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肺腺がんになった(10:術後②)

2023年12月28日(術後2日目)

朝、痛み止めの点滴が空になり外してもらった。今後の痛みは服用薬でコントロールするそうだ。
術後ずっと右手の甲に針が刺さったままで痛かったし、何をするにも気を遣って動かなければならないので、それが解放されて嬉しかった。

点滴が外れたので、尿バッグと右胸の管が残された状態となった。ひとつ身軽になった。

右胸から長く伸びる透明な管は、小さなスーツケースくらいの機械に繋がっている、
メラサキュームという機械だ。キャスターがついているとはいえ、押して歩くのも結構重い。

・メラサキュームは体内に貯留した血液や分泌物などを持続的に体外に誘導する電動式低圧吸引器です。
・気胸や肺切除後のエアーリークの経過管理に役立つトレンド機能を搭載しました。

メラサキューム販売サイト 商品説明より

肺は肋骨内の胸腔という部屋の中に収まっていて、胸腔と肺の間は胸水という潤滑油のような役割をする水分で満たされている。

肺が傷つくと胸水が増えてそれを修復しようとするが、胸腔内に胸水が増え過ぎてしまうと、その分、呼吸により肺が膨らむ空間が減ってしまう。

そのためメラサキュームいう機械で減圧をかけ、胸水を体外に逃して肺を膨らますというわけだ。

逃がされた胸水はスイカのジュースみたいな赤ピンク色で、排出量がわかるように、メモリ付きの透明のタンクに回収されている。毎日定時に油性マーカーで印をつけ、前回からどのくらい胸水が排出されたかチェックしていく。

タンクの右側3分の1くらいは区切られていて、初めから透明の液体(水?)が入っている。
私がゴホンと咳き込むとブクブクと空気が入り、まだ肺の穴が塞がっていない、空気漏れの状態だとわかる。医師から言われない限り、痛くてゴホンとはしたくもなかった。この頃はくしゃみや咳は出そうになっただけで、痛みでそれが止まるような状態だった。

実際使っていたもの 透明な管は私の胸と繋がっている

昨日食事は食べられたか聞かれたので、飲み込むのが痛いせいもあり、おかずを少しずつしか食べられなかったと報告する。

あまりに食べないと点滴になりますよ、と言われて時間がかかっても食べようと決意した。
結局、朝食は8割ほど食べられたし、その日以降食事は完食している。

朝食後、レントゲンとリハビリがあったが、階下の各部屋へ自力で歩けそうにないため、車椅子で看護師さんに送ってもらった。

レントゲンでは相変わらず、痛みが先に来て息を吸い切ることが出来ない。体が凝り固まり腕を上げるのもぎこちなかった。

リハビリ室に移ると理学療法士さんが、肩や背中をマッサージしてくれた。肩を緩めて胸を開くことで、息が吸いやすくなると教えてくれた。
マッサージが済むと、見守られながら室内をゆっくりと歩く。一周30mを歩き終えて腰を下ろし休憩した。

呼吸を落ち着けて血圧と酸素を測り、あと2周、行けそうなら3周して終わりにしましょうと言われて立ち上がった。ゆっくり2周を終える頃、息は上がっていたがペースを緩めて何とか3周歩き切った。

部屋に戻ると主治医が様子を見にきてくれた。胸水の量と肺の空気漏れを確認する。まだ空気漏れは続いている。明後日、管を外せるかもと教えてくれた。

胸の管が取れるまで、シャワーは出来ない。だいぶ汗をかいたので、夕方の体拭きの用蒸しタオルが気持ちよかったのを覚えている。使い捨てのおしぼりを大判にしたものだったので、何とか頭皮を拭いてみようと試みるが、臭いが取れるほどの効果はなかった。

寝る前に尿バッグが外れて、一層身軽になった。あとは胸の管が取れれば、重たい相棒から解放される。明後日が待ち遠しい。

その夜は、じっと寝ていることが出来なかった。痛み止めが変わったからなのか、しんとした部屋で意識が痛みにばかり集中してしまう。

ベッドから足を下ろしたり、ベッドに足を戻したりを繰り返して最終的にベッドの背を目一杯立てて寄りかかるようにして休んだ。

15分ずつ眠っては起きを繰り返して朝を迎えた。

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