見出し画像

ニンジャスレイヤーTRPGソロリプレイ【ブラッドカタナ・アンド・ハニーランス】(1)


はじめに

この記事は、ニンジャスレイヤーTRPGの自作プラグイン、「ティターン・ニンジャクラン」のテストプレイを目的としたソロキャンペイグン(キャンペーンのこと)のリプレイです。
前話(余暇)はこちら

今回は、古矢沢さん制作の、『ニンジャスレイヤーTRPG:ランダム生成シナリオ案『スカウト部門の日常』第2版対応改定版』を元に敵ニンジャと報酬を設定しました。さまざまなキャンペイグンやストーリーテリングに対応した、本当に素晴らしいシナリオです。ランダムでいくらでもニンジャを生成できるのはほとんどヌンジャの御業。

1

血溜まりの中、ヤクザの死体が動いた。すすり泣くように、或いは呻くように、呪詛めいた言葉を呟きながら、数瞬前まで死体であったヤクザはゆっくりと立ち上がった。

所々焦げた黒のヤクザスーツは右肩から下がなく、たった今生え変わったかのような傷一つない右腕を割れた窓の強化ガラスから吹き込む夜気に晒している。ヤクザは、応接室床の爆発四散痕を見る。

口ほどにもない傭兵だった。廊下には、部下達の亡骸から流れた血が、床を赤カーペットめいて染めている。彼は、夫との思い出のアルバムを一ページずつ捲る老未亡人めいて、事務所のドアを一枚一枚愛おしそうに開けていく。

電算室、ハッカーとモヒカンヤクザの死体。マージョンをよく打った。ドージョー、スモトリが二人。バンジョーが得意だった。仮眠室。恐らくは寝たまま殺されたクルーカットヤクザ。前日に帳簿付けを任せなければ、こんな死に方はしなかっただろうか。

そして、宝物庫。粉々に砕かれ、中身を奪われたガラスケースに縋るように、ヤクザの焼死体が3つ。それは絶対の欠落の印。ニューロンが軋み、憎悪が全身にカラテを漲らせる。

彼は墨めいたオーラを宿した手で、渾身のチョップを壁に叩きつける。トーフめいて壁が砕け、髑髏めいた月は新たなニンジャの誕生を知った。

……青髪を逆立たせたストリートギャング、メチタは不運であった。様子のおかしい野良ヤクザにカツアゲを仕掛けようとした彼は、薄墨めいて黒く滲むチョップに執拗に切り刻まれ、死んだ。

テクノサムライ・スタイルのサイバネ傭兵、ノガイは不運であった。ボロボロのスーツの男をサイバーツジギリの対象に選んだ彼は、四肢を一本ずつカラテで切断され、奪われた自身の得物で殺された。

青髪メッシュのサイバーゴス、ロクザキは不運であった……。サイバネバウンサー、ジョンヤマは不運であった……。ペケロッパ・カルト、アモヨは不運であった……。サラリパンクス、デミタは不運であった……。ヒョットコ、サンモリは、スモトリレスラー、マルノウミは、フリーランスヤクザ、ベツザは、ソウカイ・ニュービー、グリーンダガーは……。

……違う。足元の傭兵から奪ったネオンカタナを見たニンジャは、肩を落としてそれを捨て、薄墨色の風となって重金属酸性雨の雨滴の間を縫った。この速さが、このカラテが、あの時にあれば。

「ザッケンナコラー!ネタガッテンコラー!」ソウカイヤから来た青髪のギャングニンジャが凄むと、キヨシは身が竦む思いがした。「テメーラ、メン・タイよそから買いやがったのは分かってんだよ!ソウカイヤにジョートーする気かッコラー!」青髪ニンジャの手に超自然の火が揺らめき、見せつけるようにグラスを炭化させた。

「スンマセン……実際義理ナンス……スンマセン」キヨシは平身低頭する。「じ、実際ウチの若い衆も沢山死にました。今回はこれでどうかテウチに……私もケジメします」ソウカイニンジャ達はデイリ同然で乗り込んできた。恐らくこの応接室以外に生きているヤクザはいるまい。

「ソマシャッテコラー!それがナメてるつってんだコラー!」青髪ニンジャ……キツネビはドゲザするキヨシを蹴り飛ばした。「ア、アバッ……」キヨシは床に打ち倒されながら、なんとかドゲザの姿勢を作ろうと身じろぎし、失敗した。

「キツネビ=サン。ちょっとやめないか」落ち着いた声でキツネビの隣、重サイバネのデッドローニンが制した。デッドローニンは屈みこみ、キヨシに目線を合わせてゆっくりと口を開く。「キヨシ=サン。お前も板挟みで大変だったろう。キツネビ=サンは最近オニイサン方に詰められがちでな。許してやってくれ」

キツネビの不満そうな舌打ちを無視し、デッドローニンは続ける。「だがな、俺たちも手ぶらでは帰れないんだ。ワカル?ここはキヨシ=サン、一つ男みせてくれや」実際優しい口調であったが、同じヤクザであるキヨシには、これが計算から出たものではないことも、それでもなお一種のグッドコップ・バッドコップ・ルーティーンであることも分かっていた。

それはヤクザという種族に共通するミーミーに基づいた行動であり、ソンケイと呼ばれる独自の概念の源泉の一つでもあるものだ。今デッドローニンはキヨシを私利のために搾取しようとしているが、同時に義侠心から手を差し伸べている。例えば強請ると同時に庇い、または陥れると同時に救う。これはヤクザの中では全く矛盾する心理でも行動でもない。

そして、キヨシもまたヤクザであった。デッドローニンに応じるふりをし、立ち上がって、袖口の秘密端末から緊急IRCを送った。「イヤーッ!」一瞬後、隠し扉から側転して現れたヘビめいた不吉黒装束のニンジャが、キヨシを庇うようにソウカイニンジャの前に立っていた。

……大蛇の口めいて黒々と闇を湛えた地下道の入り口に立ち、かつてキヨシであったニンジャは憎悪に満ちた過去の追想を中断した。今やこの身に宿ったニンジャソウルが、大蛇の全身像までもを伝えてくる。即ち、ネオサイタマに広がる広大な旧世紀地下道網こそ自身のフーリンカザンなのだと、ニンジャは理解していた。

この力であの怨敵を八つ裂きにし、度々クランに屈辱を強いたソウカイヤにも、媚びる犬めいてオレの靴を舐めさせてやる。まずは地下道を利用して手当たり次第に殺す。そうすればソウカイヤのニンジャが出張るからそいつをインタビューして殺す。そしてそいつの情報から次を殺す。キツネビとデッドローニンを殺す。クランの宝を取り戻す。狂気と怒りに呼応し、右腕に纏わりつく瘴気はその濃さを増す。ニンジャは熱病めいた激情と共に大蛇の口に身を投げた。

2

ニチョーム北端にある噴水広場は、奥ゆかしい紅白レンガ敷きの舗装とシンプルで清潔感ある薄緑の噴水で愛されている。この日も夜食休憩エスイーが、同伴出勤のゲイマイコと客が、抗争に疲れたテクノギャングが、それぞれ日常を半歩離れた癒しの時間を味わっていた。街頭ビジョンからはのどかにトーフ工場の爆発事故のニュース。

だから、ごとり。普段ほぼ使われない地下道へのマンホールが動く音を、誰も気にしなかった。緩慢なまでの動きで地下道から襤褸切れ同然のヤクザスーツが這い出した。それは無造作にテクノギャングに近づき、首の骨を折って殺した。

それを見た夜食エスイーが悲鳴をあげた。それは無造作にエスイーに近づき、手刀で首を刎ねて殺した。

それを見たゲイマイコが青ざめた。それは無造作にゲイマイコに近づき……彼に触れる前に三連続バク転してカラテ警戒した。一瞬後、ヤリを持った大質量がゲイマイコの前に舗装を砕きつつ着地し、土煙の向こうからアイサツした。

「ここは騒動を起こしてはならぬことになっている。ドーモ、オールドコロッサスです」9フィートの白髯ニンジャがそれを睨みつけた。それは一瞬、ニンジャとしての名を持たなかったかのように固まり、ゆっくりと憎悪に満ちたアイサツを返した。

◆オールドコロッサス/シーチ先生 (種別:ニンジャ)
カラテ    1  体力   5
ニューロン  3  精神力  3
ワザマエ   8  脚力   5/UH
ジツ     2(壁越え)  万札   2

攻撃/射撃/機先/電脳  2/8/3/3
回避/精密/側転/発動  7/9/7/5
即応/緊急回避     3/3
◇装備、サイバネ、ジツ、スキル
ヤリ、ニンジャブレーサー
☆巨神化の秘儀LV2
●連射2、◉◉タツジン:ヤリ・ドー、☆◉イサオシのティターン
◉交渉:超然、◉知識:古代ニンジャ文明、◉知識:高級嗜好品


 ◆ブラッドカタナ(種別:ニンジャ)
  カラテ     4  体力    8
  ニューロン   4  精神力   5
  ワザマエ    6  脚力    3/N
  ジツ      1  万札    0

  スキル:『◉ニンジャソウルの闇×3』『☆◉ダークカラテ・エンハンスメント』『◉知識:旧世紀地下道網』

  装 備:

  ジ ツ:『☆謎めいたニンジャソウルLv1』

  サイバネギア:

  近接/射撃/機先/電脳 7/9/4/4
  回避/精密/側転/発動 6/6/6/7"
イニシアチブ値4>3、ブラッドカタナ先制
BK攻撃n(5114622)>OC回避(444654)カウンター(一騎打ちを読んでおらずダイスを間違ってつぎ込んだ)
BKカウンター回避n(3)失敗。BK体力8>7
OC強化精密攻撃n(1313)(56241)一回目失敗>BK回避n(5)
BK攻撃n(1322252)>OC回避n(321)緊急回避ダイス2使用、失敗。OC体力5>3
OC強化精密攻撃n(3215)(65162)>BK回避e(6)(662)アドレナリンブースト
1T終了。OC-BK,3-7

「ドーモ、オールドコロッサス=サン。ブラッドカタナです」須臾の後、墨めいた殺意のエンハンスを纏った右チョップ突きがオールドコロッサスの腹部を狙う。オールドコロッサスはニンジャ第六感で危険を察知、逆に踏み込んで左裏拳でチョップを逸らし、右脇に抱えたヤリの柄でブラッドカタナを殴り飛ばす。

舗装レンガを削りながらよろめき下がるブラッドカタナにヘビめいた刺突連撃が襲い掛かる。ブラッドカタナはフェイントを見極め、ダッキングめいて身を沈め接近、ヤリの伸びきった瞬間を捉えて左腕で払いつつ跳躍し薄墨のチョップを繰り出す。

視界からブラッドカタナを見失い、オールドコロッサスの反応が遅れる。「グワーッ!」巨神の鎖骨を抉る殺意のエンハンス。オールドコロッサスの左肩が爆ぜた。

直後ブラッドカタナは殺気の起こりを察し、流血するオールドコロッサスを蹴って連続フリップジャンプで離脱。致命的ヤリ反撃が一瞬前までブラッドカタナが占めていた空間を切り刻む。

BK攻撃n(2152323)>OC回避(436)カウンター
BKカウンター回避n(5)
OC強化精密攻撃n(3615)(25435)>BK回避n(3)(6)二回目失敗BK7>6
BK攻撃n(312661)>OC回避e(224)アドレナリンブースト
OC強化精密攻撃n(1443)(64635)>BK回避n(1)h(1)両失敗
`/nd サツバツ!`
サツバツ:
`1d6` = (4)
合計値:4

**脚部破壊**:『痛打+1』、カラテダメージ1、脚力ダメージ2

**「どこへ逃げても無駄だ!」敵の脚を無慈悲に粉砕!**
『痛打+1』。
敵の【体力】を減らした場合、付属効果として『カラテダメージ1』と『脚力ダメージ2』と『●部位損傷:脚部』を与える。
BK体力6>3
2T目終了OC-BK,3-3

「殺す」目に退廃した殺意をぎらつかせ、ブラッドカタナが再び迫る。牽制のヤリ刺突は左肩で受け、刺突の勢いで回転、モーメントを乗せて薄墨のヤクザロシアンフック。

届く前にオールドコロッサスはヤリの軌道を変え薙ぎ払う。「イヤーッ!」ブラッドカタナはブリッジ回避。「イヤーッ!」「グワーッ!」見てからヤリが打ち据える。

「一方的に敵意を向けるられるのはうんざりするのだがね」眉を顰めるオールドコロッサスが、掬い上げるような薄墨チョップをヤリの柄で押さえつける。そして、「イイイヤアアアーッ!」そのまま踏み込み、ヤリごとブラッドカタナを担いで投げ飛ばす!

空中のブラッドカタナは、己目掛け繰り出されるヤリの刃を見て、久しく麻痺していた恐怖を思い出した。ニンジャアドレナリンが急速に分泌され、一秒が何百倍にも引き延ばされて感じられる。

身を捩って初撃を「グワーッ!」……躱せない。ならば、より致命的な追撃を左足で「アバーッ!」……受けた足を膝から切り飛ばされ、鮮血が舗装を染める。

3T目開始、アトモスフィア上昇
BK攻撃n(261212)>OC回避h(631)
OC強化精密攻撃n(2131)(23226)一回目失敗>BK回避h(3)BK3>2
BK攻撃n(263226)>OC回避h(651)死ぬかと思った
OC強化精密攻撃n(5633)(36446)>BK回避h(2)(1)BK2>-1。戦闘不能
`/nd サツバツ!`
サツバツ:
`1d6` = (5)
合計値:5

**両腕破壊**:『痛打+1』、カラテダメージ2、ワザマエダメージ2

**「これで手も足も出まい!」敵の両腕をダブルチョップ切断! 傷口から鮮血がスプリンクラーめいて噴き出す!**
『痛打+1』。
敵の【体力】を減らした場合、付属効果として『カラテダメージ2』と『ワザマエダメージ2』と『●部位損傷:腕部』を与える。

「ア、アバッ……」辛うじて右足と両手で三点着地し、不格好なクラウチングスタートめいたぎこちないカラテを構えなおす。「……ッケンナ……ザッケンナコラー!」ブラッドカタナはヤクザスラングを叫び、己を奮い立たせて猛烈なカラテを仕掛けた!

「スッゾ!」左フック。ガードさえされないが、良い。「スッゾ!」余勢をかって両手をつき、変形メイアルーアジコンパッソ。オールドコロッサスはブリッジで避けた。勝機。二度のカラテ空振りの勢いを乗せ跳躍。「スッゾコラー!」致命の薄墨右チョップを叩き込みに行く!

「グワーッ!」今やツキジめいた有様の広場に悲鳴が響いた。……叫んだのはブラッドカタナ。回天の右チョップが届く前に、オールドコロッサスのヤリが彼を叩き伏せていた。「ナマッコラージジイ……ソウカイニンジャッケンナコラー……」体勢を立て直しながら漏らす呪文めいた呟きに、オールドコロッサスは怪訝な顔をした。

「君は、もしや私を……」僅かに白髯巨神ニンジャの殺気が緩む。ブラッドカタナはこれを幸運と捉えた。「バカメーッ!」両腕のバネを生かした必殺の独脚ヤクザマカーコ!

「……ヤンナルネ」オールドコロッサスの瞳が一瞬超自然の輝きを帯びた。「アババーッ!」マカーコが届く前に、ブラッドカタナは空中で両腕の肘から先を落とされ、腹をヤリの刃に貫かれていた。

3

元シナリオのスカウト判定。こいつがニチョームやストリートで奥ゆかしくやっていける気がしないので
フジキドのカイシャクは確定として死に際の攻撃を食らうかどうかのワザマエ対抗判定に差し替える
`/nd h8``8d6>=5` = (~~1~~,~~3~~,~~4~~,6,5,~~2~~,~~1~~,~~1~~ :成功数:2)
合計値:2
`/nd h4``4d6>=5` = (~~4~~,~~2~~,5,~~3~~ :成功数:1)
合計値:1
成功!【名声】1をゲットだ

べちゃり。ヤリから振り捨てられ、両腕と左足を欠損させたブラッドカタナが噴水広場の砕けた舗装を血で染める。「アバッ……」重苦しく立ち込める重金属イオン混じりの雲を、ヤクザニンジャは空しく見上げた。ソーマト・リコール。全てのケチのつけはじめだった夜の記憶が蘇る。

「ドーモ、キヨシ=サン。グラッジです」いつの間にか事務所に侵入していたニンジャがアイサツしてきた。あいつは、メン・タイの値上げのことも、ソウカイヤの集金担当がうちを嬲り者にして鬱憤晴らしをしていることも知っていた。「キヨシ=サン。あなたとあなたのクランは、そんな粗略な扱いを受けていいものではない」

グラッジはキヨシの手を取り続けた。「我ら、栄えあるザイバツ・シャドーギルドの理想社会をともに建設しうる、高貴なるクランなのだ。ニンジャ千年王国の暁には、あなたがたのようなヤクザクランが他のモータルを支配し、我らニンジャの最側近として仕えるのです」ああ、あれはオレがテッポダマにするワカモノをリクルートするときの声だった。キヨシはぼんやりと考えた。

「ソウカイヤのニンジャなど所詮弱敵。恐れるに足りません。キヨシ=サン、あなたにはロードの覚えもめでたき最精鋭の傭兵ニンジャを護衛としてつけましょう。これは我々の誠意の証と思っていただきたい」今から思い返せば笑えてくる。ロードも恃む最精鋭とやらの触れ込みで来たブラックマンバは、散々クランのスシとオイランを食い散らかした末、キツネビに5秒で炭にされた。

「……ククッ…ククク……アバーッハッハバー!」ブラッドカタナは接近するオールドコロッサスを感じ、笑った。「ザイバツも、ソウカイヤも、最初からオレをオモチャ扱いだ。アバッ……間抜けなヤクザめ!」あの巨大な白髯のニンジャは、きっと俺の頭を踏み砕いてカイシャクするだろう。頭上の気配の動きを待つ。

「ブラッドカタナ=サン、君とソウカイヤ、ザイバツの話を聞きたい」意外な申し出だった。「アバッ、そうか。オールドコロッサス=サン、聞いてくれるのか」ブラッドカタナは精一杯憐れを誘う声を無意識に出していた。バカな老い耄れめ。「あれは……あれは先月の夜、うちの事務所にニンジャが……」ゆっくりと、残る右足に暗黒のカラテオーラを集中させていく。

「なんと惨い……」オールドコロッサスはキヨシの身の上に瞠目した。華族めいた高貴の育ちには、老境に至るまで全く遠い世界の話であったからだ。「もうここで暴れぬなら、治療とサイバネ義肢を斡旋しよう、ブラッドカタナ=サン」白髯のニンジャは、シーチ先生はブラッドカタナを助け起こそうとした。彼が身を屈めた瞬間、ブラッドカタナの目が不吉な殺意に輝いた。

「間抜けめ!」ブラッドカタナは、キヨシはヤクザだった。対象を縛らぬままに与える温情は、ヤクザの世界では唯の愚行だ。残る全身のバネを駆り、全力ダークカラテ・エンハンスメントの乗った右脚を無防備なオールドコロッサスに叩きつけに行く!オールドコロッサスは目を見開く。防御も回避も間に合わぬ!おお、慈悲深きシーチ老人はここで殺されてしまうのか?

否、待て!夜よ聞くがよい!あらゆる不条理にインガオホーを叩きつけるジゴクめいた声を!「Wasshoi!」そして見よ!禍々しくも躍動感あるシャウトと共に空に舞う赤黒の影が浮かべる縄めいた筋肉を!「イヤーッ!」流星めいて夜気を裂くツヨイ・スリケンを!

「アバババーッ!サヨナラ!!」タツジン!狙い過たずブラッドカタナの頭部破壊!ブラッドカタナ爆発四散!

オールドコロッサスはエントリー者を見た。赤黒のニンジャの全身は今しがたまで凄絶なイクサを繰り広げていたかのように傷ついていたが、両目にはジゴクの炉めいた復讐の業火が力強く燃え続けていた。その血の色のニンジャ装束に「忍」「殺」メンポのニンジャはアイサツした。「カイシャクを躊躇うな。オールドコロッサス=サン。ドーモ、初めまして。ニンジャスレイヤーです」

「ドーモ、初めましてニンジャスレイヤー=サン。オールドコロッサスです。ひどい傷だ、今メディキットを……」オールドコロッサスはアイサツを返し、気遣った。あれが。ニンジャスレイヤー。孤独な復讐者にして虐げられる者を助ける殺伐の騎士。いつかうっとりとした口調でザクロが語っていたのを思い出す。なるほど、目にしてみればそのカラテが分かる。……その決意と悲壮も。

「私に……構うな……!」しかし、チョップの形で小刻みに震える右手を抑えながらニンジャスレイヤーはジゴクめいて制した。

「行け……どうか、早く!」呻くような声。血涙を流す赤黒のニンジャに、オールドコロッサスは何らかの切実を見出す。それは余人の立ち入るべからざる葛藤の只中にいるもののオーラだ。

「……ニンジャスレイヤー=サン、オタッシャデー!」逡巡することなしに、オールドコロッサスはその場を去った。彼の戦いに救いあれと祈りながら。

「スゥーッ!……ハァーッ!……」オールドコロッサスが去った広場には、ブラッドカタナの殺戮痕跡に立ち尽くすニンジャスレイヤーのみ。彼は、復讐者フジキド・ケンジは静かにチャドー呼吸を深め、傷を癒すとともにニューロンの邪悪な同居人の声に抗おうとしていた。

(((グググ……愚かなりフジキド!ヒアス・ニンジャは実際キンボシ・スゴイオオキイぞ!ゼウス・ニンジャを退けるカラテを持ちながら、下らぬ小僧手品に謀られ滅んだ愚か者。あのごときカイシャクもまともにできぬ柔弱な老い耄れに憑くとは愚かの上塗りなり!……それをみすみす見逃すとは、情けなや!オヌシの復讐心は……)))(黙れナラク!)

(((そも、先のトーフ工場のイクサ、儂に従いあの場のモータルを薪にしておればコブラ・ニンジャクランとヘビ・ニンジャクランのサンシタごときに斯様な傷を負うブザマは晒さなんだ筈)))(黙れ!)ニンジャスレイヤーはしばらく、そうして動かなかった。それから、己を強いてまた赤黒の風となり、消えた。

中間リザルト
レベル4相当の万札なので4*3=12、元シナリオのアーチ級賞金首ルールが適用されさらに2倍
【万札】24と【名声】1をプールして後半で次のニンジャと戦おう

【ブラッドカタナ・アンド・ハニーランス】続く

DIYニンジャ名鑑

◆忍◆DIY名鑑#7【ブラッドカタナ】◆殺◆
薬物の卸を巡ってソウカイヤに滅ぼされたヤクザクランのグレーターヤクザに邪悪なニンジャソウルが憑依。クランを滅ぼしたソウカイニンジャへの復讐心を暴走させ、旧世紀地下道網を利用して手当たり次第に殺す。未来はない。

◆忍◆DIY名鑑#8【デッドローニン】◆殺◆
元重サイバネ傭兵のソウカイニンジャ。サイバネ強化された身体能力で放つイアイで頭角を現し、目下威力部門のホープと認識されている。純粋なワザマエならシックスゲイツ入りも夢ではないと言われる一方、サイバネ手術のために同僚や上司に借金を重ねている。

◆忍◆DIY名鑑#9【グラッジ】◆殺◆
ブラッドカタナ・ヤクザクランのグレーターヤクザ、キヨシと接触したザイバツニンジャ。ロードの覚えめでたき最精鋭をヨージンボに斡旋するとソウカイヤからの離反を促した。

◆忍◆DIY名鑑#10【キツネビ】◆殺◆
元ストリートギャングのソウカイニンジャ。カトン・ジツのマスタリーで鳴らし、目下威力部門のホープと認識されている。自身がスカウトしたインシネレイトとは、カトン使い同士切磋琢磨を重ねる仲。

◆忍◆DIY名鑑#11【ヘイズストリーム】◆殺◆
ムシボシ・コンサベーション社の企業ニンジャ。電子戦争経験者であり、2マイルに迫る長距離狙撃能力を誇る。同時にオボロ・ジツで自身周辺を超自然の靄で包むため、ターゲットはヘイズストリームを認識することなくその弾に倒れる。

◆忍◆DIY名鑑#12【ブラックマンバ】◆殺◆
傭兵ニンジャ。ヘビ・ニンジャクランのニンジャソウル憑依者。残虐で無慈悲な仕事ぶりをザイバツに見いだされ、繰り返しミッションを受けていた。ブラッドカタナ・ヤクザクランの仕事が無事に完了した暁には、ザイバツ・アデプトとして登用されると約束されていた。

あとがき

早くもみっつめの記事となりましたが、お楽しみいただけたでしょうか。今回はもう少しアデプト帯のイクサを見ようと、能力値合計14‐16程度、1手番で2点ダメージを飛ばしてくるニンジャと戦うのがシナリオコンセプトです。今回は一回被弾してしまいましたが、その後も何とか避けたとはいえサツバツを出されたり、かなりスリリングなプレイを楽しめました。
ストーリー的な面では、恐らくニンジャスレイヤーTRPGバース群で最も多く殺されたリアルヤクザ、キヨシ=サンにニンジャになってもらいました。なので、冒頭あんまりくどくならない程度にちょっぴりヤクザノワールなスタイルにトライしてみました。
そして、フジキドに間一髪を助けてもらうという大変厚かましいシチュエーションをどさくさに紛れて達成できました。こういうのができるのがTRPGのいいところですよね……。
さて、小説風リプレイを書くにあたり、どうしてもターンベースの戦闘ログからイクサを組み立てる関係上、戦闘のやりとりが単調になりがちだったり、迫力を出しにくいのは私のテキストカラテのいまだ及ばぬところだと感じています。なんとかいい感じのスタイルを見つけたい……。

次のお話


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?