【創作の中毒×中毒の創作30】

「大丈夫か」
 ドクターが、心配そうに俺の顔をのぞき込んでいる。

「先生。助けてください」
 俺は、心療内科のかかりつけ医のドクターの足にすがった。
 俺は、この医者が嫌いだった。
 
 はっきり言って、世話にもなりたくないほどだ。
 メンタルの調子が良ければ、こんな医師の元へ、わざわざ通うことはなかっただろう。

 だが、俺は人目も気にせずドクターにすがっていた。
 そんなことを言っていられないほど、青山霊園の地下で経験した出来事は恐ろしかったんだ。
 ――悪夢としか言いようがない。 

「何があったの」 
「ババ、バケモノです」
「バケモノ?」

「ええ。墓地の地下に全身を白塗りした、奇怪な“イキモノ”が住んでいるんです」

「何なの、それ」
「わかりません」
「わからないの? そのイキモノは、地下で何をしていたの?」

「バーベキューです」
 俺は、震えながら言った。

「そうか。ちょっと、次回から強めの薬にした方がいいね」
 かかりつけ医は言った。
 医者は、俺を“哀れなもの”を見るような目をしていた。
 ――この医者が、俺の言っていることを全く信じていないのは明白だった。 

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