代々木

10月20日

東京の中で「代々木」という名前のつく場所はいろいろあり、つまり代々木は広い。特に代々木八幡や上原には遠い憧れを持っている。

代々木公園駅から八幡宮に歩いていくと、あるところに木が集中していて山になっているのがわかる。
階段を登り始めると早速、猫が出迎えてくれた。
猫は私を先導していくように、ゆっくり階段を登っていく。
単純に私から逃げているだけかもしれないが、私は猫についていくように歩いた。
登り切ると、それ以上は猫と距離を縮められなくなった。
私はさらに歩いた。

一メートル幅の緩やかな階段を一段一段登っていく。
足元で何かが動くのが見えて、ねずみかと思って目をこらした。
大きいカエルだった。

気温の低い日が続いていたのに、梅雨の雨の日に見るようなヒキガエルみたいなのがいるんだなーと感心してさらに見ると、視界の中で3、4匹ぐらいのカエルが動いてさすがにびっくりして声をあげた。
もし私がカエル嫌いだったら文字通り腰を抜かしていたと思う。

山の上は背の高い木に囲まれて暗い。
外灯は多く自販機や椅子もあり、空気も良くて落ち着ける場所だった。気持ちの良い神社だった。

山を降りるとさっきの猫がいた。
これも私の勝手な解釈だが見送りに来たように思った。

「お気をつけてお帰りください…」

そう言っていような、風格のある佇まい。

私が調子に乗って、目を合わせずさりげなく近づこうとすると、猫は動きをこわばらせた。申し訳なくなった。

こっちは山なのに、階段を降りてしまえばすぐに山手通りが見えて急に都会的。景色のギャップを楽しめるなんとも面白い場所だった。

ヘアメイクでお世話になって知り合ったえりかさんのお家が、引越しを機に自宅でフリマを行っている。それを聞きつけて掘り出し物を探しに行ったのが今回の八幡上陸。

えりかさんのお家に着くと、敷地内に品を並べているところだった。

「ビール買ってくる。クララさんも飲む?」
「じゃあいただきます。」

缶ビールを飲みながら、えりかさんと喋ったり、物色を行ったりした。
買い取った分のお金を渡すと、えりかさんは喜んでいた。

「やったー。これでビール買える」
「いっぱい買えますよ」

紙袋にはCD、本、Tシャツ、かわいいニット、キャメルの色のコート、キャップ、サコッシュ。どれもワクワクするやつ。

えりかさんとは赤羽や十条など、飲み屋と銭湯の話をした。
他愛ないけど、関心があり、楽しかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?