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フリーランスになった訳(エピソード3:動画に手を出し苦境に)

もともと、私はイラストレーターとしてこの世界に入ったので、止まってる絵の人だったんです。そのまま、そこを追求してたら良かったのですが。。。。

CGといえば、動きますよね。。。

黎明期からCGを手掛けてきたというちょっとした自負もあって、”CGっていうとアニメーションとして動くのがほしいですよね。。。”っていわれると、負けん気が出てきて、なんとかしたくなるものです。
ところが、その当時CGを動かすなんてことは個人ではほぼほぼ不可能。
大きなプロダクションがすごいマシンを使って、なんとかできるものだったのです。

ちなみに、当時知り合いのプロダクションが持っていたマシンは”Silicon Graphics"というワークステーション。ソフトは、Alias(今のAutodesk Mayaの前身)これらは総額数千万円だったと聞きました。購入するには不動産担保が必要だったらしいと噂されていました。いまやこれらレベル以上のものも個人で持てるマシンになってしまいましたね。

実は、私のところも 3DCGソフトを"PERSONAL LINKS"というソフトにリプレイスしておりました。あの天下のIMAGICA(当時、トーヨーリンクス)さんが開発した直系には本格的なCGプロダクションが使っているソフトのパソコン版です。これを使えば、一応アニメーションもできるシステムだったのですが。。。。

問題は、動画収録です。ここ十何年か前CGを始めた方は、パソコンの画面上で動画ファイルをダブルクリックすると普通に再生しますよね。でも、当時はアニメーションは1フレームずつバラバラの連番ファイル。動画ファイルフォーマットも実用的なものがなく、一旦業務用のVTRレコーダーにコマ撮り(粘土のアニメのような感じ)をして、初めて動いている映像が見れたのです。
アニメーションは、1秒の動きには30枚の静止画を連続して記録して初めてなめらかな動画になりますので、

1枚の画像をパソコンで計算する(10分ぐらい)=>保存=>たまった静止画を1個ずつ読み出し、VTRを制御して1コマ収録(この作業はパソコンが自動で行います)  

これで、やっと1/30秒分。簡単なCGでも20分程度かかります。
15秒なら、15秒×30フレーム×20分=150時間

これができるVTRレコーダーったって、そのへんで売ってる機種ではできません。SONY ベータカムという当時1台500万円の放送局で使っているようなものです。

流石にこの放送局仕様のものは個人でも買えないのですが、運良く(悪く?)同じようなことができる業務用のベータカムVTRが発売されました。これがなんと250万!!(さっきの話からするとめっちゃ安い感じしますが、いい車買えますからね。。。)
しかし、関西で大手以外でこんな仕事をできるのはほとんどなく、クライアントのビデオプロダクションからも熱望されていたので、リスクは大きいけどビジネスとしては成立するだろうという展望が見えてました。
実際、ちょっとした動画タイトルでもそこそこいい値段で取引してもらえました。

当初は、まずまず順調に受注もしておりましたが、ある時から数ヶ月全く電話も連絡もないような空白期間がありました。まあそのうちなんとかなるやろと悠長に構えておりましたが、3ヶ月ぐらいになるとほんまにやばい、前途のVTRのリース代は毎月かさんで来るし、このままやと廃業の危機というところまで行きそうになりました。あのときの動画制作のリスクを取る決断を本当に悔やみました。

毎日、新聞を見ると求人のチラシばかり目に入り、しまいには本当に転職活動で別のプロダクションに面接に行ったこともありました。

そんな追い詰められたときに、一本の電話が。。。
「ご無沙汰しています。来月末までに1本CGお願いできませんか?」
例のすごいワークステーションいれているプロダクションさんからです。今まで見学に行かせてもらったりといった間からだけで、お仕事をいただいたことはなかったのですが、どうも社内でもパンク状態でCGがまにあわないと。。。ほんとにこのときばかりは、命つながったとその電話先の担当者が神様に見えました。それをきっかけに、このあともこのプロダクションさんとは外注CG屋として長くお取引いただけることとなりました。

リスクは、どんな決断をしてもある

動画に踏み出していなければ、こんな綱渡りなことでビクビクしなくても良かったかもしれません。ただ、このリスクをもし取ってなかったら、その後この業界でうまく行ってたかどうか、それもわからなかったともいます。
世界が広がったらリスクも多くなります。でも、その事で縁も繋がりもふえてその後の人生にも可能性が増えていたことは間違いありません。
どんな選択をしても、多分何かしらのリスクは抱えないといけないものだと思います。特にフリーランスとして仕事をしていくということは、チャレンジしないという選択(停滞)は、逆の大きなリスクになると思いました。
40代までぐらいは多少のチャレンジリスクは取れると思うので、機材とかの話だけじゃなく、新しいことに少しでも興味があれば、ぜひやってみてほしいと思います。

UnsplashMichael Shannonが撮影した写真


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