【ニンジャスレイヤー二次創作】ハイポセシス・オブ・ミスティック・ニンジャ・アーツ(1):パッション・ニンジャとその滅び

【初めに】

この記事はTwitterで連載中の小説、ニンジャスレイヤーの二次創作作品として作成された。当然ながら、投稿者はその二次創作ガイドラインに従う。また、この記事は投稿者を除く一切の実在の権利主体とは無関係であり、単にディスカバリー・オブ・ミスティック・ニンジャ・アーツを模倣したいちヘッズのニンジャ妄想の発現であるにすぎない。

【注意な】

「ザッケンナ仏敵コラー!」
「グワーッ」ジュリアンは打擲され、冷たい石床の上に打ち倒された。横では既に力尽きた兄弟子フェレイラがその屍を晒している。
「不信心者スッゾコラー!」
「アバーッ」腹を蹴られ、吐瀉物を撒き散らす。「ナンデ」朦朧とする意識の中でジュリアンはおのれの運命を呪った。「迫害ナンデ」
「ドーモ、ジュリアン=サン」フェレイラの屍が口を開いたように見えた。ジュリアンは畏れた。打擲は止まり、頭上には黄金の立方体が回転している。
「いまこの時から、お前の苦しみ(パッション)は私の情熱(パッション)だ。ドーモ、パッション・ニンジャです」

-「パッション・オブ・ザ・ニンジャ」より


パッション・ニンジャとパッション・ジツ

パッション・ニンジャはガリラヤ地方にドージョーを構えたイタミ・ニンジャクランの高弟であり、忌まわしきパッション・ジツの開発者として知られる。  

パッション・ジツは対象の負傷や疲労をそのままに、それらがもたらす苦痛のみを奪い去って自ら引き受け、カラテに変えるジツである。痛覚は言うまでもなく近接カラテにおいて最も重要な感覚であり、それが奪われれば、痛覚遮断のジツなどで無痛状態への慣れを持たないニンジャはそのカラテを容易に鈍らせ、致命的な隙を晒す。また、術者自身は自らのカラテの手ごたえを相手から奪った苦痛を通して知ることができるため、苦境を偽って形成逆転を図る駆け引きなどに惑わされることなく、無慈悲なカラテで相手を追い詰めることができるのだ。
このように、パッション・ジツがもたらすアドバンテージは絶大であり、その鍛え抜かれたカラテも相まってパッション・ニンジャはニンジャ同士の近接カラテにおいて無敵を誇っていた。

しかし、オヒガンの力の研究が進むにつれ、マイニユ・ニンジャクランやヨミ・ニンジャ、ネクロ・ニンジャらシの眷属たちは不死者をミニオンめいて使役するジツを完成させた。ニンジャに比べれば遥かに無力とはいえ、多数使役されることもままあるこれらアンデッドの使い魔は、イタミ・ニンジャクラン、とりわけパッション・ニンジャにとって悩みの種となった。苦痛を感じない相手の苦痛から力を得ることはできない。不死者の群れを相手にしてはカラテを回復することも、肉体を再生させることもできず、ただ消耗戦を強いられてしまうのだ。

ディヴァイン・カラテとの接近

この弱点を補うべく、近東にその隆盛を誇ったソル・ニンジャクランのディヴァイン・カラテに着目したパッション・ニンジャは早速クランの異端児として知られたディヴァイン・カラテの達人、バチスタ・ニンジャに接近した。バチスタはマズダの系譜に連なるものでありながら、彼が禁忌とした肉体変化のジツを研究すべくケモノ・ニンジャクランやイナゴ・ニンジャクランの蘊奥を学んだマッドカラテサイエンティストであった。

パッション・ニンジャはガリラヤ湖面でザゼンしていたバチスタ・ニンジャを見出すや、「師よ、首だけになろうとも生き延び、カラテを再び蓄えて逆襲する我がイタミ・ニンジャクランの秘儀と引き換えにその比類なきディヴァイン・カラテを授けたまえ」と大音声で呼ばわった。かつての自クランに追われる身であったバチスタにとってもこれはWin-Winの取り引きであり、彼はその場でパッションの師事を受け入れ、自らの奥義を授けた。

こうしてディヴァイン・カラテを身につけたパッション・ニンジャは勇躍して近在のネクロ・ニンジャクランの系列ドージョーを襲撃し、群がる不死者を次々にディヴァイン・カラテチョップで灰に返しながら法悦めいた笑いを上げ続けたという。

バチスタ・ニンジャもまた、後に銀のマナ・イタに乗せられた首だけの状態から勝ち戦に奢り宴を繰り広げる敵軍にアンブッシュをかけ、かえってそのことごとくを滅ぼしたと伝えられる。

パッション・ニンジャクランの形成

バチスタ・ニンジャの秘儀を受けたあともパッション・ニンジャは貪欲にそのカラテを高め、カラテに迷う他のニンジャとイクサし、これを打ち倒してはインストラクションを授ける行為を繰り返した。打ち倒されたニンジャの多くはその真摯な求道に心打たれ信奉者となっていった。それらの中には、その極度の熟練によって非致命部位への精密な斬撃に特化したイタミ・イアイドのペドロ・ニンジャ、相手の皮膚を鎧越しに一瞬で引きはがすフライング・カラテのバルタ・ニンジャ、ゼウス・ニンジャクランの分派、ディオスクロイ・ニンジャクランのカイデン者など強大なニンジャも含まれていた。

こうして形成されたパッション・ニンジャクランは、修行として死病モータルや重傷ニンジャの苦痛を取り除く、パッション・ジツを用いたニンジャホスピス行為を行った。これによりモータルの中にはこの邪悪なジツを神の奇蹟とみなすものも現れはじめ、クラン自体も慈悲深く禁欲的なヒーラー集団として、その実情とかけ離れた声望を高めていった。

しかし、新興ニンジャクランの興隆はニンジャ支配者の警戒を招くに十分であり、とりわけ異端者バチスタ・ニンジャのミーミーを受け継ぐことから、当時ローマ帝国にその勢力を伸ばしていたソル・ニンジャクランの高弟ミトラス・ニンジャとその一派は帝国に働きかけて苛烈な迫害を開始した。

パッション・ニンジャクランの黄昏

精強なるパッション・ニンジャとその使徒たちは迫害に敢然と立ち向かい、一時はエルサレム大神殿にミトラス・ニンジャその人を追い詰めることにまで成功した。しかしながらミトラスは計算高く、パッション・ジツもディヴァイン・カラテも通用しない護衛、即ちカゲムシャと呼ばれる鋼鉄の巨兵とそれを操る同盟者ニンジャを神殿に潜ませていたのだ。


本来一切の神像のありうべからざる大神殿からあふれ出した巨兵軍団は、使徒たちを狼狽させるに十分なものだった。ひとりパッション・ニンジャのみが怒り狂い、純粋なカラテでもってカゲムシャの多くを物理的に機能停止させていったが、鋼鉄巨兵の後ろから放たれたミトラスのヒサツ・ワザは彼を無慈悲に打ち倒し、パッションと使徒たちは敗走を余儀なくされた。

ところで、自他の苦痛を自らのカラテに変えるイタミ・ジツ、及びそのヴァリアントであるパッション・ジツは敗勢に強いことで知られるが、幸いその強みはここでも発揮された。追手を退けるごとにパッション・ニンジャと使徒たちにカラテがみなぎり、その傷が癒されていくのだ。少数とはいえモータル支持者たちの協力もあり、ゲリラめいた長期戦の構えを取ってクランは粘り強く戦い続けた。

パッション・ニンジャの最期

しかし、この泥沼めいた抗戦は長続きすることも、報われることもなかった。パッション・ニンジャの高弟のひとり、後世にはただ黄衣のウシカイとのみ伝わるニンジャが彼を裏切ったのだ。この裏切りには謎が多く、単なるゲコクジョの一形態であったとも、ミトラス・ニンジャよりさらに強大ななんらかのニンジャ存在の超自然的なジツがウシカイを狂わせたとも言われる。伝承が一致するのは、ウシカイが師を裏切って敵に引き渡した後正気を失い、制御不能なカゼのジツを振りまきながらこの世を彷徨うものになったという点だけである。

強大なニンジャ存在にはよく見られることだが、パッション・ニンジャを捕らえたミトラス・ニンジャとローマ帝国が頭を悩ませたのはいかにしてこれを滅ぼすかということだった。極めて高位のイタミ・ニンジャに対しては拷問などマッサージめいたリラクゼーション行為にすぎず、ましてや処刑は一種のレジャーにしかならないのだ。

結果として、パッション・ニンジャの処刑は凄惨を極めた。ミトラス・ニンジャがコソク・ニンジャクランのアーチニンジャ複数を呼び寄せ、その脳をコソク・ジツを込めた輪で締め上げてイタミ・ジツを無効化した上で、クランの秘奥の一つであったクルシフィクション・ジツで磔にして無力化したのだ。しかし、そこまでの手を尽くしてもパッションの常軌を逸したニンジャ耐久力に打ち勝つことはできず、ついにはヤマト・ニンジャその人のヤリが脇腹を貫くまでパッションが滅びることはなかった。

パッション・ニンジャのデスハイクは既に失われたが、極めて謎めいたものとして処刑の場に立ち会った全てのニンジャとモータルに深い畏れを刻んだと言われている。中でも、全ニンジャの父祖の名と、爆発四散後の復活をほのめかす内容を聞いたミトラス・ニンジャは発狂し、その狂気は後に彼の滅びの一因となった。

失伝と混同

以上に述べたようなパッション・ニンジャの事績は近年見つかった複数の史料からAIディープラーニングを通して再構成されたものである。史料発見以前、パッション・ニンジャは同年代に同じ地域で活躍したモータルの宗教家、ジーザスと混同されることが一般的であった。しかしながら、ジーザスの起こしたと伝えられる奇蹟、死者の復活や葡萄酒の生成などは明らかにパッション・ジツ及びその近縁のジツによって再現できる範囲を超えており、この混同が荒唐無稽なものであることは議論を待たない。

とはいえ、伝承に語られるバチスタ・ニンジャと洗礼者ヨハネ、ペドロ・ニンジャと聖ペテロなど同一人物説が支配的である存在も多く、その場合ジーザスとパッション・ニンジャの間にも何らかの関係性が見出されて然るべきであろう。このように、西洋宗教史におけるニンジャの存在とその重要性についての研究は未だ判然としない部分が多く、発展の途上にあると言わざるを得ない。

【最後に】

最後まで読んでいただきありがとうございます。ご感想は私のカラテになります。

【感謝な】

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