CASE 12 エジソン 糖尿病は合併症盛り沢山 糖尿病は発癌リスクも！
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糖尿病シリーズ第二弾
第一弾(CASE 5)で徳川家康がいかにして糖尿病を乗り切ったかというお話をさせていただきました。タイトルの「血糖と決闘(けっとう と けっとう」という駄洒落がなかなか通じずHaruくんちょっと落ち込んでしまいましたが、気を取り直して参りたいと思います！
第二弾は糖尿病の合併症の中心の話題です。
CASE 12 エジソン 診断:糖尿病 糖尿病性腎症
【症例】84歳男性(1847-1931)
【主訴】
全身倦怠感 食欲低下
【現病歴】
アメリカ合衆国の発明家。電話機、蓄音機、電球など現代の生活に欠かせないものを多く発明した。
1日18時間労働を継続し、食事は1日3食とし、デザートとしてアップルパイを好んで食べていたそうである。
運動はほぼしていない。(推測)
35歳前後で身長170cm、体重70kgであり、BMI(body mass index) 24と既に肥満に差し掛かりつつあり、その後さらに体重は増加していた。(推測)
その後も発明に没頭し、食生活は変わらず運動習慣もなし。
やがて糖尿病の診断を受け、82歳の時に食欲低下や全身倦怠感、息切れなどが出現した。
【既往歴】
猩紅熱
高血圧症
難聴
胃癌
【診断】
＃ 糖尿病
＃ 糖尿病性腎症
＃ 胃癌
【経過】
エジソンは糖尿病の診断を受けた後、医師の指導があったにも関わらず同様の食生活を続け82歳に糖尿病性腎症による腎不全で尿毒症を発症した。
84歳で死没。
考察
現時点でのHaruくんの手元にある情報から推察するに、エジソンはアップルパイの食べ過ぎと運動不足により糖尿病を発症したと考えられます。
医師には糖尿病の指導がされたものの、エジソンは1日18時間発明、仕事に没頭し、運動習慣はなく、食事内容も見直されていなかったと考えられます。
色々と調べてみると、エジソンは糖尿病の合併症で死亡したという説が有力でした。合併症が何を指しているのかについは「糖尿病リソースガイド」を参照したところ、腎症による尿毒症という説が有力なようでした。
現代医学では尿毒症があれば人工透析の適応となります。
エジソンが比較的若い年齢で且つ人工透析が普及している時代背景に生きているのであれば人工透析の適応があったかもしれません。場合によっては腎臓移植の適応もあったかもしれません。
＜糖尿病性腎症の一般的事項＞細かい病態は省略
・腎臓の組織を顕微鏡で覗くと、糸球体と呼ばれる血液を濾過して尿を作る構造体が見えます。
・糖尿病性腎症はその糸球体が破壊されます。濾過するための精密な膜は壊れ、破壊が続くと通常は尿中に出ない血中のタンパク質が尿中にじゃじゃもれとなります。その結果全身がむくんで血圧上昇など様々な不具合を引き起こします。末期になると尿が出なくなり尿毒症で倦怠感や息切れ、精神状態の悪化などを来たすことがあります。腎臓で血液中のカリウムが尿中で捨てられず血中濃度が上がると心臓が止まることがあります。すなわち透析が必要な状況です。
・日本では透析導入の原因疾患一位は糖尿病性腎症です。
＜他に皆さんに知ってもらいたいこと＞
1. 糖尿病特有の「神経障害」「網膜症」「腎症」の3大合併症
網膜症はひどくなると失明します。
2. 糖尿病患者は脳卒中、心筋梗塞の他、感染症にもかかりやすくなる。
3. 糖尿病患者は発癌リスクも上がる
※発癌リスクについて補足・・・
古い論文になりますが、
糖尿病患者は非糖尿病患者と比較して
胃癌のリスク 男性 1.23倍 女性 1.61倍
大腸癌のリスク 男性 1.36倍
肝臓癌のリスク 男性 2.24倍 女性 1.94倍
膵臓癌のリスク 男性 1.85倍
腎臓癌のリスク 男性 1.92倍
その他 乳癌・子宮体癌・膀胱癌との関連も言われています
との報告があります。(Arch Intern Med.2006;166(17):1871-1877.)
糖尿病患者は血糖値を下げようとしてインスリンやインスリン成長因子と呼ばれる物質を増やすタイプの病態があります。これらの物質は細胞増殖を促すため発癌のリスクとなると言われています。
そういえばエジソンは胃癌も患っていたとも言われていました。
エジソンと私からのメッセージ
・糖尿病は合併症盛り沢山
・エジソンは84歳と大往生を遂げましたが、糖尿病甘くみると若い時から合併症で苦しむ人もいます。
・結局言いたいことは「糖尿病にならないようにすること」、「糖尿病になったらしっかり治療を受け進行させないこと」が大切であるということです。
＜参考資料＞
Wikipedia エジソン
糖尿病リソースガイド
糖尿病ネットワーク
DIAMOND ONLINE
糖尿病治療ガイド 2022-2023
Arch Intern Med.2006;166(17):1871-1877
次回予告
伊達政宗
喫煙を愛し最後は食道癌・癌性腹膜炎で亡くなったという説があります。
お楽しみに！
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