20歳 夏
夏が終わろうとしている9月中旬ごろ、近くの海辺の花火大会があった。
私の住んでいる場所の近くでは花火大会がほとんどなくて、あったとしても遠方であって、車も運転できないわたし達はなかなか行くチャンスがなかった。
そんな中やっと電車で行ける場所で花火大会が開催された。
花火はとっても綺麗だった。
20歳の夏は1度しか来ない。
どの年齢でもそうだが、なんだか20歳という節目に謎の特別感があった。
これから先も人生は続いていくはずなのになぜか、全部これが最後と思ってしまう。
若者として、自由に楽しい日々を送れる時間がカウントダウンされているような気がして、なにをするにも少し切ない気持ちになるのだ。
花火の散る瞬間が好きだ。
大きな音を立てて開花した後、
ぱちぱちと音を立ててきらきらと空を舞う光は、なんとも言えない儚さで、美しく少し切ないような気持ちになる。
その姿はまるで、わたしの憧れのように見えた。
きらきらと小さな光で美しく儚く繊細な人生を歩みたい。
そんなことをぼんやりと考えながら花火を見ていた。
その儚い光に見惚れている暇もなく次の大きな花火がどんどんと上がる。圧倒された。
幼い頃感じなかった感情が沸々と頭に浮かぶ。
夜空に浮かぶあまりに大きい花火と、音、ビールと少しのおつまみ、隣に座る大切な人、それだけで十分だと心の底から思った。
自分の頬を流れる涙に動揺した。
帰り道、恋人とフジファブリックの若者のすべてを歌った。
笑顔の裏でうるうるした瞳を隠すので精一杯だった。
20歳の夏の終わりに見た花火
この瞬間を味わって、感情が揺さぶられたこと、
何年経っても思い出してしまうと思う。
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