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香港に行ったこと 6

あたふたモーニング

4日目。今日も朝から食事を求めて街を歩く。朝食メニューを表に出している店に入った。店名の最後に"冰室"がついている。"冰室"はカフェのことだと思う。

小さなBOX席に座り、ここでも相席になった。2〜3人でちょうど良さそうなサイズの席でも当たり前に相席になる。

さてさて、パワーチャージになにを食べよう。メニューに写真も載ってるけど、どんな食材を使った料理なのかは漢字が頼り。なんだか決まらなくて、ここに来る人はどんなものを食べているんだろうかと周囲を見渡す。何人かが食べている目玉焼きのトーストがやけに美味しそうだった。どうやって注文すればそれが出てくるだろうか…注文時にたまごの焼き方をカスタムでオーダーする上級者っぽい用語もあるけど、いま私のライブラリからはそれが出てこない。

ほんの少しで店員さんが注文を聞きにきた。まだ決まってないけどこの勢いで決めよう。なんとなくハムとたまごがのってそうな名前のトーストを注文。続いて豊富なドリンクメニューからも「檸檬」という字を頼りに指差し注文。そのあと店員さんからなにかを2択で聞かれた。わからずに困惑しているともう一度聞いてくれたが、本当になにもわからなかった。「すみません、わからない…」と私苦笑。「ああ、わからないか〜」といった感じで店員さん苦笑。諦めたように店員さんは去った。

直後に気づいたが、店員さんは私が注文したドリンクについて、ホットかアイスのどちらかを聞いていたのだった。でももうどちらでも構わずおまかせする。冷たければこの厳しい暑さにはちょうどいいし、温かければ胃腸に優しいし…

そうして楽しみに待っていた飲み物が到着!

どっちだー


触れてみる!温かいドリンクだった!とにかく檸檬の入った、でもそれだけではない風味のする甘くて美味しいものだった。帰国後に調べたところ、クレソンと蜂蜜が入っていたようだ。

続いてトースト到着。すると向かいに座っている人が「それ、あなたが注文した?」という感じで聞いてきた。見るにパンとたまごがのっているし、彼はあとから注文していたし、きっと私のものだろう。「YES」と答えた。たぶん…

オーソドックスな既視感ある料理でも、言葉のわからない国で自分が注文して出てきたもの。ウキウキと写真を2枚ぐらい撮って手をつけようとしたそのときだ。店員さんが再びやってきてストップをかけた。このトーストは向かいの人が注文したもので、店員さんは私が注文したトーストをこのタイミングで持ってきたのだ。あぶない、食べるところだった!向かいの人には、料理に手をつけてないことを主張して私はようやく自分の食事にありついた。

この撮影をしていなければかじっているところだった向かいの人のトースト


こちらが自分の注文したハムエッグトースト

向かいの人は、ハーフのトーストとインスタント麺のセットをたいらげ、量の少ない私よりも早く店を出た。そしてまた別のお客が私の前に座り、そうやって人が入れ替わり立ち替わる。

私が食べたトーストのたまごは絶妙な焼き加減のスクランブルエッグで美味しかった。しかし目玉焼きも食べてみたかった。こんな風にちょっと照準が合わない回もあるから、旅先では目当ての料理を全ての食事に当てることは難しい。そういう寄り道も楽しい。いやはや単独行動で注文をするにはまだまだ経験が必要だ。


ぶら散

午前の街をパトロール。4車線ある大通りの真ん中に、緑道のような通りを見つけた。緑がたくさんあるほか、遊具やベンチがある。とにかく座れるスペースが多く、地べたにシートを敷いている人もよく見かけた。ただ仲間と横並びで喋っている人もいるし、たくさんの荷物を詰めた大きな袋をかたわらに置いている人もいる。特にイスラムの人が多く集まっているように見えた。香港のいろんな人々の暮らしに存在する、ひとつのコミュニティが見えた。

生活用品が雑多に並んでいる店の前を通る。聞き覚えのあるメロディが聞こえて足を止めると、小さなモニターとスピーカーのついた四角い機械から、大事MANブラザーズバンドの「それが大事」の、おそらく広東語バージョンが流れていた。モニターに歌詞と背景映像が流れていて、これはポータブルカラオケであることがわかった。珍しいものだから立ち止まってしばらく眺めていると店の人がにこやかに「カラオケ♩」と商品を紹介した。私もにこやかに「はい〜」とか言いながら、買うつもりがなく店を後にした。

「それが大事」が流れていたカラオケ


深水埗はとにかく店が多い。古くからありそうな漢方の店、いろんな形の定規が売っている店、あらゆる専門店があり、それが日本の"商店街"どころではないもっと大きな規模にわたり、町全体に店がある感じだ。

猫ちゃんよく居る


雲型定規がカジュアルに路面店にあるのすごい


まどろみ

朝の散歩とは言え猛暑の中。くたびれて宿に戻り、少し横になろうと目を瞑った。パッと目を開けたら時刻は14時すぎ…けっこう寝てしまった!夕方までに自分の土産を探したり、昼ごはんも食べたいから大慌て。こうしちゃおれんと支度をし、張り切って扉を開けた!

ドシドシと雨が降っていた。こんなにハッキリ降ってくれると、潔くなにかを諦める気になる。「どうするこれ…」という困惑と「すごい量!」という痛快さを同時に感じる。

しかし私は引き返さなかった。宿には「美荷樓(Mei Ho House)生活館」という、この団地の歴史について紹介している小さな博物館が併設されており、それを見物する機会にできるからだ。

内容は、この地域の団地の成り立ちのみならず、香港人の暮らし、祝い事、お茶文化など、香港の歴史から風習についても紹介してくれている。

館内
昔の団地の一部屋を再現。家族が住んでいたのでしょう
やはり麻雀は馴染みのボドゲらしい

しっかり観れば1時間以上はかかりそうな展示だったが、のちの予定を考えるとサラサラと流して見ざるを得なかった…見終えた頃には外の雨も止んでいた。


遅い昼

粥店に入店。「鮮魚腩粥」と書いてあるのを指差し注文。お店の人が、パックに入った白い魚の切り身を取り出し「これね?」と私に見せてから作成された。

美味しそうなお粥が登場。ここのお粥もかなり消化に良さそうな形状をしている。一口すするとしっかり風味や味がついていて食欲を促進させる。その中に白身魚がゴロッと入っていた。なんの魚かはわからない。たまに生臭い箇所もあったけど美味しい。15時なのに店には常にお客が来ていた。向かいの男性は少ないモーションで黙々と粥を口に運んでいた。


スリッパを求めて

地下鉄、佐敦(Jordan)駅を降りた。ここもビルとビルの間の通りに出店が並んでいて、深水埗ほどではないが店があちこちある。雨が降ったり止んだりしているからか、人が少ないし、みんな少し疲弊しているようにも見えた。

土地柄出すぎなポイ捨て品


スリッパを買い求めにこの街に来た。旅5日中4日目にして今更だが、宿ではスリッパがないと不便だから欲しい。そしてどうせなら、香港の伝統的な刺繍スリッパを買って自分へのお土産にしたい。店を目指して古いビルに入った。婦人服、下着売り場、衣料品の修繕などの店が密集していた。

スリッパ屋の広告をビル内で見かけ「1F」にあることがわかった。ところが地上階をぐるりと回っても、それらしき店は見当たらない。この建物にはないのか?別の棟があるのか?出入り口で黙々と考える。その結果、この階は"1F"ではなく"Ground"で、"1F"とは2階を示しているという香港の常識を思い出した!脳がスッキリした。スッキリして階段を登ると、すぐに店が見つかった。

ここまで来たのだし絶対入店するけど、それには少し勇気が必要なぐらいの小さな小さな店だった。そこに伝統的な刺繍のスリッパがずらりと並んでいる。私はこれを探し求めていた!

しかしいざ現場で眺めると「どれもかわいい〜!」とはならず、好みのものを見つけることが難しい。宝探しの状態になった。悩んでしまう要素のもう一つは値段だった。これまでの私の消費の仕方は日本円にして1000円前後の食事だったり、雑貨を買っても数百円のポストカードだったりと、全てこまごましていた。それから急に1足200香港ドル(約3600円)の買い物にハードルを感じ、妙に慎重になってしまった。だけどせっかくここまで来てなにも買わずに出るなんて…ウンウンとためらったのち、ふとパンダのスリッパが目に入った。パンダ親子が仲睦まじく笹を持った刺繍の、透け感あるスリッパだ。ずっと"花柄"にフォーカスして品を眺めていたが、パンダが私にストンと来た。試し履きして、店の人にワンサイズ小さい物を教えてもらう。ジャストだった。これより最初に履いた方のパンダがもうちょっと可愛いんだけどな!と内心思うほど、その製品のわずかな違いはハンドメイドであることの証明でもあった。パンダスリッパ購入。


かわいいじゃないの!


買い物ができた安心感、緊張感からの開放に包まれて駅に向かう。佐敦の活気は大人しいが、建物は大胆で迫力がある。


夕方、友達と会うべく中環(Central)へ向かった。

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