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「これが自分のロックの芽生えなのかも」って話

小学生の頃の話だけにおぼろげなのだが、
きっとこれが自分にとっての
ROCKの目覚めだったのかも…って話。

僕が初めて買ったレコードは、
「太陽にほえろ!」。
このレコードがそんなに欲しかったのか
というと、実際はそんなでもなかった。
でも、その当時の僕には、
自分のレコードを持つということへの
強い憧れと意味があったのだ。

ド田舎の小学生だった僕が、
いろんなことを我慢して
ようやく貯めた3000円。
僕はその大金を握りしめて
「とにかく自分のレコードが欲しい」
という気持ちだけでレコード屋さんに
入っていった。
そのときはまだ、どんなレコードを買うか
すら決めていなかったのだが
とにかく自分のレコードが欲しかった。
その気持ちだけで行動していたのだ。、
「レコード屋にはあんなにレコードが
 あるんだから、絶対に欲しいレコードは
 見つかるはずだ。」
なんて本気で思っていたのだから驚きである。
なんてあさはかな小学生・・・。
今思うとジャケ買いする気満々だった。
レコード屋に着くと、
とにかく時間をかけて
店内のレコードを物色した。
1日では決められず、2,3日かけて
レコードを探して、ようやく
「おっ?」っと思ったのが
「太陽にほえろ!」だった。
当時このテレビドラマは大人気で、
当然僕も毎週欠かさずに見ていた。
でも、僕の目に止まったのは
そのせいだけじゃなかった。
「井上堯之バンド」
太陽にほえろ!なのに井上堯之バンド。
バンド・・・この上なく大人な香り。
テレビドラマなのにバンド・・・。
「これだっ!」というわけで
太陽にほえろ!が我が家にやってきた。
そして僕は聴いて聴いて聴きこんだ。
それはもう、すべてのパートが
頭の中で再現できるほど聴きこんだ。
小学生のまだ新鮮な脳みそに、
それはあっという間に侵食していった。
そして僕は、どんな時も、ことあるごとに
太陽にほえろ!の音楽が頭の中で流れる
生活をしていた。

しかし、そんな時、さらなる衝撃が
僕を襲った。
その当時ABBAというスウェーデンの
4人組グループが一世を風靡していた。
我が家では3つ上の姉がABBAを
よく聴いていたのだが、
ある日、テレビに出演するということで
大騒ぎしていた。
当時の新曲「チキチータ」を歌う
というのである。
テレビ前にはラジカセがスタンバイされ、
録音の準備万端の状態だった。。
何しろ、レコードなんてそうそう何枚も
買うことができなかったような時代。
アーチストのテレビ出演は、
音楽を仕入れるとても貴重な機会でもあったのだ。
それが何の番組かは忘れてしまったが、
何組かのアーチストが
一緒にライブ演奏をするというもので、
僕は姉と一緒にABBAの登場を待っていた。

すると、その時である。
ヒョウ柄の衣装に身を包み、
金髪で長髪の白人の兄ちゃんが、
バンドを従えて画面に現れたのだ。
それがロッド・スチュワートだった。
当時、すでに世界的に売れていたのだが
彼の歌は小学生の僕の耳にまでは
まだ届いていたかった。
歌ったのは「アイム・セクシー」。
しゃがれた高音の声も
ステージアクションも、
全てがカッコよかった。
なんだかいけないものを見ているような
ドキドキ感もあって、僕は見とれていた。
「バンド」に憧れを持った少年には
井上堯之バンドを経て、
ロッド・スチュワートが
その完成形のように感じられた。
ABBA目当ての姉の顔には
嫌悪感があったのだが、
僕には彼が誰よりもカッコよく感じられ、
小学生男子の単純なハートを
ガシッとわしづかみしていたのだ。

翌日の学校は、その番組の話題で
持ちきりだった。
しかし、やっぱりその中心はABBAで、
ロッド・スチュワートに対しては
否定的な意見が多かった。
特に女子の表情には、
姉と同じ嫌悪感が表れていて、
彼女たちは、現在なら一発アウトの
汚い差別的な言葉で
ロッドを散々こき下ろしていた。
そんな中、気の小さな僕は、
自分の気持ちを表に出せるはずもなく
「自分が人と違う趣味を持っているからいけないのかなぁ。」
と、とりあえず気持ちに蓋をして
あいまいな笑顔でやり過ごしていた。
気弱な少年にありがちな
「多数意見にとりあえず流されとこう」
ってやつである。
それから数年後には
まさか自分がロックバンドの一員になる
なんて当然思ってもいなかった、
まだ小学生の頃の話。
人生を大きく変えるとまではいかないが、
この時テレビで見たヒョウ柄金髪兄ちゃん
「ロッド・スチュワート」が
僕のROCKの芽生えだったのかもしれない。


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