20240228ZAZENBOYS東京ドームシティホール〜脂の乗った焼き鯖定食
本日のBGMはもちろん、らんど。
12年ぶりの新譜、らんどが出てから東京1本目のライブ、東京ドームシティホールに行ってきた。
なんつーか。脂の乗った焼き鯖みたいに旬を迎えていた。ヒリヒリする。
東京ドームシティホールの地下に車を停め、うろうろ迷いながら東京ドームシティに入場。アリーナ席は地下3階。階段をとぼとぼ降り、指定の入口に向かう。中央よりほんのわずかに右側で、かなり前だった。最近体力の低下もあり、後方扉近くでしか、見てなかったので、テンション上がる。
ローディの人が、MIYAのベースと向井のテレキャスを抱え登場し、チューニングしている。向井はチューニングが好きだから、そんなしてもどうせ本人やり直すのになぁ、と思いながら見守る。長身の男性の肩に掛かる向井のテレ。なんかめちゃくちゃストラップ短くないか?
ローディの2人が捌けると、舞台袖に腕組みした1人の男性。向井本人ではないか。ひょっこりはんどころか、幕から3歩くらい前に出て全身が見えている。あまりの堂々っぷりに爆笑してしまう。周囲の人は携帯で撮影していた。
7時ジャストに4人登場。深々と頭を下げる向井。いつものように、各々チューニング。
何人か立ち上がるが、向井が
「せっかく椅子がありますのでお座り下さい。腰をやられますので、俺だったら座りますね」と椅子に腰掛けながら、タバコをスパスパする仕草。
豊洲でふんぞりかえって観るように、向井のご指示があったので、私は着ていたコートを前に抱えたまま、腰掛けておりました。
「マツリスタジオからやってまいりました、ZAZENBOYSです」の掛け声と共に始まったのは、アルバムの並び順と同じ、らんどから、DANBIRA。
これをじっと聞いていられない。座ったまま頭を揺らし足でビートを刻む。
全部全部知ってる。
向井がチューニングを低く変える。4人揃って、ワンツースリーフォーの掛け声。繰り返されること4回。はじまったのはたのは、Fenderテレキャスター。
幾何学模様のようなカシオマンのギターが走る。
会場は一気にトップギアへ。
曲の中でも4人揃ってのカウントの声。今まで向井を指揮者にオケ3人と思っていたが、今日は様子が違う。
間髪入れずに3曲目、ひみつがーる。なんか今日いつもと違うぞ?!マイクに向かう向井の後ろで、しっかり目を合わせながら向かいあってがっちりキメてくる。音と、無音のタイミングが最高に合っている。緩急がえぐい。
そのまま3曲目。リフマン。お経のような能のような前口上。MIYAのベースも走っている。ダンダーンの長いはくのほうでMIYAが大きく首を後ろに反らす。その戻ってくるタイミングと音ががっちりハマること。芸術である。2段目のダッダッダッもがっちり4人揃っている。無音と音圧の緩急。たまらん。溢れかえる拍手。
らんどの発売を報告。
バラクーダ。
高音にカシオマンのリフ。ギターが歌っている。
八方美人。カシオマンのギターが高らかと美しく高音を歌い続ける。ビートを刻むのに徹していたMIYAのベースが、カシオマンの高音のバッキングと入れ替わり、歌う。なんかリズム隊に徹する時と音が違う、と顔をあげると、歌うベースの時は親指を支柱にしている。
チャイコフスキーによろしく。向井が東京オリンピックを見ていて、無音の中で淡々と進む射撃を見て、表彰式に流れたロシア国歌の変わりに流れたチャイコフスキーを聞いて作られた曲だそうだ。リズム遊びから、メロディへと向井のボーカルも流れるように変化する。メロディアスな流れるような曲調で、らんどの中で私の1番好きな曲だ。環八に沈む夕日を思い浮かべる。
ブルーサンダー。松下敦のカウントと共に、楽器の刻む細かいリズム遊びと向井のメロディアスなボーカルが重なり合う。単純なコードの繰り返しの中にギターもベースもたまに1音外すようなループとは違う遊び心が溢れている。
繰り返される「マツリスタジオからやって参りましたZAZENBOYSです」の向井の挨拶。
杉並区高井戸から来た人はいるか?の問いかけに、手が上がる。たかいどーたかいど♪
杉並の少年。カシオマンのバッキングに、MIYAのベースが低音でうた歌う。その役割は何時の間にか入れ替わり、4人共がそれぞれがリズム隊になり、1人1人が歌う。
天狗の話をしてもいいですか?の問いかけに、そのまま天狗が始まる。カシオマンが高音で鳴らすリズムに合わせてベースと、向井が歌う。この曲あたりから、松下敦のドラムが歌いだす。向井以外の3人が声をだし、タイミングをがっちり合わせてくる。カシオマンの残響音が僅かに響く。すんという感じでいつも曲が終わるのだが、昨日はカシオマンの残響音が切なく残る感じがした。
「ZAZENスタジオからやってまいりましたマツリBOYSです」と意図してか、テレコになる向井の口上。でぃすいずのらねこ。全ての楽器の音が消えた中でアカペラで響く野良猫の描写。いつもの通り緩急がえぐい。
向井の口上に合わせてベースが鳴る。SIGEKI。ラップなのか念仏なのか、向井の歌、舌がしっかり回っている。夜の手癖、笑っちゃうくらいにどいつも同じ。笑っちゃうくらいにどいつもこいつも同じ。
COLDBEAT。カシオマンがしっかり正面をみて、首を左右に振りながらリフを刻む。熟練の職人技である。もう、顔を合わせる必要すらない。複雑なリズムなのに、4人がっちりタイミングがあう。松下敦のドラムが遠慮なく歌う。松下敦の紹介のあと、流れるようにMIYAのソロパート。鳴ってない間もしっかり刻むカシオマンのリフ。音を出している時より、無音の間の方がきっと難しい。
うーちゃっちゃ、の向井の声に、乗っかるカシオマンのギター。泥沼。MIYAが手拍子を煽る。首を左右に振る向井。いつの間にリンクする、カシオマンとMIYAのステップ。笑い声と拍手に包まれる会場。COLDBEATに戻り、ドラムス松下敦が歌う。
ポテトサラダ。カシオマンとMIYAをバッキングに松下敦のドラムが歌い続ける。隙間にするりと入り込むようなMIYAのベース音。ボウルにいっぱいのポテトサラダなり、しじみ汁なりを平らげていく向井。数歩前に出た向井が、カニだったり、酒だったりポテトサラダを喰らい、歌いあげる。深々下げる頭。
はあとぶれいく。4人とも凄く楽しそうだ。観客席も各々席でリズムを刻む。そう盛りのついたメス猫みたいに荒くれだった感情が抑えきれないのだ。向井が至極丁寧に歌いあげる。いつか悪魔と対決する日を待っているのだ。手の空いたMIYAが手拍子を煽る。ギター1本でも聞かせるカシオマン。いつの間にか4人が重なり合い合奏する。カシオマンの残響音が香る。
この日何度目かの「マツリスタジオからやってまいりましたZAZENBOYSです」。始まる黄泉の国。再びギター2本に。歪みすぎず、高音にスコーンと抜けるカシオマンの音作りに痺れる。こんな音が出してーよー。
そして、ずっとずっとずっと待ってる本能寺。松下敦のドラムが腹の底から込み上げるように、煽る。MIYAと向井が手拍子を煽る。カシオマンをビートに、ドラムとベースが歌い続ける。ずっとずっとずっとずっと待ってる、の休符とあと入れ替わり、ギターが歌う。その音もリズム隊にいつの間にか吸収され、一体になっていく。向井の念仏が乗る。半音づつ上がっていくギター。展開する本能寺。折り紙を開くように、しかけ絵本を開くように曲が展開して音が裾野を広げていく。息が続く限りずっとが繰り返されて、エンディングへ。
平日のど真ん中の東京の夜に始まる、WEEKEND。向井のギターをバッキングリズムに、カシオマンが低姿勢でジャキジャキの歪んだギターでダンスを踊る。4人とものっている。そるはまるで旬を迎えた脂の乗った焼き鯖みたいだ。またMIYAが手拍子を煽る。観客を最後尾まで連れていく。カシオマンの紹介と低音のソロギター。ひらがなのうぃーくえんど。ミラーボールの回転に照らされる4人と会場。
ジェットコースターのサンダードルフィンを甘味に例える。高所恐怖症を明かす向井。向井の発音だとひらがなになる、すぱらくーあ。サウナに入らないの知ってるぞ、スパ銭で向井に会うnote読んだぞ。サウナは寿命縮むから、入らんでよし。さうなーではなく、おふろーだそうだ。笑みがこぼれる会場。
YAKIIMO。ここから、破裂音の朝、乱土。向井とカシオマンの2本のギターが重なったり、離れてハーモニーになったり美しすぎる。夕暮れに遊ぶ影絵のよう。ギターの音がとてつもなく切なく、とてつもなく尊い。そこに一体に重なるベース、ドラム。刹那に響く向井のボーカル。
破裂音の朝。背景に徹する、MIYAのベースと松下敦のリズム。全面に押し出された2本のギターとボーカル。この4人尊い(たっとい)、尊すぎるやろ。唯一無二の響きだ。ナンバーガールを彷彿とさせる向井のボーカルが切なく上方に登っていく。追うように2本のギター、ベース、ドラムと上空に昇っていく。朝焼けか夕焼けかもはや区別がつかない。ただ無性に太陽の光が目に沁みるのだ。
繰り返し頭を垂れる向井。野音のマツリセッションの開催報告。向井!よく抽選当ててくれた!絶対行く!
低音にチューニングされるギター。勢いよく鳴り響く乱土。会場の熱気は最高潮を超え、蒸発しそうだ。
聞く度に桁が増えていく、胸焼けうどんの作り方。フィナーレに相応しく、音が地べたに敷物のように拡がって、会場を包み、地底からフォッサマグナのように揺らし続ける。お祭りのお囃子だ。どげんかせんといかんだっちゃ?と締めくくる博多弁。
向井、カシオマン、松下敦、MIYAと順番に丁寧に頭を下げ、履けていく。
私は結構ライブに行っているのだけど、昨日ほど、アンコールを求める拍手に焦燥感はなかった。だいたい1回最高潮にリズムが上がって崩れて、また感覚を大きく拍手が鳴るが、2度目の波が始まるのも刻む拍手もこの日すこぶる早かった。
ステージに戻る4人も早かった。
また会いましょう。の向井の言葉に、待ちきれないように始まる、永遠少女。録音したのはウクライナ戦が始まるより前、2年以上前だそうだ。何度も見たミュージックビデオの背景に照射される都会のビル群が目前に見えるように胸に響く。
向井のソロギターから始まるKIMOCHI。ワンコーラス1人で歌い上げた後、この日の象徴ともいえる4人での声を息を合わせたカウントから鳴る、4人の轟音の渦。無音と轟音の狭間で蠢く音と空気。メンバー紹介のあと4人とも音が歌っていた。ギター2本と歌だけ残った切なく響く。とてつもなく名残り惜しい。この日が終わる事がこれほどまでに残念に思うとは。永遠に続いて欲しかった。
けーあいえむおーしーえいちおーと拍手、だいぶいいタイミングで乗れたと思う。向井と目が合ったような気さえした。向井が拍手を2度ほど促し、会場に拡がる、けーあいえむおーしーえいちおーの声と拍手。向井がカシオマンに音を消すように目配せをする。楽器の音が無くなった会場にこだまする観客の拍手と声。向井の指揮により、会場の音もしっかりまとまって消える。ロウソクの火を吹き消すように、すっと無くなる。なんて儚い時間なのだろう。名残り惜しい。名残り惜しかったよ。
なんていうか、マツリスタジオでのマツリセッションを捻りあげて来たZAZENBOYSは、今脂がノリにのった旬の焼き鯖みたいなステージだった。ひなっちと吉田一郎が叩き上げてきた土台に、MIYAの系譜にしっかり則った音と、キャラクターが絶妙な緩急を繰り出していて、非常に素晴らしい仕上がりである。昔のZAZENは見ているこっちも緊張するほどピリピリしていた。向井を指揮者に、左にタレ下げたギターヘッドを指揮棒に、3人がオケ、という感覚だったのだが、4人のチームに仕上がっていた。この日のライブはピリピリではなく、この2月の終わりの凍る空気のような乾燥した肌にヒリヒリ沁みる中に、春の訪れの瞬間が日に日に見つかるように、包み込まれるようなどこか暖かい空気が支配していて、本当に尊かった。
この4人と、それに包まれる会場の熱気が一体となって、めちゃくちゃいい時間だった。計ったのうに2時間半だったが、たった1時間にも、もしくは5時にも感じられる、時間軸が歪む感覚があり、いつの間にか終わっていた。
この間、村上春樹が、小澤征爾の追悼文に、「征爾さんがリハーサルで丁寧にネジを締め上げていく、物の道理としてはネジを締めると、固くなるはずだが、小澤征爾がネジを締めると、締めた分だけ音が自由になる」というような文章をあげていたのだが、昨日のZAZENBOYSはまさにそんな感じだった。向井、カシオマン、MIYA. 、松下敦がキリキリと幾何学模様のように、複雑に繊細なリズムとメロディで会場のネジを締め上げるのは、ひりひり刺さるようなのだが、連れて行かれた先は野原のように広く自由だった。
座席に座っていたのに、3階分の階段をふらふらになりながら、ゆっくり登る。私はいつもライブ中、殆どステージを見ず、頭を下に垂れて揺らし、小声で口ずさみながら、頭を揺らし、右足左足に体重移動させて全身てリズムを取り、音楽に身を任せる。後方でしか体力的に叶わないのでそうしてるのだが、座席指定のおかげで久しぶりに前方で観ることができて、4人の表情まで見てとる事ができた。笑っていた。座席指定どうかな?と思っていたが、今のアダルトなZAZENの観覧に非常に良かった。
ZAZENも発展途上のバンドなので、あまりこういうことを言いたくないのだが、特にZAZENの演者は体力勝負の部分がある。もちろんこれからも変化していくだろうし、体力をカバーするだけの経験値で魅せ続けてくれると思う。
でも敢えていいたい。
今のZAZENはひとつの集大成である。
ZAZENを聞いたことない人も、今からでも乗っかって欲しい。行ける範囲の会場に足を運ぶべきだ。チケットが完売してない会場もある。完売しても、立ち見当日券を出してくれる。これほどの刹那に響く音楽を、是非会場で味わって欲しい。
今のZAZENは絶対観るべき。
払ったチケット代の事なんて、帰り道にはすっかり忘れてしまう。費用対効果(コスパ)なんてものでは測れない唯一無二の体験になる。
私はあと水戸のチケットを抑えている。5月の野音も絶対行ってやる。
ほんとに会場に足を運んで欲しい。
脂の乗った旬の焼き鯖定食、一緒にしかと味わおうぜ。
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