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ガーディアンズ、好調の要因

 読者の皆様お久しぶりです。わるものです。

 30球団note企画の開幕前順位予想で4位以下と予想されてしまった今季のガーディアンズですが、開幕から好調を維持し、8月14日時点でなんと地区首位に立っています(僕ですら地区2位予想でした)。今回の記事では好調の要因を何点か紹介していこうと思います。

① コンタクト重視打線の形成

日系アメリカ人でもあるクワン

 今季のMLBで最初に話題を席巻したのはなんといってもルーキーのスティーブン・クワンでしょう。デビューからの4試合で15出塁、デビューから116球連続空振り無しという新記録樹立の連続で大きな注目を集め、4月の月間最優秀新人賞を受賞しました。その後、5月に絶不振に陥ったことで世間からは忘れ去られてしまいましたが、6月以降は復調して1番打者に定着し、8月14日時点で打率.296/OPS.764という立派な成績を残しています。
 彼の特長はなんといっても空振りをしないことで、空振り率2.9%/三振率9.0%/コンタクト率92.2%はいずれもMLB全体で2位(1位はツインズのルイス・アラエズ)の優秀な数字です。
 三振をしないという特長は、クワンだけでなく、チーム全体に対しても当てはまります。チーム全体で空振り率9.0%/三振率18.5%/コンタクト率80.9%という値はいずれも30球団中1位です。今季8打席連続三振を記録するなど、288打席で空振り率16.8%/三振率36.8%/コンタクト率64.6%と酷い成績だったフランミル・レイエスを含めて1位ですから、彼以外の選手の傑出度がよく分かります。

ストロー、ホセラミも優秀


 そして、これらの数字は偶然ではなく、チームが意図的に作り出したものです。今季から新たに打撃コーチに就任したクリス・バライカは、HRを狙うのではなく、少々のボール球でもバットにボールを当て、常に塁上を賑わせて投手にプレッシャーをかけ続けることをチームの打撃方針として掲げています。三振の多いロマン砲タイプの、ボビー・ブラッドリー、張育成が開幕2試合であっさり見切られ、昨年30HRを放ったレイエスまでもがDFAされた事実は、球団の意図を如実に反映していると言えるでしょう。

俊足の選手が多い

 三振を恐れず強いスイングをするという近年の野球界の潮流に反したこのアプローチは、チームに俊足の選手が多いことも相まって功を奏し、チーム全体のwRC+は現在30球団中15位で、最下位付近を彷徨っていた昨年から大幅に良化しています。また、三振せずランナーを進めることが求められるタイブレークで特に有利に働き、今季は延長戦で9勝2敗と強さを発揮しています。
 もちろん、ただバットにボールを当てにいくだけでは、福良・西村政権時代のオリックスのような、強いスイングをできない小兵打者がズラリと並ぶ絶望的な打線が完成してしまいます。スイングの強さとコンタクトの最適なバランスを維持し続ける、この難題をクリアしているバライカ打撃コーチの手腕は見事ですし、MLBの打撃トレンドに一石を投じることは間違いないでしょう。


② 中継ぎ陣の成長

ドジャー・スタジアムにて見事なリレーを披露

 開幕前の戦力分析記事で紹介した通り、今季の開幕時点で信頼できる中継ぎ投手は、クローザーのエマニュエル・クラッセと、実績十分のブライアン・ショウの2名のみでした。
 ところが、いざシーズンが開幕してみると、球が速いだけのバッピ状態だったトレバー・ステファン、与四球まみれで防御率8点台だったサム・ヘンジス、最速92マイルしかでなかったイーライ・モーガン、オフにマイナー契約で拾ってきたエンジェル・デロスサントスといった、今まで活躍できていなかった若手投手達が見事に開花し、リーグ平均レベル、あるいはそれ以上のリリーフ陣を形成しています。上述の記事で「昨年の成績が悪いということは逆に伸び代しかない‼️😤」と冗談半分の紹介を書きましたが、まさに言葉通りの大幅な成長を遂げてくれたわけです。特にステファンの活躍は見事で、昨年ベテラン投手のブレイク・パーカーに教えてもらったというスプリットを武器に、セットアッパーへの定着を果たしました。

 また、昨季粘着物質の取り締まりが強化されて以降コマンドが壊滅し、マイナー降格まで経験したジェームス・カリンチャックも無事に復活し、以前と変わらぬ姿を見せてくれています。
 ヤンキースやオリオールズのような圧倒的優秀なリリーフ陣を形成できている訳ではありませんが、補強ゼロでそれなりのブルペンを作り上げた点は称賛に値すると言えるでしょう。


③ 守備の改善

ロサリオとヒメネス

 伝統的に守備力が高い選手を起用してきたガーディアンズですが、昨季から守備が下手なアメッド・ロサリオをショートのレギュラーとして起用し、度重なるお手玉や悪送球、フライの深追い等にファンは怨嗟の声を上げる日々を過ごしてきました。ロサリオと同時に加入したアンドレス・ヒメネスは、昨年ショートを守った322.1イニングでDRS+5を稼ぐなど卓越した守備力の持ち主であり、ヒメネスをショートで固定しないフロントはアホだという意見が主流でした。
 ところが、今季の4月下旬頃からロサリオの守備のミスが激減し始め、後半戦に入ってからは別人のように好プレーを連発し続けています。見た目だけでなく、昨年-9/+1.7/-3だったDRS/UZR/OAAは今年は+5/+6.5/±0と大幅に改善されており、守備指標上でも成長は明らかです。

レフトのクワンも非常に優秀

 セカンドのヒメネス、センターのマイルズ・ストロー、キャッチャーのオースティン・ヘッジスはいずれも平均を大きく上回る優秀なディフェンダーですから、ロサリオの成長によってセンターラインがガチガチに固まったことになります。これに伴ってチーム全体の守備指標も昨年から大幅に良化しており、投手陣は安心してボールを投げ込めていることでしょう。


④ ヒメネスの覚醒

0番です、覚えてね!

 好調の要因のラストは非常に単純な話で、アンドレス・ヒメネスさんが打ち過ぎです。昨年は打撃不振で3A降格まで経験した男が、今年は開幕から絶好調で、8月14日時点で打率.307/OPS.857/HR12本と文句の付けようがない成績を残しています。しかも信じ難いほど勝負強いのが特長で、得点圏は打率.375(33-88)/OPS1.175、8回以降は打率.382(29-76)、延長戦に限ると6打数5安打と打ちまくっており、中継では”Captain Clutch”という愛称が定着しつつあります。上述した通り、守備の評価は以前から非常に高い選手なので、今年の覚醒でfWARが3.8、rWARが4.4と一流の値になっており、当然オールスターにも選出されました。

 21年開幕前の記事で、ヒメネスはフランシスコ・リンドーアのようなリーグを代表する可能性を秘めている選手だ、と紹介しましたが、1年の時を経て夢が実現してくれました。 
 覚醒した原因については、詳しい打撃理論にまで踏み込んだ記事が出ておらず、今のところデータから勝手に推察するしかありません。

チェンジアップに異様に強い

 昨年までは速球への対応に苦しんでいましたが、今年はインコースの速球を引っ張ってライトに持っていくシーンが目立ち、振り遅れによる空振りが殆ど無くなりました。イン速球を引っ張ろうとしてタイミングを早くすると、普通は抜いた球に釣られやすくなるものです。しかし、今年のヒメネスはチェンジアップに崩された体勢から上手くボールを拾って内野の頭を越すのが非常に上手で、チェンジアップのRunValueが+9と異様な強さを発揮しています。
 まだ23歳のヒメネスがこの先どんな偉大な選手になるのか、非常に楽しみです。


 

今季のMLBデビュー13人はMLB最多

 今回もそこそこ長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。現在地区首位とはいえ、2位のツインズとは僅か1.5ゲーム差であり、目が離せない激戦がまだまだ続きます。平均年齢26.2歳と非常に若く活気に溢れたチームの行く末を是非皆さんも一緒に応援していきましょう‼️💪‼️✊ Go Guardians‼️💪‼️


今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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