(怖い話/by処刑スタジオ)いじめ自殺・呪われたメールアドレス

「昔、同級生のAが死んだんだ」
 トモヤが話し始めた。
 トモヤはギャグ好きの男で、こうして集まって話を聞くことも多かった。

 芸人を目指していたこともあり。いつも爆笑に包まれる。
 だが、話が進むごとに、部屋の空気は凍り付いていった。

 部屋の床に軟式ボールが転がっている。
 今日は会社の慰安旅行だった。今も野球をして汗を流してきたばかりだった。

 だが、トモヤは“体がだるい”と、ホテルで試合が終わるのを待っていた。

「体調は良くなったのか」
 俺が聞く。
「いや。体調は最悪のままだよ。それに、こうしてボールを前にするのは何十年ぶりかわからないな」
 トモヤが話し続ける。
 
「初耳だな」
 俺は驚いていた。
 彼が野球をやっていたなんて誰も知らなかった。
 
「やめたんだ。死人が出た。それを機に続けられなくなった」

「なぜ亡くなった。練習中の事故か?」

「自殺だ」
「え」
「今もボールに触れるのが怖くてたまらない。この話を人前でするのも初めだ」

「死んだのはどんな子」
 
「Aは運動音痴タイプ。典型的ないじめられっ子タイプだ。だから、チームメイトのいじめが原因と思われたらしい。野球部の顧問や警察官に何度も話を聞かれた」

「だが、最終的に残されたのは、俺を含めた4人だけだったんだ」

「なぜ4人だけなんだ」

「当時、携帯電話が普及し始めたばかりで、携帯を持っている子供なんて限られていた。顧問が調べたら、チームで携帯電話を持っていたのは俺を含めて4人だけだった」

「Aの携帯に酷い内容の中傷メッセージが残されていたらしい」

「その当時から、SNSいじめがあったのか?」
 不快だった。トモヤはいじめに加担していたのだろうか。

「違う。今みたいに、SNSやネット全盛時代じゃない。スマホなんてあるわけないしな」
「SNSがなくてどうやって誹謗中傷したんだ」

「メールだ。本当にいじめようと思えばツールなんて無限にある」

「メールか。気分が滅入るな。暗くなる」

「顧問と警察官は、俺たち4人を一人ずつ詰問していった。自殺したAの携帯電話には、確かに酷いメッセージが残されていた」

「死ね、奇形とか、口にするのもおぞましい内容だった」
 
「そうか。で、4人は謝罪したのか?」

「違うんだ。Aのメールアドレスなんて誰も知らなかったんだ」

「どういうこと」

「詳しく調べたら、Aが自分で自分のアドレスに中傷メールを送信していたんだ。既にAは精神に異常をきたしていたらしい」


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