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ニンジャスレイヤーTRPGソロリプレイ余暇&インターミッション【ナイト・ビフォア・ハニー・ムーン】


はじめに

この記事は、ニンジャスレイヤーTRPGの自作プラグイン、「ティターン・ニンジャクラン」のテストプレイを目的としたソロキャンペイグン(キャンペーンのこと)の余暇リプレイ、並びにインターミッションです。
前のお話


1

前回リザルトから合計で【万札】38を持っているので、成長処理を行っていく。
1・2スロットは【ワザマエ】を伸ばし【ワザマエ】10、残り21
3スロット目で【ジツ】を伸ばし【ジツ】3、残り15
4スロット目は◉ヒサツ・ワザ:ムーン・シャドウを習得し【万札】10を繰り越す。

深夜、イリノイ・テンプル。久しい荒廃ののち最近また整備されたと思しいドージョーでは、白髯の巨神ニンジャ、オールドコロッサスがザゼンしている。心乱すことがあまりにも多かった。オールドコロッサスは想う。

あの薄墨めいた凶悪ニンジャは、ニンジャスレイヤー=サンの介入なくばオールドコロッサスの首をキックで刎ね飛ばしていたことだろう。シーチ先生が情けをかけ、オールドコロッサスはカイシャクを誤った、では、古のヒアス・ニンジャであったならば。

反面、怒りに身を任せたハニーマウスとのイクサ、ヒアス・ニンジャとして語らんとする衝動をオールドコロッサスは抑えなかった。しかし、本当にヒアス・ニンジャのヤリを私は振るえていたのか?あのハニーマウスが、もう少し手練れのニンジャであったならば、あの力任せの斬撃の隙を衝かれ、ケバブめいてキックに貫かれてはいなかったか。

シーチ先生は考え続ける。自分は、巨体とそのもたらしたヤリのワザマエを受け入れられたと思っていた。ニンジャソウルによって変質したニューロンとも、うまく付き合え始めたと思っていた。本当にそうか?シーチ先生は自問する。

憑依から間もなく、先生は自分の知らない筈のことを知っていることに対し畏れ、惑った。しかし逆に、自分ができない筈のカラテができることを、なぜあっさりと受け止めていたのか。なぜ、憑依直後自室でのヤリ演武に対して感じたものをすぐに忘れたのか。ビークド・ヤリナギナタ、かつて美術品として購入した自身の得物を見る。

シーチ先生はヒアス・ニンジャであるが、ヒアス・ニンジャはシーチ先生にないカラテを持ち、シーチ先生の知らぬ恐るべき古代ニンジャ知識を持つ。一方、ヒアス・ニンジャは二十一世紀まで紡がれ続けてきた文献学の伝統を知るまい。この場合、本当にヒアス・ニンジャはシーチ先生であると言えるのか。あるいは、シーチ先生はヒアス・ニンジャであると言えるのか。

ヒアス・ニンジャがシーチ先生ではないなら、オールドコロッサスとは誰なのか。不快なる自同律の破れを正視して煩悶する老ニンジャを、ドクロめいた月が窓越し、嘲笑うように見下ろしている。シーチ先生は、月に白むヤリの刃越しに、その嘲笑を受け止める。

「ヒアデス」、「プレアデス」、「ヘスぺリデス」ドージョー三方の壁に掛けられたショドーを微かに夜風が揺らす。オールドコロッサスは既にシルバーハニー・サケ・オブ・ダイギンジョの探索者であると名乗り出てしまった。この雲をつかむようなニンジャクエストを、いまのあやふやな自我が果たして成しえるだろうか。

シーチ先生はやおら立ち上がり、ビークド・ヤリナギナタを構えた。切先を低く、柄を高く構え、腰を落とす。少なくともニンジャとして、オールドコロッサスという自己たるためには、カラテを、ヤリのワザマエを、より深く己のものにせねばならない。目を瞑り、これまでのイクサの相手を想起する。イマジナリー・カラテ。

ブラッドスライサー、速度と剛さを使い分けるショート・ナギナタのメイジンであった。だが足りない。ブラッドカタナ、妄執をカラテ・エンハンスメントにまで高めた無慈悲な獣。オールドコロッサスの命に手をかける寸前であった荒廃せしヤクザ。足りない。ハニーマウス、油断ならぬケリ・キックを持っていた。しかしこれもイマジナリー・カラテの相手とするに及ばない。

やがて、シーチ先生の目の前、タタミ二枚分の距離にアブストラクトな赤黒の影が現れる。一瞬の邂逅のうちにも感じられた、壮絶なるカラテ。内なるヒアス・ニンジャソウルがなんらかの情動に震えたまでのその強大なニンジャソウル。恐らく、否確実に、今のオールドコロッサスでは遠く及ばぬ。しかし、前に進むならば、これに勝るイマジナリ・センセイは居るまい。

輪郭を滲ませる赤黒のニンジャがジュー・ジツを構える。「イヤーッ!」オールドコロッサスは、ヤリを……ニンジャスレイヤーは迫るヤリの柄の側面を打って身を翻す。そのまま滑り込むようにウインドミル水面蹴り!「グワーッ!」オールドコロッサスは実際にカラテを交わしたかのように痛みを感じ、よろめいた。

ニンジャスレイヤーは待たぬ!起き上がりつつ、手をジゴクめいた鉤爪の形に変え、「アバーッ!」オールドコロッサスの心臓を摘出し、握りつぶす!サツバツ!なんたるベイビー・サブミッションか!

「ハァーッ!ハァーッ!」オールドコロッサスはヤリを構えなおす。再び眼前には滲む赤黒の影。「イヤーッ!」オールドコロッサスは横薙ぎ斬撃!イマジナリ殺戮者は跳躍!これならば!「イヤーッ!」ヤリを跳ね上げ……「グワーッ!」あのブラッドカタナの薄墨チョップよりも重い衝撃を左肩に感じる。ツヨイ・スリケン。

ニンジャスレイヤーは待たぬ!ワン・インチ距離に着地し、「グワーッ!」巨体に衝撃を通すダーカイ掌打!オールドコロッサスはバックステップで距離を……「グワーッ!」ハヤイ!追って暗黒カラテ奥義、ポン・パンチ!実際に打たれたかのように吹き飛ぶオールドコロッサスの視界に、無慈悲なるイマジナリチョップ突き!「アバーッ!」眼球摘出!サツバツ!

「ハァーッ!ハァーッ!」オールドコロッサスはヤリを構えなおす。三度眼前に赤黒の像を結ぶ。今度はヤリを高く構え、振り下ろしから入る。「イヤーッ!」ウカツ!同じミスだ!ニンジャスレイヤーが側面に回り込み、今度は力強く踏みしめて体全体でぶつかる!巨神ニンジャの質量をものともせぬ暗黒カラテ奥義、ボディチェック!「グワーッ!」

ニンジャスレイヤーは待たぬ!体勢を崩し、下がったオールドコロッサスの鎖骨をチョップが穿つ!「グワーッ!」オールドコロッサスはヤリの柄で払いのけようと試み……「アバーッ!」その前にニンジャスレイヤーがその眉間を撃ち抜き、頭蓋を粉砕していた。

「ハァーッ!ハァーッ!」先ほどまでの三合の切り結び。オールドコロッサスはその場に構え、ヤリを振るった。しかしあの夜、ヒアス・ニンジャはゼウス・ニンジャに対しアンブッシュを仕掛けてはいなかったか。ヒアスのヤリは自ら動くところのものではないか。ニューロンが活性化し、目の前の影の輪郭が定まる。

次の瞬間!「「イヤーッ!」」イマジナリ・ニンジャスレイヤーは回転跳躍から凄まじいチョップ斬撃、オールドコロッサスは鋭く踏み込みつつ斬り払う!月光に白むビークド・ヤリナギナタの刃が閃く!「「グワーッ!」」

それはかつてヒアス・ニンジャのヒサツ・ワザとした無名のヤリ・ドー奥義の一端。失伝して久しいそれに最も近いものを現代武術に見出すとすれば、疾く鋭きイアイ・アーツ、影をも残さぬムーン・シャドウ。

オールドコロッサスは向きなおる。タタミ二枚分の距離、赤黒のアブストラクト影の胴部には浅い斬撃の傷。初めて一度の切り結びに堪えた。一撃を与えることができた!しかし!オールドコロッサスは今の交錯で自身の右腕がケジメされていたであろうことを知る。

まだだ。まだこれでは終わらない。オールドコロッサスは踏みしめた地面からのカラテの流入を感じた。例え腕や足がケジメされても、このカラテ粒子操作をマスターすればイクサのさなかにも傷を癒し、戦い続けることができる筈。いまだ遠いジツの、蜃気楼めいて揺らめく微かなシルエット。

「ハァーッ!ハァーッ!」オールドコロッサスは、シーチ先生は、今やヒアスのカラテを知りそめ、それを好もうとしていた。再びニューロンが赤黒の影を眼前に作り出す。「イヤーッ!」「イヤーッ!」踏み込み、交錯する。「グワーッ!」「アバーッ!」眼球ケジメ!心臓摘出!右腕ケジメ!左腕ケジメ!だがオールドコロッサスは何度でも構える!

……東の重金属汚染雲が橙色の輪郭を見せるころ、意識を失って倒れていたシーチ先生を起こしたのは、IRCの着信だった。差出人はYCNAN。彼のニンジャ第六感は、探索行の兆しを告げた。ビークド・ヤリナギナタを杖めいて使い、身を起こす。彼は疲労困憊の筈の歩みにも、確かに大地からのカラテを感じ始めていた。

2

同日午後、カスミガセキ・ジグラッド、アサノサン・サカイエサン間訴訟調停委員会!アサノサン側代表は第三部長アサノ・ミツイ、サカイエサン側は危機管理室長サカイエ・サナダ。いずれも創業一族のホープ、誰憚らぬカチグミである。しかし開会の数分前たる今、方形に組まれた高級バイオエボニー会議室机の左右に陣取る彼らは震える手で資料マキモノを何度も確認していた。

その間を時折チャを汲むオイランドロイドが通り、委員席中央に座るヨロシサンの調停委員は昆虫めいたバイオサイバネアイを時折ぐるぐると動かしながら無言。その両脇には、アサノサン側にオナタカミ社顧問サイデン・マルティネス委員、サカイエサン側にはネコソギ・ファンド社相談役ツヅラ・マサタカ委員。彼ら二人こそは哀れなミツイ=サン、サナダ=サンの顔面を蒼白たらしめる重圧の源だった。

ここで、ニンジャスレイヤー読者の方々は大いに驚かれただろう!そもそも爆発事故はソウカイ・シンジケートがその意に添わぬサカイエサン・トーフ社に対して煽動したる暴動に起因するものであったはず。であるのになぜ、ラオモト・カンの腹心たるツヅラ・マサタカ、否ゲイトキーパーがサカイエサン側に立っているのか?その答えは一つ。サカイエサン・トーフ社は今やネコソギ・ファンドの影響下にあるからだ!

当初、工場の破壊はニンジャスレイヤーの活躍もあり想定より小規模で終わったが、ラオモトは逆にそれを奇貨とした。情報が市場に流れる前にサカイエサン・トーフ社に接近し資本注入、さらに事故原因をアサノサン製ジェネレータに求めて株価下落を最小限に抑える策を授けたのだ。

見返りには勿論ニルヴァーナ・トーフ社との提携、さらにファンドからの役員出向。事故直後の混乱に乗じて過剰に悲観的な株価予測を突き付けられたサカイエサン経営陣はこれを受諾せざるを得ず、ラオモトはシックスゲイツ二忍を失いながらも、かえって当初の目論見より多くのリターンを得ることに成功したのだ!

なんたるネオサイタマの帝王を以て任じる豪腕経済ヤクザのビジネスセンスか!さらに、アサノサンへの攻撃は、近年オナタカミを中心に蠢くなんらかの陰謀への牽制としてアブハチトラズの狙いでもあった。ラオモトのニンジャ第六感は、いまだその名さえ知る者なきアマクダリ・セクトの動きをアブストラクトにだが感じ取っていたのだ!

では、アマクダリ側はどうか。ここにサイデン・マルティネス……読者の方々がスターゲイザーとして知る者を派遣していることが全ての答えだ。公的なる場において、表の立場でネコソギ・ファンドに対抗する。これはこれまで徹底的に不可視の存在たらんとしていたセクトが打ち出した最初の陽謀に他ならない。

……会議室では、今や双方の代表が顔面蒼白で意見陳述を終え、悪夢めいた質疑応答が既に数十分続いていた。本来の当事者たるミツイ=サンとサナダ=サンは失禁を必死に堪えつつ、心細い山小屋で大雪崩に耐える遭難者じみて互いを励ましあわんばかりの視線を交わしている。

「……つまり、重工業に名高きオナタカミ社としてもあくまでジェネレータ不具合を否定されると」ゲイトキーパーがうっそりと圧をかけた。下手に口出しすればオナタカミのプロダクトの信頼性までもを問うてやるという脅しだ。NSTVにも影響力を持ち、風評の操作に長けるソウカイヤにとっては容易い。

「少なくとも、信頼できるエンジニアを含めた都主導の事故調査委員会が必要と言ったまで」信頼できる、にアクセントを置くのはスターゲイザー。ここ数年のオナタカミの技術水準向上は著しく、加えてネオサイタマ都政府へのソウカイヤの影響力は極めて限定的だ。事故調査委がさらに組織されるなら、高確率でオナタカミ主導となるだろう。ゲイトキーパーはカタナめいて目を細め、その虚無的なまなざしと切り結ぶ。

「アイエッ……」強大なニンジャ二忍のエゴの衝突によって極度に重く張り詰めた会議室のアトモスフィアに最初に耐えかねたのは、議事進行補助の都職員だった。その場の全員の目線が集まり、しばらくして、彼は今後の昇進と引き換えにこのジゴクめいた会を一旦流会として残りのモータルをカロウシから救った。

余暇リザルト

◆オールドコロッサス/シーチ先生 (種別:ニンジャ)
カラテ    1  体力   7
ニューロン  3  精神力  3
ワザマエ   10  脚力   6/UH
ジツ     3(壁越え)  万札  10

攻撃/射撃/機先/電脳  2/10/3/3
回避/精密/側転/発動  8/11/9/6
即応/緊急回避     3/4
◇装備、サイバネ、ジツ、スキル
ヤリ、ニンジャブレーサー
☆巨神化の秘儀LV2
●連射2、◉◉タツジン:ヤリ・ドー、◉ヒサツ・ワザ:ムーン・シャドウ、☆◉イサオシのティターン
◉交渉:超然、◉知識:古代ニンジャ文明、◉知識:高級嗜好品

こうなった!

あとがき

今回は余暇の成長処理に加えて、このバースのネオサイタマ情勢の動きにも触れてみました。成長処理に関して、壁越えニンジャのパラメータがトントンと連続で上がるトレーニングはどんなのだろう、あるいはヒサツ・ワザの習得はどうやっているのだろうと頭を捻った結果、ひたすらイマジナリーフジキドに何度もスレイされるシーチ先生ができてしまいました。今後はもうちょっとユウジョウしたり余暇シーンの登場人物が増える見込みです。
当初のジツ3をスキップするプランは、先にヒサツ・ワザの火力を確保しておきたいという意図から廃されました。

調停委員会のシーンはスターゲイザーと睨みあうゲイトキーパーってAoSらしくていいかも、というのが発想のきっかけでした。しかし、原作のキャラクターを動かしていると、今回の二人のみならず初回のザクロも前回のナンシーも、初めて二次創作を書く中の、こいつはこういうこと言うだろうか……に無限に楽しく悩まされますね。

さて、次回は探索行ということもあり、舞台がネオサイタマから離れ、敵のニンジャも合計値換算21、かつタツジン持ちで側転込みの回避ダイスもフルで回してくる相当に手ごわい相手でした。リプレイ化をお待ちくださいませ。

次のお話


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