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【OW2】OWの戦術の本質はアサルト、ブーム、タートルである

レバンガ☆SAPPORO OW部門コーチのclank(@clank_ccc)です。

突然ですが、以下のような画像を見たことはあるでしょうか。

私(とpain)が作りました
代表的な構成の相性表

OWWC日本代表コーチであり、現日本一位チームであるVarrelのコーチであるPainコーチが先日Xで"アンカー構成"を解説する一連のツイートの中で投稿していた画像です。
該当ツイートにある通り僕もこの解説ツイートに主に画像制作で協力しました。

アンカー構成とその解説は耳慣れない方も多かったかと思いますが、構成相性表自体はいわゆる初心者向けの内容のものであり、OWを長く触ってきた人なら類似した情報に一度は触れたことがあるでしょう。

今回はこの構成相性について、

・構成相性は絶対的ではないということ
・構成相性がひっくり返る原因

に触れたのちに

RTS(Real-timeStrategy)というゲームジャンルにはラッシュ、ブーム、タートルという戦略的または戦術的概念があり、OWもそれに倣った考え方のほうが戦術的本質に近い

ということを解説していきます。

今回の内容は過去記事のリメイクとなります。ご了承ください。

また、この記事を見たからと言って今シーズンのレートは上がったりはしないですが、
「1年以上先を見据えてOverwatch2というゲームを”攻略”していきたい」という方が、今後無数にぶつかるであろう”わからない”を解決する糸口くらいにはなると思います。


1,構成相性は絶対的ではない

Painさんごめん。
元画像作ったの僕なんで許して。

画像ではバツ付けてますが、OW界でまことしやかに言われている、ラッシュポークダイブの3竦みやそれを基にした構成相性というのは”おおむね”正しいです。
実際OWの戦術の入り口としてはこれ以上なくとっつきやすいです。

が、

ここまで読み進めていただいたOW初心者ではない方なら、これがあてはまらないケースなんていくらでも思い当たる節があると思います。

ランクマッチではポーク構成がダイブ構成をボコボコにするなんて日常茶飯事です。

勿論大会でも相性を覆すケースはいくらでも発生します。
直近では以下の試合が代表的な例となります。

ダイブ(Houston)vsラッシュ(London)のマッチアップですが、ダイブ構成側がコントロールマップを取得しその後も接戦ではあったものの3-2で勝利を収めています。

なぜ構成相性を覆した結果となったのか?
なぜ構成相性が覆るようなことが珍しくないレベルで発生するのか?

プレイヤーの力量差やチームの練度や作戦の差でしょうか?
それともその時のパッチによるヒーローパワーの差でしょうか?

勿論それもあるでしょう。

では、その力量や練度、作戦とは何なのでしょうか?
ヒーローパワーと言ってもその本質は何なのでしょうか?

こうは考えられないでしょうか。

OWにはもっと根本的な概念があり、その概念によって構成相性のようなものが表面的に見えているだけなのではないか?

実際はその概念をどう用いるかによって勝敗が決しており、その“結果”を僕らは構成と呼んでいるのではないか?

構成は表面的な情報でしかない説

実際、競技的にOWをプレイし始めたあたりで気づいたのですが、

「ラッシュ構成もポークするじゃん」

そう、僕らが一様に構成と呼んでいるナニカは一連の戦闘の中で別の構成の戦術を取ることが日常的です。
というより、戦況によって戦い方=戦術を使い分けています。

つまり、構成と戦術というのは別物であり、別軸で語る必要があるのです。

めちゃくちゃややこしい

僕ら競技勢は構成の使い方に慣れるだけでなく、こうした戦況によって戦術を的確に使い分ける練習もしています。

なぜか?
答えは単純、その方が勝率が上がるからです。

大会で見るようなラッシュ構成やダイブ構成が常に敵に突撃ばかりしているでしょうか?
ポーク構成はひたすら遠距離からぺちぺちしているだけでしょうか?

いいえ。
必ずどの構成も戦闘の状況や段階、対面のヒーロー構成に合わせて戦術を変えているはずです。
ラッシュ構成やダイブ構成は敵に突撃する前にいくらかエリア取りやスパムなどで準備をしていますし、ポーク構成も最終的には接近戦で仕留めに行くことが多々あります。

当たり前すぎてほとんど語らていませんが、どの構成でも戦術を切り替えながら戦っており、それによって勝率が向上するということは、この”戦術”にこそOWの本質的な何かがあると考えられます。

2,戦術の大別

さて、前項では構成と戦術は似て非なるものであり、戦術にOWの本質的な何かがあると語りましたが、その何かを考えていきます。

ここでMOBAやRTSといったゲームジャンルで培われた戦術を引用したいと思います。
なぜなら、OWはそれらのゲーム性を兼ね備えており、リリース当初からその類似性を指摘されているためです。

ということでMOBAやRTSの戦術調べてみたら

ありました。(というか3年くらい前からすでに調べてました。)

参考文献:
戦略の3すくみ
AOE2 ラッシュ、ブーム、タートル
Halo Wars @wiki

これらを簡単にまとめると

戦略または戦術は
ラッシュ:敵への直接的妨害、攻撃
ブーム:戦力増強のための投資、戦闘準備
タートル:回避、防御のための戦闘態勢
の三つに分けることができラッシュ>ブーム>タートル>ラッシュのように三竦みになっている。

ということになります。

皆大好き3竦みの図

この概念をOWに適用して考えていきましょう。

ちなみにここからの解説にはリソースという言葉が頻出しますが、これはOWにおけるスキルやHP、エリア、時間など勝敗にかかわる要素すべてを包括した言葉です。
詳しい説明をすると長くなるので省きますが、簡単に言えば戦術とはリソースを運用する方向性、方法と言えます。

アサルト(=ラッシュ)

RTSではラッシュと呼ばれる概念ですが、すでにOWにはラッシュ構成という名称が存在するので、それと区別するために近しい意味合いの「アサルト」と呼ぶことにします。(ルールの名称と被ってる?かのルールはもう公式レギュには存在しないので…)

敵に接近し、直接的に敵に攻撃を加えて戦闘を行います。
アサルトを行う目的は主に
・戦闘の決着
・敵の行動の妨害
の二つ
です。

前者はラッシュ構成、ダイブ構成が行うラッシュやダイブが該当します、弱ったり隙を見せた敵に対してのとどめとして行ったり、不利状況の打開のためにリソース全投入でチャンスを作るために行われます。

後者はウィンストンのビリビリ→バックジャンプや、浮いた敵へのゲンジの風切り、トレーサーの粘着などが挙げられます。
接近して攻撃を加えることで敵に大きなプレッシャーを与え行動を制限する効果があります。

チーム単位で行われるか、個人単位で行われるかの違いに見えますが実際はこの二つは表裏一体で両立します。
妨害のつもりがキルできちゃった。なんてこともあればその逆もしかりです。

より抽象的かつ普遍的な言い方をすれば、
”リソースを消費して敵に大きな打撃を与えること”

こそがアサルトであり、その打撃の結果が妨害になるか決着になるかの違いでしかありません。

性質上、中長期的にリソースを伸ばすためにリソースを投資するブームに対してはその隙をついて妨害ができたり、早期決着が狙えますが、こちらの攻撃に対して的確に対応してくるタートルにはリターンが取りきれず弱いと言えます。

ブーム(=ビルド)

RTSではブームと呼ばれ、OWには既存の概念はありませんが、OW公式配信で解説をされているgappo3さんがよく「ULTをビルドして~」という言い回しをしており、ブームの概念に非常に近い戦術だったので付け加えておきました。

OWに適用すると
アドバンテージを広げ、有利な状況を築くことを目的とした戦術です

具体的には
・エリア取り、ポジショニング
・ULTのビルド(ULTのゲージ貯め)
・スパムあるいはポークによるスキルトレード
などがブームの実例です。

リソースを消費して、より多くのリソースや有利状況を得るのがブームと言えます。

比較的中~長期的なスパンで勝ちに行く戦術ともいえます。
リソースを消費して自分たちの有利を伸ばすため、リソースが伸びずこちらを害してくるわけでもないタートルに対しては強いですが、リソースが伸びきる前にアサルトされてしまうと弱いです。

タートル

OWで恐らく一番なじみが無く、ほとんどの人が意識していない要素です。
(RTSでも認知度は高くないようですが。)
とはいえ、重要度はアサルト、ブームと完全に同じと言えます。むしろ意識してない人が多いからこそ差が出る部分と言えます。

OW的には
リソースを温存し敵の攻撃/行動に後出しで有利を取ることを指します。

具体的には
・カウンターULT
・スキルによる反撃
・回避、回復スキルの温存

などが挙げられます。
どれも敢えてスキルを温存し敵の行動後のより効果的なタイミングでスキルを使用することで攻撃してきた敵に逆に打撃を与えたり、敵の攻撃を効果的に受け流すことができます。

ブリギッテのウィップをウィンストンのジャンプに合わせたり、攻撃ULTを耐えるためにルシオのドロップザビートを温存したりといった感じです。

細かいところではグループアップもタートルに部分的に該当します。
グループアップは味方が密集する(エリア的な有利を取らない、移動スキルを温存する)ことで連携が強固になり、敵の攻撃に対する防御力(反撃力)が上がります。

OWにおけるタートルのポイントはリソースの温存にあります。
リソースの消費が無いので、能動的に敵を害することはできないですし、自分たちのリソースが増えることも少なく、敵のブームを咎めることはできませんが、積極的に攻撃を仕掛けてくるアサルトには温存したスキルで的確に有利を築くことができます。

OW版戦術三竦み

3,戦術3竦みの実際の運用

ヒーロー/構成編

さて、戦術の大別は終わりましたが、ここからは実際これがどのようにOWの試合を支配しているかというお話になります。

結論から言えば、これら三つの戦術にはある程度適性が存在します。

ヒーローそれぞれが体力、スキル、コンセプトなどによってこの三つの戦術にそれぞれ違った適性があり、それを5人で足してチーム内でのシナジーを加味したものが構成全体の戦術への適性となります。

そしてこの構成全体の戦術への適性こそが構成相性の根本であり、僕らが表面的に見ているものとなります。

構成の戦術適性が構成相性を形作る要素の一つ

これをダイブ構成を例に、具体的な数字で表現すると以下のようなグラフで表現できます。
(今回のための例なので適当な数字が多いです)

パワーの数字こそがそれぞれのヒーローパワーであり、その合計が構成全体のパワーと言えます。
ヒーローごとの戦術適性はヒーローパワーとして集約されている通り、パッチノートによる調整がもろに反映されますので、今回提示している数字はあくまで一例としてお考え下さい。

ヒーローが変われば似たような構成でもグラフは変化する

ラッシュだったら例えばこんな感じです。

違和感ある数字かもしれないけど許して

ここに挙げた例から、構成相性を考察してみましょう。
それぞれダイブ構成はアサルトを得意として次点でブームを、ラッシュ構成はタートルを特に得意として次点でアサルトを得意としている構成だというのがわかります。

得意分野の相性だけでいえばラッシュ構成のほうが相性上有利に見えます。
(実際はパワーがかけ離れていると有利不利が成立しないこともあります)

では、冒頭で紹介したようにダイブ構成がこの局面をひっくり返すことがなぜ可能になるのか。

その答えこそが、最も重要な戦術の運用となります

運用編

さて、戦術の運用となりますが、
これら戦術には確かにヒーローごと、構成ごとに適性が存在します。

が、

それは不得意分野の戦術を行うことが不可能であるということを指すわけではありません。

Houston vs Londonの試合を見てもらえればわかる通り、ラッシュ構成だからと言って常にラッシュやタートルを狙うわけではなく、しっかりとポジショニングやULT溜めの被弾やスパムなどできっちりブームも行っています。

ダイブ構成側もやみくもにアサルトするのではなく、相手を囲うようにエリア取りしながらスパムしたり、突っ込んできたラッシュ構成に瓶やジャンプを合わせたりとタートルしているシーンは数多くあります。

つまり、実際の戦闘中には得意不得意に限らず、戦術を切り替えていき、その瞬間その瞬間にお互いが対応できるかで勝敗が決まります。

そこに戦術への適性も多少は影響しますが、戦術ごとの相性ほどの影響はありません。

例に挙げているラッシュvsダイブのケースならば、
1,ダイブはアサルトしても勝てないためブームから開始
2,ラッシュがそれをさせないためアサルト
3,ダイブは反撃せず回避に専念(消極的なタートル)
4,ラッシュはダイブが回避した分のエリアを保持
5,ダイブはアサルト→ブームで疲弊したラッシュにアサルト

というような駆け引きがあったと推察できます。というか試合全体の流れが大体そんな感じなので、そこに名前を付けると上記のようになります。

この戦術の切り替えの中で、切り替えを失敗する、あるいは切り替えても対抗できるだけのリソースが無い状態に陥ったときに敗北します。
そして、この扱う戦術の切り替えの精度、速度、効率の良さ、組み立て方などがチームとしての練度や作戦と言える部分で、勝敗を大きく左右する部分となり、これを考え実行することを僕は”攻略”と呼んでいます。

特に競技シーンにおいては、選手やチームのレベルが高くなるほど攻略の重要度は上がっていきます。(たま~にそれすらも吹き飛ばす1強構成や怪物プレイヤーが出現しますが)

勿論カウンターピックや構成変更が全くの無駄というわけではなく、戦いやすさというのは確かに変わります。
戦術適性というのはその戦術のポテンシャルを引き出しやすいかという指標なので、それが低ければ戦術の実行は難しくなり、練度を上げるのも難しくなります。
相手の苦手戦術と自分の得意戦術がかみ合えばそれは相性有利と言わざるを得ないでしょう。

しかし、戦術の運用とセットで考えることがおろそかになっていると、本来有利のはずの相手にボコボコにされるケースが生まれるわけです。

まとめると、

・OWにはアサルト、ブーム、タートルという戦術概念がある
・戦術には相性があり、それらを切り替えて戦うのが重要
・構成相性とは、構成の戦術適性を見比べたときの相性である

といったところになります。

4,あとがき

以上となります。
構成相性をふんわり否定するような記事になってしまいましたが、構成相性は部分的には十分正しいと言えます。冒頭でも述べたように、とっつきやすいのは確実に構成相性のほうです。

ただ、構成相性という考え方だけだと結構な頻度で破綻するので、破綻しない考え方として、戦術という概念を扱っていただけると幸いです。

この概念を意識的にあるいは無意識的に理解していると、KarQ先生の解説のようなヒーローの対面ごとの戦い方みたいなものも自分で考えられるわけですね。
僕が関わったことのある上手いプレイヤーやコーチの皆さんはわざわざ言語化しないだけで概念自体は理解しています。そのうえで構成相性という概念を扱わざるを得ないことに苦しんでる人も多いですね。

ちなみに、この題材で記事を書くのは3回目だったりします。
なんで繰り返し書いてるかというと、題材が難しく完成度が低いからです。

あとは、こうした体系的にOWを理解するための理論がもっと増えて、全体的な理論がブラッシュアップされたら面白いからですね。
この記事がその後押しになるかはわかりませんが、そういった記事が増えること、増えるだけの競技環境が日本で広まることを個人的には望んでいます。

長くなりました、ここまでお読みいただきありがとうございました。

それでは。

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