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シューベルト 交響曲第7番ロ短調D 759「未完成」解説

シューベルト(1797-1828)と聞いて「魔王」「野ばら」を思い出す方は、学生時代に真面目に音楽の授業を受けていた方かもしれません。「未完成」も知ってるで!という方も多いかもしれませんね。交響曲第7番ロ短調「未完成」D759。そもそもなぜ「未完成」なのか?クラシック音楽史上、最大のミステリーとも言われています。

本当の答えはタイムマシンに乗ってシューベルトに直接聞きたいくらいの話、現在までこのミステリーは解明されていません。失恋説、ベートーヴェン説、多忙説、病気説、トラブル説、確信犯説など多くの説があってどれも納得。シューベルトが書いた3楽章の最初の20小節が残っており、当時の手紙や状況証拠はあるものの、決定打はありません。映画にまでなっているほどのミステリー、答えは皆さまのご想像にお任せいたします。根拠は薄いものの、恋愛説がロマンティックで私は気に入ってます。

この興味深い謎解きは皆さまに譲るとして、ここからはこの未完の名曲の魅力を、お伝えしたいと思います。31才という短い生涯の中でシューベルトは1000曲以上を作曲し「歌曲王」とも言われています。生前は「売れない作曲家」だったというのが通説でしたが実はそれなりに売れていたという新説も。モーツァルトの同僚でもあったあのサリエリ先生に師事し、陰ではベートーヴェンをリスペクトしていた彼はとても速書きで、宝石のような歌曲を中心に多くの素晴らしい作品を残しました。「ます」「死と乙女」「菩提樹」「アヴェ・マリア」「4つの即興曲」「ザ・グレート」「八重奏曲」など是非聴いて欲しい曲がたくさん。

「未完成」交響曲は、一般的な4楽章構成の交響曲と違い、2つの楽章しかありません。2つしかないにもかかわらず、美しく、完成されています。
ロ短調の交響曲はこの「未完成」が世界初。その後の有名なものではチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」がありますが、「未完成」以前はベートーヴェンもモーツァルトもハイドンも、ロ短調では交響曲を作曲していません。ベートーヴェンは「ロ短調は暗くて交響曲にはできない」と言ったとか。

1楽章はそれこそ、とても暗い、地を這うようなチェロとコントラバスによる動機で始まります。すかさずオーボエとクラリネットによる物悲しい第一主題が提示され、束の間の高揚の後、木漏れ日のような明るさの第二主題がチェロからヴァイオリンに受け継がれ朗々と歌われます。トロンボーンまで伴った形でこの動機と二つの主題が大きく展開されながら、曲が進みます。

2楽章はのどかな田園にいるような、また何かに憧れを抱いているような、不思議な曲です。弦楽器により第一主題がすぐに現れ、続いてクラリネットによる長いフレーズの第二主題が現れます。この二つの主題が形を変えて繰り返され、ただただ美しく、曲が進みます。

この「未完成」交響曲についてはウェブで調べてもらえればたくさんの情報がありますし、精緻でかつ明快な文章としては新版(2017)の全音スコアにある、石川亮子さんの解説をオススメいたします。

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clarinetist3D
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