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クラーク国際から2チームが全国大会の切符を勝ち取る。〝eスポーツの甲子園〟でめざせ日本一

5人1組のチームプレーで戦うゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」を授業に取り入れているクラークのeスポーツコース。毎年、高校生トップレベルの大会で好成績を残している。〝eスポーツの甲子園〟といわれる夏の大会「STAGE:0」に挑戦する生徒たちを取材した。

本気でやるから成長する

CLARK NEXTのeスポーツコースでは、生徒たちのモチベーションに応じて「ベーシック」と「アドバンスト」の2つのカテゴリーに分かれてリーグ・オブ・レジェンドの授業を行う。ベーシックは基礎を学ぶカテゴリー。ゲームの知識をわかりやすく教え、ゲームの魅力やみんなで取り組むことの楽しさを伝える。

一方、アドバンストの生徒たちは高校トップレベルの大会を目標に厳しい練習を重ねる。だが、(現時点で)CLARK NEXTから公認チームとして出場できるのは、トライアウトで選ばれた2チームのみ。その理由を「本気でeスポーツにぶつかってほしいからです」とeスポーツコース顧問の笹原圭一郎先生は説明する。
「大会を思い出づくりにしてほしくない。本気で取り組まないとeスポーツはただのゲームになってしまいます。スポーツとして本気でぶつかって、本気で勝つ。そうすることで生徒は大きく成長するし、感動を分かち合うことができます

一定の課題をクリアした生徒が志願できるトライアウトでは、2〜3週間にもおよぶ選考の末、Aチーム「Yuki飯食べ隊」、Bチーム「Sesa飯食べ隊」のメンバーを選抜する(チーム名はそれぞれ、全国大会で優勝したらコーチのYuki先生とSesami先生から手料理をごちそうしてもらえるという約束にちなむ)。学年は関係なく、完全な実力主義だ。

結果も出している。2019年に全国高校eスポーツ選手権(毎冬に開催される高校生のeスポーツ全国大会)で準優勝、2020年にはSTAGE:0(ステージゼロ。同じく高校生のeスポーツ全国大会。毎夏に行われるためeスポーツの甲子園ともいわれる)で準優勝した。

今年のSTAGE:0では、初の全国制覇をめざす。Yuki飯食べ隊、Sesa飯食べ隊とも関東ブロック大会を順調に勝ち上がり、ブロック代表決定戦へ。関東ブロックから全国大会へ進めるのは2チーム。ブロック代表決定戦は2試合あり、1試合目にSesa飯食べ隊、2試合目にYuki飯食べ隊が出場した。

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Sesa飯食べ隊のメンバー。左から2年・平島宏樹さん、2年・柳原慧さん、3年・味川怜平さん、2年・知久伊吹さん、3年・越路蛍翔さん。将来について聞くと、「エンジニア」(平島さん)、「鍼灸師」(柳原さん)、「eスポーツの企画・運営」(味川さん)、「経営者」(知久さん)、「イベントの音響」(越路さん)と多様な夢を語ってくれた

仲間を信じて、全力で行く

ブロック代表決定戦1試合目は、Sesa飯食べ隊と朋優学院の1戦。試合前、キャプテンで3年生の味川怜平(あじかわりょうへい)さんは、「めちゃくちゃ仲のいいチームです。いっぱい練習してきたので絶対勝てるように頑張ります」とインタビューに答えた。

味川さんについて、笹原先生は「一番成長している生徒」と話す。
「コース授業の初日に、『ゲームを本気で続けられるか自信がない』と泣きながら相談してきた。不安だったんでしょう。でも、仲間と切磋琢磨していくうちに自信がついて、2年連続でSTAGE:0に出場するほどうまくなったし、今年はキャプテンとしてしっかりチームをまとめています」

中学はあまり通えなかったけれど、クラークに入学してからは毎日登校している。
「皆勤賞を狙っています。コース全体の雰囲気がすごくいい。好きなものが同じで集まっている仲間だから話を深掘りしやすくて楽しいんです」と味川さんは笑う。練習でも、試合でも、キャプテンとして率先してチームを盛り上げようと心がけている。

味川さんは、eスポーツを通して、いろいろな人と出会えたことに感謝している。だから、将来はeスポーツイベントの企画・運営に携わってeスポーツに貢献したい。そのために、大学で経営を学びたいと考え、受験勉強にも励んでいる。

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味川怜平さん「個人としてもチームとしても初めての全国大会。慢心せずに努力して優勝したい」

Sesa飯食べ隊の強みは集団戦。関東ブロック代表決定戦では、2年生の平島宏樹(ひらしまこうき)さんを中心にした戦略が練られた。

平島さんは、もともとゲームに対するモチベーションがそれほど高い方ではなかったという。
「トライアウトではすごく悩んだんですけど、うまくなりたい気持ちが垣間見られてチームに選びました。チームに入ってからも頼りない場面が何度かあったけれど、コーチのSesami先生がつきっきりで教えたらすごく吸収して、この夏で驚くほど伸びた子なんです」と笹原先生。

リーグ・オブ・レジェンドでは、160体以上あるゲームキャラクターから自分のキャラクターを選んで操作する。関東ブロック代表決定戦にあたり、Sesami先生が平島さんにすすめたキャラクターは「レル」。攻守ともに優れるが、操作がとても難しいキャラクターだ。平島さんは躊躇したが、「おまえならできる。俺が保証するからこれでいけ」とSesami先生に背中を押された。

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ブロック代表決定戦でMVPに輝いた平島宏樹さん。「1日だけバグりました」とはにかむ

試合本番。Sesa飯食べ隊は、集団で相手チームを待ちかまえて戦う形を常に維持した。相手が来たら、平島さんを先頭に仕掛ける。それをエースプレーヤーで2年生の知久伊吹(ちくいぶき)さんが援護する。行く!と決めた瞬間の連携が完璧だった。
「チームを信じて、行けるだけ行こう。ひたすら前だけ見て走った。戦略はみんなにまかせて、ゴーの指示だけ待ちました」と、平島さんは振り返る。
相手を引きつけて、4人まとめてなぎ倒す。平島さんはスーパープレーを連発し、チームに勝利をもたらした。

MVPに選ばれた平島さんは、「本番なのですごく緊張したんですけど、Sesami先生から直前に励ましてもらって、いつもどおりのパワーを出せました」とインタビューに答えた。
「恥ずかしがり屋の彼が、カメラの前でお世話になったSesami先生の名前を挙げて堂々とインタビューに答えた。教えていて、あれ以上うれしいことはないですね」と笹原先生は感動した。

チームで勝つための自分の役割とは

続く、STAGE:0の関東ブロック代表決定戦2試合目。Yuki飯食べ隊は、今大会最速のわずか17分でわせがく稲毛海岸に圧勝した。Yuki飯食べ隊は昨年のステージゼロで準優勝したチーム。雪辱を誓った今大会にかける気迫はすさまじかった。

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Yuki飯食べ隊のメンバー。前列左から2年・菅野珀冬さん、3年・鬼島至雄さん、2年・田中大智さん、後列左から上野壮志朗さん、3年・田中勇輝さん、3年・渡辺知晋さん。ブロック代表決定戦では上野さんがMVPに。田中大智さん、田中勇輝さんはプロプレーヤーを、菅野さんはプロプレーヤーかストリーマー(配信者)をめざす

「クラークファイティング!!」
試合直前、チームマネージャーで3年生の渡辺知晋(わたなべ ともゆき)さんの大きな掛け声が会場に響き渡った。一瞬で、チーム全員の表情が和らいだ。
「ワッティ(渡辺さんのあだ名)は物静かで、ふだんは声小さいのに。馬鹿でかい声でビビりました」「びっくりしすぎて、緊張も何もなくなりました」と、メンバーたちは笑った。

マネージャーは、日頃からチームの体調やメンタル面を管理するほか、対戦前のバン&ピックというタームでも重要な役割を担う。ドラフトピックは両チームが交互に、自分たちのチームで使用するキャラクターを選んでいくシステムで、同時に対戦チームが得意なキャラクターを選べないように指定することができる。お互いに戦術の探り合いを繰り返す、「チェスの中に存在するチェス」とも呼ばれる心理戦だ。このタームで、マネージャーは相手チームの戦術を読んでそれに対する戦術をチームにアドバイスする。

そのためには、選手以上にゲームの知識が必要だ。160体以上あるキャラクターの特徴を把握し、世界のゲームシーンで、いまどのキャラクターが強いかを分析する。チームとしてどういったキャラクターを組み合わせると強いか。また、相手チームのキャラクター構成を分析して、どういった戦い方をしてどの時間帯から仕掛ければ勝てるかを考える。

「eスポーツには選手だけでなく、サポートするマネージャーの仕事も必要です。でも、高校生には非常に難しい。渡辺さんはeスポーツの専門学校に進学してマネジメントを勉強したいと話していたので、クラークとして初めての学生マネージャーを彼に任せています」と笹原先生。

渡辺さんは、授業中は教わったキャラクターや戦術、生徒たちの特徴を事細かにノートやiPadにメモし、休み時間や自宅での時間には、プロの試合や海外の統計サイトのチェックを欠かさない。
「キャラクターの強さは海外の基準で決まります。世界中のプロの試合でどのキャラクターがどれくらい選ばれているのか、海外の統計サイトを調べています。マネージャーという立場で、チームにできるだけのことを尽くしてがんばりたい」。控えめな声ながら、自分の役割をしっかりと渡辺さんは語った。

Yuki飯食べ隊のキャプテンは、3年生の鬼島至雄(きじましゆう)さんだ。「中学の頃は不登校で学校にいいイメージがなかったけど、クラークでは学校が好きになって生徒会長もやっている」という鬼島さん。全国にあるクラークの各キャンパスの1年生を対象にした「リーグ・オブ・レジェンド新人戦」の運営も手がけるなど、みんなから頼りにされるリーダーだ。

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鬼島至雄さん「全国大会に向けてのミーティングで、チームメンバーがそれぞれのいいところ、改善すべきところについて話し合いました。発見が多く、腹を割った話だからこそ理解できた。勝ちたい気持ちが強くなりました」

プレーヤーとしても1年生の頃からAチームのYuki飯食べ隊で活躍している鬼島さんだが、昨年冬に「自分のプライドが一瞬にして壊れた」と話す。トライアウトに当時1年生だった田中大智さんが現れ、サポートというポジションを奪われたからだ。死に物狂いで練習したが、田中さんにはかなわなかった。そこで意識したのが、チームにおける自分の役割だった。

「ポジションをジャングルに変えました。ジャングルはもっともコミュニケーション力が必要なポジションだけど、このチームの他のメンバーはあまり話が得意じゃない。チームとして弱点だったので、ならば自分がやろうと。自分の中で大きなチャレンジでした」(鬼島さん)
それまでジャングルをやったことがなかったので、最初は全然うまくいかなかった。それでも、練習を重ねるうちにジャングルとしてのスキルも向上。チームとして勝つためにポジションを変えたことが、自分の成長にもつながった。

悲願の全国制覇へ−

Yuki飯食べ隊、Sesa飯食べ隊ともSTAGE:0全国大会へ駒を進めた。同大会に参加するのは、史上最多の全国1960校2234チーム。その頂点をめざして、両チームのキャプテンが意気込みを語った。
「Yuki飯食べ隊も、Sesa飯食べ隊もどちらも勝ち進んで、クラーク対クラークで決勝を戦いたいです」(鬼島さん)。(※)
仲のよさでは負けない。このまま勢いをつけて、優勝めざしてがんばります」(味川さん)。
決戦は8月。Yuki飯食べ隊、Sesa飯食べ隊の躍進から目が離せない。

※決勝トーナメントの抽選の結果、Yuki飯食べ隊とSesa飯食べ隊が勝ち進むと、準決勝の時点で対戦することが7月28日に発表されました。

取材・文/大室みどり

8月12日(木)から高校eスポーツの祭典「STAGE:0(ステージゼロ)」が始まります!CLARK NEXT AkihabaraのYuki飯食べ隊、Sesa飯食べ隊が決勝トーナメントに登場!大会の模様はライブ配信される予定です。

■STAGE:0(ステージゼロ) 全国高校対抗eスポーツ大会 公式サイト
■クラーク記念国際高等学校 eスポーツ特設サイト

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