事実婚で子どもをもつ(妊娠・出産編)
婚姻届を出していない事実婚カップルの場合、子どもの妊娠から出産に至る過程でなにか不利益が生じるのではないか、というのは、ごくありふれた不安だろうと思う。私は2020年に事実婚状態で出産したが、実際のところどうだったかというと、手続き上のことではほとんど何も不利益はなかった。
まず不妊治療について。タイミング法も含めた不妊治療を始めるにあたっては、クリニックでパートナーの年齢やプロフィールを含めた問診票を記入する。治療の進み方によって、男性パートナーが検査を受けたり、来院して不妊治療に参加したり、というステップも存在するためだ。
私の通っていたクリニックでは、姓の違う夫の名前を書き、担当医師に「事実婚なので姓は違いますが、夫です」と説明すれば、それでOKだった。さまざまな検査や処置を問題なく受けることができた。
子どもを授かってから出産までのプロセスでも、事実婚だからといって特段なにか変わったことは無かった。産科での検診の付き添いもOKだったし(COVID-19の流行が始まってからは、婚姻の有無にかかわらず付き添い禁止になったが)、帝王切開手術のあいだの家族待機も事実婚の夫でOKだった。出産後に子どもが急遽NICUに入院することになった際の同意書にも、夫がサインしてくれた。じつは非嫡出子の子どもの親権は基本的に母親単独なので、サインは本当は私がしなければならないはずなのだが、とくにそれが問題とされることはなかった(事実婚カップルが数少なくて、これまで問題になったことがなかっただけかもしれないけれども)。出産時の緊急処置で家族の同意書が必要、と言われたときに夫との関係が問題になっては困ると思って、私は念のため夫の続柄が「夫(未届)」と記載されている住民票の写しを入院中も手元に持っていたのだが、ついに使う機会はなかった。
つまりは、妊娠・出産で病院にお世話になるにあたって、事実婚だからといって特に変わったことは何もなかったのである。拍子抜けしたくらいだった(もちろんクリニックや産院によっては事情が異なる可能性はあるが)。むしろCOVID-19対策のせいで妊婦生活が通常とまったく違うものになってしまったのだが、それは別の話。
婚姻しているカップルとは違う手続きが必要になるのは、子どもの出生届関連である。それについては次回。
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