなるらしい。
ぜひ食べたい。めっちゃ食べたい。
何せ私の頭は思考がゆっくり進む。
薬を飲んでいるから仕方がないと言われることもあるけど、どっこい。私は元々こんな感じだ。
会話のテンプレートを沢山用意しておいて、必要に応じて、頭の中のファイルを開いて使っている。
テンプレート素材が無いときは、会話するのに一週間とか考えて返事をしたりする。
これで外向的性格と笑われるんだから、世の中ってなんだかなあと思う。
今まで沢山の人と話す機会に恵まれていただけで、中身はスカスカの人間でしかない。

昔は人格も使い分けていた。
この場面ではこのペルソナ、この場面ではこのペルソナという具合に。
昔、信頼していた人に打ち明けたら「統合失調症気取りやがって」とキレられた。
その時の診断はADHDだった。

今はこの場面では~ とか気にしない様にしている。
八方美人とか病気気取りとか言われたくないからね。
それでも人によって態度は少しずつ変わってしまうようだ。だってヒヨヒヨの初心者とバリバリの経験者、相手によって投げる球は変わってくるでしょ。それを無意識にやってるだけだよ。
え、意識的にできてた方が良かったくね?

話が戻って申し訳ないのだが、そんなこんなで、テンプレートに無い会話を持ちかけられるとニコニコしてやり過ごすことも多かった。
そういうのが、異性にとっては「エロい」らしい。
やる気がムンムンしてるのに、自己主張しない人。
うーん、確かにエロい、のか?
異性というのは独りよがり極まりない。

今は、聞き返しても大丈夫、どれだけ待たせても大丈夫、どんな態度でも大丈夫。そういう水の中へ引っ越したので、色気がなくなったのかもしれない。
とすれば、きっと、これが本来の姿なのである、と思う。

この生活になってすぐ、仲間から『私ってサバサバしてるから』って漫画読んでる? と言われた。
読んだことはないが、サバサバした女性は色気があって美しいと思う。
とはいえ、自分がサバサバしたいとは思わない。
どちらかというと「私ってじめじめしてるから」とか思っている。キノコが生えていると思う。生えそうだ、じゃない。生えている。
そのうち部屋にカビとか生やすと思う。

そういう人でも色気は出せるんだろうか。
でも、色気を目指したいと思う。
そういえば最近小説を書いていない。
私の中の情動、衝動、リビドー、パッションが動かないから。
色気の無い文章なんて、読んでもつまらないでしょ? 何作か書いてつまらなかった。
つまらない、と言外に伝えられたときはショックだった。
やはり情動を取り戻さなくては。内側からほとばしるエロ。欲しいなあ。

なんだかどうしようもない話になってしまった。
おわり、おわり。

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