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「夢の飼い主」への手紙

※物語「夢の飼い主」のエピローグとなっています。未読の方は、まずはそちらからお読みください。

6. 彼女への手紙

遠くから、今でも、ぼんやりと彼女のことを見て過ごしている。

地球からこの星に帰ってきて、どれくらい時間が経ったのだろう。

地球で過ごした彼女との日々は、僕にとっての宝物だ。
彼女と一緒にいるだけで、僕の名前を呼んでくれるだけで、とても幸せだった。
僕が突然いなくなって、まだ幼かった彼女は、一生分使い果たすぐらいの涙で悲しんでくれた。
そんな彼女は、もう大人になって、目眩がするほど忙しそうに働いている。
でも、今でも時々、夜空を見上げて僕の名前を呼んでくれるんだ。

「シリウス」

そう、この星は、シリウスと呼ばれている。
古くは「焼き焦がすもの」という意味だったらしい。
宇宙の中でも、ひときわ光が強いから、人が飼うには不向きだったんだろう。

星は、人々の希望、夢の象徴だ。

普段は、夜空に輝いているだけの星だけど、人が「夢」を胸に抱いたとき、動物の姿となって「飼い主」の元へ現れる。この星は、シリウスという名前以外にも、Dog Starと呼ばれることがあるらしい。きっと、地球では犬の姿をしていることが多いのだろう。

彼女は幼い頃、「壮大な夢」を抱いた。
夏の匂いの残る中、秋の気配が感じられる夕方。
僕は、彼女の元へ行ったんだ。

地球に着くと、すべての記憶を失ってしまう。
自分が「星」だったことも。
でも、なぜかは分からないけど、「飼い主」が誰かは、分かるんだ。

彼女は、僕という「夢」を飼い始めて、毎日が充実した。
でも、「夢」を飼いならすのは簡単なことじゃない。

僕という「夢」を飼うことをやめて、彼女は大人になった。
でも、大人になったからといって、「夢」を諦めたわけじゃない。
だって今でも、夜空に向かって、僕の名前を呼んでくれるから。

そうだ、彼女に手紙を書こう。

今の想いを書くんだ。

上手く書ける自信はない。
それに、手紙を書いたって、彼女には届けられない。
他の誰かに呼ばれたら、また記憶を失って地球に行くのだから。

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君は大丈夫。
辛い時は、夜空を見上げて僕の名前を呼んでごらん。
いつでも見守っているよ。
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たくさん伝えたい想いはあるのに、まだこれしか書けていない。

あぁ、誰かに呼ばれたみたいだ。もう行かなくちゃ。

これから僕は、君との記憶を失うだろう。
でも、他の誰かを輝かせに行くよ。
それが僕の使命なんだ。

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