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“世界最古”のウルトラマラソンに挑む(後編)

今回は8月28日(日)に南アフリカで行われたコムレッズマラソン(Comeades Marathon)当時の様子をお話しする。

1.レースについて

コースは東部の都市クワズール=ナタール州の内陸部にある州都ピーターマリッツバーグから海沿いの都市ダーバンまでの90km。今年は最高標高810mからの下り基調(Down Run)のコースだ。
60kmまでは5つの丘を通り、細かいアップダウンが続く。
制限時間(Cut-off)は12時間。

レースコース(90km)

2.事前準備

先月走った100kmの反省を踏まえて二点対策を行った。

1)水分不足対策

前回は脱水症状により、吐き気を催したり意識が朦朧としたりした。
今回はランニング時に必要な水分摂取量を調べるべく、ランニングした日に走った前後の体重を記録。

(ラン前の体重)ー(ラン後の体重)/(走行時間)

上記の式で脱水量を推定し、平均値の500ml/時を採用した(実際は、給水カップのサイズの都合があるので、とりあえず1時間にカップ二杯分を飲み様子を見た)。

また、適度にナトリウムを摂取しなければ、水分が吸収されない。
今回「ヒマラヤ塩分タブレット」を購入した。日本のコンビニなどで売られている塩分タブレットは塩分相当量が少ないが、この商品なら1時間に1錠だけでいい(水1Lにつき2錠推奨)。

2)エネルギー不足

完走に必要なカロリー数を60(kg )×90(km)=5,400(kcal)と仮定。そこから、レース中に摂取が必要な糖質を275gと算出し、一時間に一個ジェルを取ることとする。
同時に、胃腸が食べ物を受け付けるかという問題がある為、次の対策を行った。

・消化サポートサプリ「Catalyst Athelete Enzyme」を前日から飲む。
・「ファモジン錠M」(胃酸を抑える薬)を前日、レース前、レース中に服用する。
・消化の負担がかからないよう、前日の夕飯はフルーツ、レース前まではオレンジジュースで済ませる(オレンジは糖分が多く吸収が速い)。

また、加えて、通常時からの対策として以下を行った。
・この1ヶ月は、週に一回の16時間ファスティングや糖質制限を行い、内臓を休めることを心掛けた。
・練習で長距離を走る際は1時間に1個はジェルをとるようにし、徐々にジェルに慣れることができるよう乳児食(果物をペースト状にしたチューブ)を使ったこともあった。

携行品一式


3.レース当日

1)スタート前〜スタート

2時に起床。宿を朝3時半に出発し、スタート地点へ。
参加者はタイム順でスタート時のシーディングがAからGまで分類さていた。私がいた最後尾からスタートまでは300m強あり、その間ランナーがびっしり並んでいた。

5時半スタート。ファンファーレが流れると、前からランナーが動き出した。長い一日の始まりである。

スタートラインを通過!

2)レース中

こちらはまだ冬で日の出は7時前くらい。
気温は10度強。スタート前は寒かったが、動き出してからしばらくは気持ちよかった。

10㎞、20㎞、そして、前回集中力が切れ始めた30㎞。特に問題なく通過。
上り坂で多くのランナーが歩く中自分はゆっくりでも走っていた。今回は調子がよさそうだ。半分の45㎞を通過。ここからが本番だ。

と思った矢先、みぞおちが痛み出し、呼吸が苦しくなってきた。その状態が数キロ続いた後、50㎞手前で歩き始めてしまった。
細かいアップダウンで想像以上に体力が奪われていたのだ。
自分としてはペースをあまり変化させたくなくて、上りでも走った。それが裏目に出た。

とうとう歩いてしまった。
この先40kmも体力が持つのだろうか。

(マラソンの様子はこの動画にも上げました。是非ご覧ください!)

56km地点。
制限時間から1時間10分余裕を残して通過。60㎞から体力がなくなった自分と共存して走れるようになった。といっても、歩きを混ぜずには進むことができない。歩きの距離が長くなっていく。上り坂でも下り坂でもランナーに追い越されていく。

日差しが強くなり意識が朦朧とする。



「こんなに練習したのになぜ早い段階で体力がなくなってしまうのか」

「他の日本人はどのくらい前を行っているのだろう。彼らに比べたら自分はランニングに向いていないのではないか」

自分自身に対し情けない気持ちでいっぱいで、ネガティブな感情がとめどなく湧き出てくる。


29km、28km、27km…残りの距離を示す看板を探しながら、ゴールの時が来るのを静かに待った。弱い自分と向き合いながら。



80㎞を通過。
失速してから何度も制限時間との差を確認していたので、この時点から自分がサブ11(ゴールタイムが11時間以内)に届く範囲にいることを自覚した。
そこから、どういうわけかゴールまでほぼ走ることができた。

やはり目標ができると自然と力が湧いてくる。



残り2km。
まっすぐのびた道の先にゴールのスタジアムが見えてきた。
歩いているランナーは勿論、立ち止まってふくらはぎを伸ばすランナーや倒れているランナーを横目に走り続けた。


残り1kmを過ぎ、スタジアムの中に入っていく。
暗闇からトラックの中に入ってきた。
強い照明の光とスタンドのざわめきが聞こえる。



10時間50分27秒でゴール。
ゴール後は、脚が自分の身体の一部ではないくらいガタガタ震え、唇が紫になっていた。

ゴール目前


3)レースを終えて

弱い自分が出たという点で前回の100kmから変わらなかった。タイムも平凡だった。

しかし、良かった点もあった。

走る前から設定した「一時間ごとに補給食を一つはとる」という目標は達成した。
その為、前回のように息切れで途中で止まったのが一回しかなかった。

結局、必要以上にタイムや他の参加者を気にすることなく、自分が設けた目標という微かな光に向かって前進していくほかないのだと感じた。



来年はUp Run(上りコース)で今年よりも厳しくなる。
完走したい。




次に控えているのは10月16日(日)のCape Town Marathon。

まずはこの1週間をゆっくり休みたい。

ゴール後

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