見出し画像

事実婚で子どもをもつ(胎児認知・出生届編)

事実婚カップルの子どもは、嫡出でない子(非嫡出子)となる。出生届をだす際にも、婚姻しているカップルとは異なる手続きが生じる場合がある。ここでは、私の子どもの認知届・出生届の提出にあたって、どのような手続きを経験したか、といったようなことを書いておきたい。

胎児認知とは?

非嫡出子と嫡出子には法的にいくつか違いがある。詳しいことは法律の専門家に尋ねてほしいが、大まかには3点を挙げることができる。

1つ目は父親との関係。嫡出子と違って、非嫡出子の場合、父親が認知しないと法的に父子関係が成立しない。

2つ目は氏。嫡出子は父母の氏(婚姻届に書いた氏)を名乗ることになるが、非嫡出子は母親の氏を名乗る。

3つ目は親権。非嫡出子の親権は母親単独。ただし父親が認知すれば、父を親権者として定めることもできる(その場合も単独)。ちなみに嫡出子の親権は父母共同。

以前に存在した、嫡出子・非嫡出子のあいだでの法定相続分の差は、2013年の民法改正以降なくなっている。

これらをふまえたうえで、うちの子はどのようになっているかというと、

①生まれる前に父親が認知し
②私(母親)の氏を称し
③親権は私(母親)が単独で持っている という状態である。

なぜ「生まれる前に父親が認知」したかというと、そうすると出生届に父親の名前が書けるからだ。

「生まれる前の認知」とはどういう手続きだろうか。先に書いたように、認知によって、父親との親子関係を法的に成立させることができる。認知には、任意認知と強制認知があり、そのうち、父親自身が手続きして行える認知が任意認知である。強制認知は裁判を伴うもので、ここではまったく関係ないので説明しない。

任意認知が成立すると、父親の戸籍に子どもの認知届出の記載が追加される。子どもが生まれる前に認知することもできて(それを胎児認知という)、そうすると出生届に父親の名前を書くことができるというわけだ。ちなみに、胎児認知をしておくと、妊娠中に父親が急死した場合に相続権が発生するといったメリット(?)もある。とはいえ、認知は産後におこなっても別に問題はない。それでもなぜわれわれが産前に胎児認知をしたかというと、出生届に両親の名前を書きたいという、あくまで気持ちの問題だった。

胎児認知の手続きをおこなう際のポイント

胎児認知の手続きをおこなうには、いくつかポイントがある。

・認知届を母親の本籍地で出す(父親の所在地や本籍地では出せない)
母親の承諾が必要
・父親の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、(届出人である)父親の印章と本人確認書類、(母親が一緒に行くときには)母親の印章を持参する

「母親の承諾」には、おおまかに2つの方法がある。役所で提出する認知届書の「その他」欄にその場で書く方法と、事前に承諾書を作成して持参するという方法だ。つまり胎児認知をするには、父親と母親が2人で母親の本籍地の市町村区役所に行くか、あるいは母親の承諾書を父親が持参して母親本籍地の市町村区役所に行くか、ということになる。いずれにせよ、認知届には父母両方の住所・氏名・生年月日の情報に加え、両方の本籍地住所を書く欄があるので、2人で行った方がスムーズではないかと思う。

このように、胎児認知をするには母親の本籍地の市区町村役所に行かなければならないため、母親の本籍地がとんでもない遠隔地だったり僻地だったりする場合には、産後の認知のほうが楽かもしれない。

私の場合は、妊娠5か月頃に自分の本籍地市役所を夫と2人で訪れ、認知届を提出した。このときに、出生届の書き方も教えてもらった。

胎児認知したときの出生届の書き方

非嫡出子の出生届には、通常は父の名前は書かない(書けない)。しかし、胎児認知が済んでいる場合は父の名前を書くことができる。胎児認知がなされている場合、出生届の「父」欄に父親の名前を記載し、「その他」欄には「出生子は○○年○年○日に父××に胎児認知されている。父の戸籍の表示 ○○市○○町○丁目○番 ××(←父の名前)」と書く。

ちなみに、出生届の「その他」欄にはこのほかに母親の新戸籍編製の旨も書かないといけない(ことが多い)ので、字は細かく書く必要がある。なぜ子どもが生まれたときに新戸籍を編製する必要があるのか? 嫡出子(つまり両親が婚姻している場合)は、子どもは両親のどちらかを筆頭者とした戸籍(婚姻したときに新しく編製されたもの)に入ることになる。一方、非嫡出子は母の戸籍に入籍することが民法で定められている。しかし、母が出産の時点で戸籍筆頭者でない場合(たとえば、母親自身が生まれたときのまま、つまり母親の父親(祖父)の戸籍に入っているままの場合)には、母について新たに戸籍を編製し、そこに子どもを入籍させなければならない。これは、戸籍法で「三代戸籍」(ひとつの戸籍に祖父・子・孫の三世代が在籍すること)が禁止されているからだ。そのため、多くの場合には、出生届を出すときに、母親と子どもが入った新しい戸籍を作ってもらわないといけないことになるというわけである。

母親の新戸籍は、出生届の「その他」欄に記載することで編製してもらえる。具体的には「母につき新戸籍を編製し、子を入籍させる。新本籍「××市××町○丁目○番」。」といったように書くことになる(この「新本籍」をどこにするかは、もちろん事前に考えておかなければならない)。私が提出した出生届も、胎児認知の件と、新戸籍編製の件を両方書いたので、細かい文字でぎちぎちになった。

出生届は、子の出生地か本籍地、あるいは届出人の所在地の市町村区役所に提出することになる。「届出人」とは、出生届の「届出人」欄に記載する人のこと。嫡出子の場合、「届出人」は父母のいずれかだけれど、非嫡出子の場合は母親のみなので注意が必要。

持参物は、出生届、出生証明書(産院でもらえるもの)、母子手帳、届出人の印章と身分証明書。ちなみに、届出人(母親)本人が持参出来ない場合、「使者」という扱いで他人が持参することもできるが、不備があった場合には持ち帰りになったり、後日届出人が役所に出向くことになるそうだ。非嫡出子の出生届の場合、書類の記載がややこしいので、可能ならば母親本人が持参するほうがいいだろうと思う。

私の場合は、退院の翌々日(帝王切開後約1週間)に、区役所に直接出向いて提出した(とても体がつらかったのでタクシーに乗っていった)。このとき、区役所の窓口にいたのは研修中の若い人で、非嫡出子・胎児認知済みの出生届を取り扱ったことがなかったらしく、後ろのデスクに持って行って他の職員さんたちと話し合いながら、参考書を取り出して首っぴきで書類をチェックしながら手続きしておられた。退院後、このときがいちばん体力勝負だったような気がする。

なお、出生届の提出によって編製される「新戸籍」だが、戸籍の編製には1~2週間かかることがあるので、これも要注意。私の場合、子どもの新しい健康保険証の関係提出書類に戸籍謄本を指定され、それを入手するのに1週間以上かかって本当に難儀した。子どもが誕生してから出生届を出すまで1週間、そこから新しい戸籍謄本を入手するまでさらに1週間強、そこから書類をおくって子どもの健康保険証を手に入れるまで2週間以上。子どもは生まれてすぐNICUに入院していたので、入院費の請求期限までに保険証が手に入るかどうか、本当にやきもきした(ただし、新生児ということで、健康保険証の提示を病院側もかなり待ってくれて、とても助かった)。請求して届いた戸籍謄本は私を筆頭者としたもので、最初から子どもの父の名前が載っていた。胎児認知をした甲斐があった。

こうして、私の子どもは初めから両親の名前の載った戸籍をゲットしたのであった。ややこしいように見えるが、やってみれば大したことはないし、何をしないといけないか分かっていたら乗り切れる手続きだと思う。とにかく分からなければ、役所の窓口で問い合わせよう。親切に教えてもらえるはずだ。

#事実婚 #妊娠出産 #胎児認知 #出生届 #夫婦別姓 #育児

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?