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ニンジャスレイヤーTRPGソロリプレイ余暇&インターミッション【トゥー・メン・ラフィン】


はじめに

この記事は、ニンジャスレイヤーTRPGの自作プラグイン、「ティターン・ニンジャクラン」のテストプレイを目的としたソロキャンペイグン(キャンペーンのこと)の余暇リプレイ、並びにインターミッションです。
前のお話


1

前回リザルトから合計で【万札】40を持っているので、成長処理を行っていく。
1・2スロットは【ジツ】を伸ばし【ジツ】5、残り5
★巨神の武具、★★ゲゲネイス・ジツ、◉◉グレーター級ソウルの力取得
(神話時代のビジョンに触れソウルの力をより引き出したとみなす)
3・4スロット目でシノギ。【万札】9を入手し合計【万札】14を繰り越す。

 東の重金属汚染雲がその輪郭を紅に染めるころ、ヤマ山地の奥ゆかしい江戸様式ドージョーの中心で向かい合って正座する老人二人の姿があった。このマッポーの時代にあってもドージョーには清冽な冬の早朝のアトモスフィアが張り詰めている。

「ドーモ、お待たせいたしました。こちらが我がアマリイチ酒造家伝のマキモノとなります」
緊張した面持ちで一方が古びたマキモノを取り出す。アマリイチ酒造の当代、アマリイチ・セイジュウロウだ。

「ドーモ。ありがとうございます。アマリイチ=サン」
一礼して巨体のもう一方がテック手袋でそのマキモノを受け取り、丁寧に広げた。巨神ニンジャ、オールドコロッサス。つい昨日アマリイチ酒造へのソウカイヤの襲撃を退けたニンジャであり、謎めいたレリックの探索者だ。

「このマキモノは平安時代、私の祖先が中空の球体に入って流れ着いた異人から託されたという謂れのものでして……」
オールドコロッサスはアマリイチ老人の話に耳を傾けつつマキモノに目を落とす。微かにいまだカラテの残留する古い羊皮紙には古代ギリシャ文字とルーンカタカナが一行ずつ交互に、変則的なブストロフェドンめいて置かれている。

 一見して一部の単語の形は恐らくホメロスよりもなお古く、平安時代にここに流れ着く前にも相当の歴史を背負うものに思われた。惜しむらくは文献学者であって考古学者ではないシーチ・シャオタ先生、オールドコロッサスにはこのルーンカタカナ部分をここで全て解読することは相当荷が勝つということだ。

「……その異人の名はメリッサ=サンと言ったそうです。そしていつか、ここにシルバーハニー・サケ・オブ・ダイギンジョの名を知る者が訪れた時このマキモノを与えよと……」
アマリイチ老人がそう口にした瞬間、ニューロンが奇妙な衝撃に震え、オールドコロッサスは苦悶した。
「ヌゥーッ!?」

「どうされた!?オールドコロッサス=サン!?」
案じるアマリイチ老人の声をどこか遠くに聞きながら、オールドコロッサスは遠い日のビジョンに自我を引き寄せられていった。

 ……SLAAAASH!すれ違いざま、雷光に勝る速度で振るわれたトリアイナ・ヤリナギナタにその身を裂かれ、ハチめいた装束の女が膝をつく。女ニンジャはハチミツめいた血を流しながら苦悶し、カラテを構えなおそうとして、またくずおれた。加えて、まさにドローンめいてその身を守っていたであろう無数の超自然のハチの群れも纏めて全て今の一閃で消し飛ばされている。勝敗は明らかであった。

「……これがヒサツ・ワザ。シャドウレス。貴様には聞くことがある。メリッサ・ニンジャ=サン」
向き直りザンシンする酷薄な声の主こそ、黒フードに白髯の巨神、ヒアス・ニンジャであった。

「無慈悲なティターンよ。私が何を知るというのか。ハチの育て方でも聞きに来たかよ」
メリッサ・ニンジャは地に臥したまま睨み返す。その流れるような金髪の隙から覗く花じみたかんばせの目は青い複眼であり、その全てに無念と怒りを湛えていた。

「実際遠からず。我はハニー・サケを求める。そして、我がこれを問うて襲うてきたは貴様のドージョーの者たちであろう」
ヒアスの表情は動かぬ。しかし、その求めは強大なアーチニンジャのそれとしては明らかに奇妙であった。

「ハニー・サケならお前たちに仕えるモータルどもがいくらでも作ろう。お前はハニー・サケに何を求めると言うのだ」
メリッサは思わず訝しんだ。複眼の半数に怒りに勝る好奇が滲みだす。

「……オヒガンから現世への力の流れ。それを認め干渉しうる自我を保った酩酊が要る。貴様らのハチミツならば、それを可能にするハニー・サケを造れよう」
ヒアスは事も無げに言い放った。それは本当に叶ったとすれば大業という言葉ですら表せぬ、ヌンジャの領域をさえ冒しかねないものだ。

「そのようなズガタキェーの片棒を私に担がせようてか。……そんな……タノシイをよお!」
もはや完全に知的好奇心に支配されたメリッサは立ち上がり、ヒアスの手を取った。実際深かった傷も今や超自然のハチミツめいた体液によってほとんど塞がり、豊満な肢体に活力が満ちている!なんたる神話級アーチニンジャのニンジャ耐久力か!

「秘伝のハニー・サケなら今はネクタル・サケとアンブロシア・サケがある。オリュンポスのやつらにも寄越してるやつだ。知ってるだろ?それでコトダマ絡みならネクタルの方だな……。いや違う。忘れていた。そうだ。ゴールデンハニー・サケ・オブ・ギンジョがある!これにあの銀色の水を加えて醸造すれば……」
口から泡を飛ばして語り続けるメリッサをヒアスはうっそりと眺める。これであと必要なものは三つ、否二つ……。

「……サン!オールドコロッサス=サン!」
やがてオールドコロッサスは神話時代のビジョンから目覚め、気づかわしげに横で自身の背を擦るアマリイチ老人に気づいた。
「アマリイチ=サン。お見苦しいところをお見せしました。少々、持病が、ね……さあ、読み進めましょう」
オールドコロッサスは微笑み、解読を進めていく。

「……ここが具体的な製法でしょうな。ギリシャ語の部分で助かりました。何でも、満月で清めたハチミツと、銀色の水を以てモータルの匠が醸造すべしと……。銀色の水、ご存じですかな?」
辛うじてサケの製法部分に辿り着いたオールドコロッサスがアマリイチ老人に尋ねる。それは先ほどのビジョンの中で耳にした語でもあった。

「銀色の水、サケに使うようなものでそういうものがあるとは聞いたことがありませんな……」
アマリイチ老人は眉根を寄せる。しかし!
「しかし、そのような古の霊酒を作るとなればこのアマリイチ・セイジュウロウ、取り組むになんの不足もなし!今わからぬものであってもきっと調べ上げて見せましょう!」
マスターブリュワーは二十代の若者めいた情熱をその眼に宿らせ気炎を上げた。

 ここでオールドコロッサスは考える。そもそも自分の専門はあくまで文献学であり、これからもこの謎に満ちた探索を続けるのであれば、考古学的見地から古代ニンジャ文明に詳しい協力者を得ねばならない。しかしあまりソーシャルネットワーキングに活発でなかったオールドコロッサス、シーチ先生に学内での協力者の心当たりなどなし、そもそもニンジャ学説自体学問の潮流において主流とは言い難い。

 どうあれ、銀色の水にしても、このアマリイチ老人に任せきりでは学問を以て身を立てたものとしてどこにも顔向けできぬ。アマリイチ老人から託されたマキモノを丁寧に再び丸めとりながら、オールドコロッサスは何としてでもこのマキモノの真実に辿り着き、銀色の水の正体を突き止めることを決意していた。これはソウルの課した探索行に必要だからというだけではない。研究者としての矜持だった。

2

 では、探索行の手がかりを得たオールドコロッサスはこのまま奥ゆかしいアマリイチ老人の元を辞してネオサイタマに悩みなく凱旋するものか?答えは否、である。
「アマリイチ=サン。私がここを発つ前に一つだけ相談しなければならないことがあります」
オールドコロッサスは険しい顔つきでアマリイチ老人に語り掛ける。

「それは、今後、またネコソギ・ファンド……否ニンジャヤクザ組織ソウカイヤの報復めいた襲撃があった場合に関する備えです」
実際、大いに頭を悩ますに足ることだ。先だって、オールドコロッサスはブラックゴーストを叩きのめし、ソウカイヤがそうそう手出しできない状況を作ったとアマリイチ老人に言った。

 それ自体はウソではない。数日後に迫った知事選壮行会前に再襲撃を計画することはいかにソウカイヤでも非現実的であり、まして手練れを撃退されたとあっては今後ともアマリイチ酒造に手出しするリスクとリターンの算盤は完全に合わない。

 しかし、である。ソウカイ・シンジケートがヤクザ組織である以上メンツを潰されたことによる報復がないとは誰にも言いきれず、そしてその場合、今回のように事前に傭兵を雇い入れることなどは不可能なタイミングの急襲が予想されよう。

 勿論、思い至らぬアマリイチ老人ではない。しかしそれへの明確な答えを持つものは、ザイバツ・シャドーギルド等ソウカイヤに匹敵するかそれを上回るニンジャ戦力をもつ組織以外にない。或いは、ハナからソウカイヤを滅ぼす戦いを挑むことも辞さない赤黒の復讐者であるか。俄かにドージョーの空気が重く淀んだように思われた。その時!

「アオーン!」
中庭に回転着地した影が吠えた。
『ドーモ、お困りのようだな、オールドコロッサス=サン。ストライダーです』
その影はニンジャのニューロンにのみ響く超自然の声でアイサツした。

「おお、タロウイチ、今日も来たのかい?」
中庭に面したフスマを開け放ち、アマリイチ老人が目を細めて迎え入れたのは、ハーネスをつけたシバ種の盲導犬だった。すなわち、このタロウイチがニンジャ、ストライダーなのだ!

 ドージョーに入り込み、アマリイチ老人の膝の近くで座ってヘッヘッと舌を出すストライダーはオールドコロッサスのアイサツを待つ。
『アマリイチ=サンを困惑させたくないならばタロウイチでよい』
……アイサツを促す。

「ドーモ、タロウイチ=サン。オールドコロッサスです」
『話は聞かせてもらった。暫くならば私がここに留まり、ソウカイヤのニンジャどもへの備えとなろう』
オン!と力強い吠え声とともにニューロンに声を響かせるストライダー。意味が通じずともそのアトモスフィアはアマリイチ老人にも伝わったと見えた。

「そうだなタロウイチ。お前もいるのだし、ワシもキアイせねばならんよな」
そしてアマリイチ老人は気丈に胸を張り、わしゃわしゃとストライダーの毛並みを撫でる。それを見たオールドコロッサスのニューロンは極度加速した。この健気な老人たちにのみ重荷を残してはならぬ。

折角なのでランダムで護衛を依頼する傭兵・企業を決定してみた
1 :
ブラックヘイズ

2 :
ソードモンガー

3 :
スカラムーシュ

4 :
ブライカン

5 :
レッドハッグ

6 :
ムシボシ

/nd (依頼先ダイス)
(依頼先ダイス):
1d6 = (6)
合計値:6

ムシボシ
ネタで入れたら当たってしまった。ここからを考えてこの記事自体の投稿が遅れた。

 ……やがて、オールドコロッサスは一つの可能性に辿り着き、一人と一匹に対し口を開いた。
「ムシボシ・コンサベーション。あのメガコーポは文書のみならずあらゆる文化財の保全を目的としています。実際ニンジャ戦力もあるとみてよいでしょう。個人のコレクションならばともかく、ここの規模と歴史を考えれば、実際安価で依頼できる可能性もある筈」

「それは妙案かも知れませんな。オールドコロッサス=サン。ウチには実際サケの製法のマキモノや江戸時代よりの道具も数多い。渡りをつけていただけるなら、ぜひ見積もりをお願いしたい」
『私一人で手が回らぬこともあろう。実際今回は貴殿に助けられた。こちらとしても否はない』
ワン、と短くストライダーが吠えるのを聞きながら、オールドコロッサスはムシボシにIRCでコンタクトする。
「ヤマ山地添付座標、伝統的酒造業の保全見積希望。複数忍襲撃可能性」

 ……僅か三分後! KBAM!小爆発を伴ってカトンの翼で中庭に飛来したニンジャあり!精妙なジツのコントロールは庭の下草一本たりとも焦がさぬ!蛍光菫色の髪をシニヨンに纏め、純白ビジネススーツ風ニンジャ装束と秘書風メンポを身に着けたその強大なニンジャ存在は、ドージョーの面々に向かって優雅なアイサツを決めた。

◆インペリアルガーデン(種別:ニンジャ)
カラテ    11  体力   15
ニューロン  8  精神力  17
ワザマエ   8  脚力   5/N
ジツ     6  万札  60

攻撃/射撃/機先/電脳  13/10/12/10
回避/精密/側転/発動  14/8/8/14
即応/緊急回避     6/4
◇装備、サイバネ、ジツ、スキル
秘書メンポ(軍用サイバーサングラス+1とみなす)、白スーツ型ニンジャ装束(伝統的装束+1とみなす)
テックハイヒール(ニンジャレガース+1とみなす)、エレガントなケープ(光学迷彩ローブとみなす)
▶生体LAN端子LV1、▶▶特殊スマートサイバネアーム(テッコLV2とみなす)
☆謎めいたニンジャソウルLV3、★カトン連打、★★カトン・ダイブ(カトン・ジャンプ)
★★カトン・ウェポン生成
●連続攻撃2、●連射2、●時間差、●マルチターゲット
◉◉タツジン:ツルギ、◉ヒサツ・ワザ:ファイアフライ、★◉火炎武器制御
◉◉グレーター級ソウルの力、◉翻弄、◉ニューロンブースト/チルアウト
記憶:◉交渉:威圧、◉知識:貴族の流儀

カトン・ジャンプでニューロン捨てビルドのニンジャを崩して生成ツルギで赤熱貫通しつつファイアフライを狙うって素敵じゃないかというコンセプトのもと組まれた秘書ニンジャ。どちらかと言えばNPCも40に収めた上でボス運用する時は緊急や即応を盛りたいタイプなので実際器用貧乏な感じになってしまった。
設定上は強いのでキャンペイグンが進んで再登場するならリビルドするかもしれないが、せっかく作ったので載せておきます。

「ドーモ、シーチ=サン。アマリイチ=サン。お見積もりのご依頼ありがとうございます。ムシボシ・コンサベーション社長秘書、インペリアルガーデンです」
まずは良し。オールドコロッサスは心中頷く。インペリアルガーデンは恐らく今の自分よりも実際強大だ。このクラスのニンジャが容易く動くならば、戦力の不足が破滅を招くことはそうない筈。であれば、次は。

「弊社は文化財保全活動を目的としております。江戸時代からのこちらの酒造業の安全にお力添えできるならば、それは弊社の設立目的にも沿うもの。実際嬉しく思いますわ」
どれほどその職業意識に信を置けるかだ。そう考えたオールドコロッサスに先回りするようにインペリアルガーデンは続けた。

「しかし、実際私の向こうに回しているのはソウカイヤ、という巨大組織らしいですぞ。それでも構わぬとおっしゃるか」
アマリイチ老人もまた警戒して質問する。ムシボシ社もこのマッポーの世のメガコーポ。組織同士で話をつけられて見捨てられるリスクは当然想定すべきものだからだ。

 その瞬間!ギラリと秘書ニンジャの目が光り、室内の気温が数度上がったように感じられた。反射的にストライダーとオールドコロッサスは身構える。
「……失礼。もっともなご心配ですわ。しかし弊社発起人社長ただ一つの願いはあらゆる文化財の保全。であれば我々は相手がソウカイヤであれ、ザイバツであれ、アマクダリであれ、未だ形無きダークカラテエンパイアであれ、一切のリスクを恐れません。幸い、私はカラテが足りないと思ったことはありませんの」

 取り繕ったインペリアルガーデンの表情の奥にはいまだ、熱烈な愛社心と発起人社長なる人物への忠誠が狂気にまで高められたかのようなアトモスフィアが窺える。そして、オールドコロッサスも知らぬ多くのニンジャ組織と思しき名。少なくとも、このアマリイチ酒造の保護に関する限りはムシボシは裏切らぬ。その確信と共に巨神ニンジャはアマリイチ老人に向かい、頷いて見せた。

「では、我がアマリイチ酒造の設備と所蔵の古文書を検めた上で、見積もりを願いたい。インペリアルガーデン=サン」
「それには及びません。ひと月につき万札3、それでいかがかしら。こちら、契約書を既に作成しております」
事も無げに言ってのけるインペリアルガーデンに、残りの全員が目を丸くした。実際安い。出された契約書を検めるに、不審の点は見当たらず、良心的ですらある。

「どうして、ここまでして頂けるので」
「繰り返します。設立目的に沿うからですわ。これが単なる身辺警護であれば、百倍の値でもつけたでしょうが……。弊社発起人の言葉を借りれば、人の営みの粋は守られねばならぬから、と申し上げてもよいでしょう」
その口調は決断的で、もはや疑問の介在を許さない。そして、アマリイチ老人はついにこの志操堅固なるニンジャをリスペクトすると決めたようだった。

 ……実際、ああいった手合いは初めてであった。オールドコロッサス……シーチ先生はニチョームの仮宿でリモート講義の準備をしながら数日前のことを思い返す。このネオサイタマでクライアントを選ばぬ文化財保護を行うのであれば、あれほどの狂気も必要になろうか。翻って、自分の学問と探求はあのインペリアルガーデンとムシボシ社に恥じぬ決断的な物たり得ているか。

 未だ学問を知らず、しかし学問を楽しんでいたころの情熱が戻ったようだった。アマリイチ老人から託されたマキモノの解読、考古学に強い協力者の発見、そして今月のリモート講義。なべての事を疎かにせず、以て余人に愧じぬものとすべし。デスクに向かうシーチ先生の口から無意識に笑いが漏れていた。

シノギ
(リモート講義1コマ目、今回は古代ニンジャ文明の知識も古典学の講義にうまく落とし込めたとしよう)
/nd u21
:
21d6=6 = (3,3,3,5,3,2,1,1,5,6,1,3,2,4,6,6,6,4,6,6,4 :成功数:6)
合計値:6
2コマ目
/nd u21
:
21d6=6 = (6,3,3,2,6,1,5,3,5,4,3,2,4,1,6,2,3,5,1,2,3 :成功数:3)
合計値:3

3

 ……しかし、この時ネオサイタマで笑ったのはこの温和な老人一人ではない。トコロザワ・ピラー大宴会場、「ラオモト・カン候補知事選出馬壮行会」その主賓たちに振る舞われるのは……ナムサン!「天照の涙30年」ではないか!

「ムッハハハハハハ!お世話になっております!今日は私を政界へと後押ししてくださる皆様のために、実際特別なウイスキー、天照の涙30年をご用意いたしました!」
上機嫌に笑う鎖頭巾にアルマーニのスーツの男こそラオモト・カン。ネオサイタマの僭主にしてネコソギ・ファンドCEO、ソウカイ・シンジケートの主たる闇の帝王だ。そして、政界進出の一歩となるこの壮行会で幻のウイスキーを振る舞ったとあれば、ホストたる候補者のネオサイタマ上流社交界における名声は実際ウナギ・ライジングだと言えよう!

 とは言え、オールドコロッサスによってアマリイチ酒造の襲撃が阻まれたにも関わらず、何故ラオモトがこの幻のウイスキーを手にしているのか。この理由を知るためには、しばし時計を巻き戻さねばならぬ。

 アマリイチ酒造襲撃翌日の夜!アセンディングドラゴンカープ・ヤクザクランの宮殿めいた事務所は燃えていた。ソウカイヤとも一定の距離を置きながら裏社会に存在感を保っていた老舗ヤクザクランに何故このような悲劇が襲い掛かったのか?

 その答えの一つはこれだ。アセンディングドラゴンカープ・ヤクザクランがザイバツの甘言に乗せられたことを、ダイダロスの後継者、油断無きウォーロックが神秘のジツを以て暴き出したのだ。
「ホホホ……ブラックゴースト=サン。ザイバツからのIRCログは既に電子部門がGREP済みです。あとはあなた方にお任せしますよ!オタッシャデー!」

「実際感謝する。ウォーロック=サン!まさか、都合よく天照の涙30年の所蔵者がソウカイヤを謀ろうとしたこのクランのオヤブンとは!アブハチトラズだ!キツネビ=サン、デッドローニン=サン、ムーブムーブ!」
今警備用モーターヤブを重金属弾で破壊しながらハンドサインを送るブラックゴーストが口にした事実こそがもう一つの答えである。ヤマ山地でのミッションが不首尾に終わった直後、ブラックゴーストは自主的にこの伝説的オーガニックウイスキーの所蔵者についてソウカイネットに調査を依頼、偶然その網に引っ掛かった人物こそこのAD・ヤクザクランのオヤブンであったのだ!

「「ハイヨロコンデー!」」
号令を受けキツネビ・デッドローニンの二忍が色付きの風となって駆ける!

「燃・え・ろ!イヤーッ!」
キツネビが連続側転から神秘的ニンジャサインを結び集中した次の瞬間!
KRA-TOOM!!
ライトウイングのエントランス前に配備されたクローンヤクザ部隊1ダースが爆炎に飲まれ消滅!

「実際派手だなキツネビ=サン。俺は確実に行く。イアイ!イアイド!」
カスミで駆けるデッドローニンの刃が閃き
「「「アバーッ!」」」「「「ピガーッ!」」」
レフトウイングのエントランス前に陣取るモーターヤブ三機と護衛クローンヤクザ六体が寸断殺!

 キツネビたちが警備部隊を排除し終える頃、アセンディングドラゴンカープ・ヤクザクランオヤブン私室では既にツキジめいた惨状が繰り広げられていた。
「アバーッ!」
オヤブン、ドノメキのサイバネ右腕破砕!豪華なペルシャ織カーペットに血とオイルが飛び散る!破壊者は……ブラックゴースト!

「ドノメキ=サン。実際不用心だ。私一人ここまで侵入するのに2分と掛かっておらんぞ」
ゴウランガ!なんたるトクシュブタイの電撃的浸透能力か!

「天照の涙30年の在処を教えろ。そうすれば楽に殺してやる」
無慈悲にドノメキを蹴り転がし、ブラックゴーストがインタビューする。

「ア、アバッ……。ドカマテッパダラー!こっちにはなぁ!ザイバツの最精鋭ニンジャのセンセイ達がいんだッコラー!」
ドノメキは未だその覇気を失わぬ。ワームめいて転がり、左腕でソファの下のスイッチを押す。その時!

「「イヤーッ!!」」
私室の左右の壁を破り現れるエントリー者二忍あり!

「そのニンジャのセンセイってのは」
「このサンシタのことだったか?」
ナムサン!エントリーしたのはキツネビとデッドローニンではないか!そしてそれぞれがオヤブンの顔の前に転がしたのは……ニンジャの生首!

「アイエエエエエエ……ホワイトタイパン=サン!レッドラトルスネイク=サン!ナンデ……」
ドノメキは絶望した。……その後の彼の運命について書く必要はあるまい。「天照の涙30年」が既にラオモトの手に落ちたことを読者の皆さんは知るのだから。

 話を現在に戻そう。トコロザワ・ピラー大宴会場、「ムッハハハハハ!いつもお世話になっております!」上機嫌に振る舞うラオモトが、ちらりと携帯IRC端末に目を落とし、一層楽し気に笑った。メッセージに曰く、「ネオサイタマ華族大学がカタにハマり、将来的買収可能性重点」……ナムアミダブツ!シーチ先生の職場、華麗なる上流階級の学び舎にまでソウカイヤの手が伸びるというのか!?

 マルノウチ・スゴイタカイビル屋上に佇むニンジャスレイヤーも、ニチョームの仮宿でリモート講義の準備とマキモノの解読を楽しむシーチ先生も、未だこの恐るべき陰謀を知らぬ。

 夜空では、重金属汚染雲の合間から顔をのぞかせるドクロめいた月が、「インガオホー」と呟くようだった。

余暇リザルト

◆オールドコロッサス/シーチ先生 (種別:ニンジャ)
カラテ    1  体力   11
ニューロン  3  精神力  8
ワザマエ   10  脚力   7/-
ジツ     5  万札  14

攻撃/射撃/機先/電脳  2/10/3/3
回避/精密/側転/発動  6/11/-/8
即応/緊急回避     3/6
◇装備、サイバネ、ジツ、スキル
ヤリ、ニンジャブレーサー
☆巨神化の秘儀LV5、★巨神の武具、★★ゲゲネイス・ジツ
●連射2、●大型1×1、●轢殺攻撃1、●即死耐性、●脆弱性:電磁(体力1)
◉◉タツジン:ヤリ・ドー、◉ヒサツ・ワザ:シャドウレス(ムーン・シャドウ読み替え)
◉◉グレーター級ソウルの力
☆◉イサオシのティターン
記憶:◉交渉:超然、◉知識:古代ニンジャ文明、◉知識:高級嗜好品

こうなった!

DIYニンジャ名鑑

◆忍◆DIY名鑑#21【インペリアルガーデン】◆殺◆
古のティファレト・ニンジャを宿すムシボシ・コンザベーション社の企業ニンジャ。社長秘書として、その実力は最強のソードポイントにも迫ると噂される。

◆忍◆DIY名鑑#22【ホワイトタイパン】◆殺◆
傭兵ニンジャ。コブラ・ニンジャクランのニンジャソウル憑依者。残虐で無慈悲な仕事ぶりをザイバツに見いだされ、繰り返しミッションを受けていた。アセンディングドラゴンカープ・ヤクザクランの仕事が無事に完了した暁には、ザイバツ・アデプトとして登用されると約束されていた。

◆忍◆DIY名鑑#23【レッドラトルスネイク】◆殺◆
傭兵ニンジャ。ヘビ・ニンジャクランのニンジャソウル憑依者。残虐で無慈悲な仕事ぶりをザイバツに見いだされ、繰り返しミッションを受けていた。アセンディングドラゴンカープ・ヤクザクランの仕事が無事に完了した暁には、ザイバツ・アデプトとして登用されると約束されていた。

あとがき

 今回は、刑事コロンボのうちのカミさんめいた間接的な言及と名鑑に挟まる謎ニンジャ集団で留めておこうと思っていたムシボシ・コンサベーションが勢い余って登場してしまいました。後半部でのブラックゴースト小隊の暗躍やヒアスに協力したメリッサもそうですが、PC以外のDIYニンジャが動き出すと、TRPGをしているな、という気分になりますね。

 今後の展望として、ネオサイタマ華族大学に迫るソウカイヤの陰謀とはなんなのか、或いは考古学に長けた探索行のバディとして一体何ミノ教授が登場するのか、そのあたりをぼんやり楽しみにしていただければと思います。

 性能面ではシーチ先生が無事【ジツ】5に達し、ティターンの売りの一つである☆での大型化を達成しました。★巨神の武具で武器の取り回しが向上してよりヒサツ・ワザ(地味に独自名称に読み替えました)を狙いやすくなったり、★★ゲゲネイスで手番ごとの回復を得たりと個性的な立ち回りをしていけそうです。

 つい先日、ティターンのいくつかのジツ・スキルに手を加え、新スキルも仮追加しました。あと1シナリオは最初のリプレイ公開時点でプレイ済みなのですが、そこから先のプレイに関しては今回の追加スキルを使ってみようと思っています。

 そういえば、初めてDIYソロシナリオも公開してみました。よろしければ、お暇の折にでも遊んでみてくださいね。

次のお話



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