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香港に行ったこと 1

7月。
始発の電車に乗って成田空港へ向かった。普段活動しない時間に電車に乗る時点で旅が始まっていた。久しぶりの成田空港でいくつ写真を撮ったことか。初の単独海外に心は弾んでいた。

搭乗手続きの緊張感から放たれ、窓際の席でウトウトしながら出発を待った。ぱちっと目を開けて時計を見ると予定時刻より1時間が経っていた。機内アナウンスをうまく聞き取れず、理由はわからないが一時間半後にようやく飛行機が動いた。
上空には夏特有の、もこもこのくっきりした雲がどこまでも広がっていて氷河のよう。きれいだった。

CAたちが、なにか温かいものが入った銀色の包み紙を乗客に配り始めた。香港航空のエコノミークラスはコロナ禍より機内食を取り止めているはずだったが、機内食が配布されて驚いた。

弁当とか買わなくてよかった〜

中身はコッペパンに白い餡が入ったもの。食事というより軽食だし、コンビニでおにぎり2個買ってたけど、温かいものは嬉しい。

高いビルの群れが見えてきた。これがもしや香港なのだろうか。
「マンションがいっぱいあるよ!」と日本語で小さい子の声が聞こえる。
「それではどうか、美しい街香港をお楽しみください」という機長のアナウンスが流れ、香港空港へ到着した。

ここから香港

入国時にパスポートに押すスタンプは撤廃されてきているんだろうか。成田の出国では「スタンプご希望の方→」のような案内があったけど香港空港ではそんなものは見当たらず、カウンターの係員に「スタンプがほしいです」と尋ねても無表情で「ないです」即答だった。まあ、入国できればいいんだ!

ロビーに出るとたくさんの人が入国者のお迎えに来ていて、後ろでダンスパフォーマンスが行われていた。これが手拍子や歓声でなかなか盛り上がっていて自分まで歓迎されている気分になった。

天井の高いロビーは気持ちがよく、スクリーンで滝が流れている。擬似的だけど滝から流れた水が床まで続いているリラックス空間だった。

良いぼんやりスポットだけど早く街に行きたい

香港に於けるICカード「八達通 ( Octopus )」を購入。市内に向かうためエアポートエクスプレスに乗車した。市街地まで2回乗り換えたが、いずれも降りたら目の前に地下鉄乗り場があって、道筋がよくできてるなと思った。

MTR(地下鉄)
地下鉄通路の証明写真機。チャーミングな椅子
 出口のシンボル一覧

深水埗 (Sham Shui Po) 駅で下車。
出口案内に書いてある一覧表を見ると「電腦」という字がたくさんあり「アキハバラ電脳組」という90年代アニメのタイトルがよぎる。これだけ見るとめちゃくちゃ電気街のイメージでディープそう。どこの街でも、地下鉄から地上に出る瞬間は気持ちが高まる。階段の光の向こうはどんなものだろうか。

出口から地上に這い上がったとき、私の前に"香港"が現れた。
おー、と思わず声を出し、立ち止まって街を眺めた。古くて高い建物が視界いっぱいにそびえ立っていて圧倒される。それに見合った賑わう人通り。既に、来てよかったと思う。

写真は宿にチェックインしてからゆっくり撮ろう、あとあと!と思いながらも、いくつかの景色を「まずは」と撮る。

香港のお菓子メーカーGardenの建物、かわいい!
学校…?かわいい!
団地。かわいい!


17時すぎ。宿でチェックインを済ませ、身軽になって街を歩いた。駅の案内表示で見た通り、ここは大型の家電量販店がいくつもある、昔のあきばのようなマニアックな街。布やビーズなどの素材屋もあるらしいので日暮里っぽさも…と、なんでも東京の街に例えてしまうけどそれだけではなく、飲食、青果店、衣料品、漢方…とにかくいろいろな専門店が密集している。各通りに店があるほか、ビルの間の沿道にもテントが並んでいて、売り場に満ちていた。

本場のアメ横


夕食にしよう

まだ明るいのにお腹が空いてきた。時刻は18時半。夕食には少し早いと思ったけど、考えてみれば日本時間では19時半だから空腹になるのも当然だった。目の前に気になる店があるから飛び込もう!

夕食どきの小さな店内で、テーブルはお客さんで埋まっていた。立ち尽くしていると「一位?(一名ですか?)」と聞かれる。既に一人が食事をしている丸いテーブル席に案内され、相席になる。香港ではこれが当たり前だった。メニューは漢字で書いてあるが、麺であること意外はなにもわからない。迷ってしばらく眺めていると目の前の人が食べ終わり、それを店の人が片付けながら何かひとこと発する。注文を聞かれていることがわかった。私はグーグルマップの店情報に載っている美味しそうな料理写真を指差した。店の人には蝦ワンタン麺らしきものを勧められたのでそれにした。

私が求めていた細い手打ち麺!

味が濃そうに見える茶色い粉は海老のパウダーだった。これが相当香り高いのか、料理はずっと海老の風味がする。菜の花のような緑の野菜が一本入っていて、これも美味しい。そして麺の下には食べ応えのある海老ワンタンが4つも出てきた。油の濃さもあるが、あっさりした味のスープと、なによりこの麺の細さよ…猛烈な暑さにしょっぱさとサッパリさを求めている今、細麺はするすると口に運びやすく、スープも伴いやすいため大変良い。

初めて現金を支払い、ありがとうを意味する「唔該(ンゴイ)」を言う。お店の人は最後に「Bye bye」と言う。香港だ。

外はまだ明るく、夕方の黄色っぽい空の下で見る街が妙でよかった。アツアツの中ほっつき歩いていると、青いレモンスライスが載った冷たい飲み物の写真が目を引いた。それと同じものが飲みたいが、なんと言ったらいいものか。メニューの一番上「手打檸檬茶」を注文した。注文に関して質問を2つされたが、さっぱりわからず困惑する。店の人は諦めずに身振り手振りでなにかの量を示してくれている。いっそのこと何もかもお任せしたいが、その言葉すら伝えられない。わからないままそれぞれの回答をイエスイエスと決めて注文が成立した。

家族でお店をやってるっぽい。奥では体力ありそうな男性がなにか作っていて、お釣りをくれたのは10歳ぐらいの男の子。注文を聞いてくれた女性はイケイケな感じで、電話対応しながら外に出たり入ったりして、路肩に停めてある車の上に小さな紙を置いてメモしたり、見応えある働きぶりだった。なんだか海の家のような人の雰囲気。

あとから眺めたレシートに「少冰」「小糖」の字があり、さっき店の人は"氷の量"と"甘さ"について質問していたことがわかった。商品を受け取り、今すぐストローをさして飲み歩きたいところだったが宿に持ち帰った。


うますぎドリンク

ユースホステルの共有スペースでは、みんなそこに元々住んでいるかのような佇まいでビデオ通話をしたり、飯を食べたり、りんごをかじったりしている。私は街で買ってきた大きな飲み物を袋から取り出してようやく飲んだ。

!!

美味い、美味すぎる。
顔まで火照るような暑さで涼を渇望していた体が、この冷たさ、甘さ、檸檬の風味、紅茶の香り、すべてを大歓迎している。ぐいぐいと飲みたいところだが、カフェインに過敏な私は少しずつ味わった。


手打檸檬茶

この飲み物はなんなんだろう。紅茶はミルクティーのように不透明で、ミルクが入っているんだろうか。それに檸檬をぶち込んだという全部のせな発想なんだろうか。

蝦ワンタン麺も、檸檬茶も、今のところすべて「こういうのが欲しかった!」と思わせるフード・ドリンク。これが味な街、香港か。


反省会

宿泊している相部屋のベッドは満室に。みんなどこから来たんだろう。アジア圏のお客さんが多そうだけど、特に誰とも言葉を交わさないから全くわからない。

宿からの景色が、どの時間帯も美しい

ここに来て痛感したことは、私は広東語はもちろん、英語すらなかなか通じない観光客であると思い知らされたことだった。
事前に広東語会話のYouTube動画を見ることを日課として楽しみ、フレーズを色々と覚えたつもりが、瞬発的に会話ができるかはまた別の脳を使うようで、店ではまるでわからなかった。
英語も各所で必要だった。飛行機もそうだし、宿のチェックインではスタッフがなるべく伝わるよう話そうとはしてくれたが、何度も聞き返してしまう。だんだん呆れられてくる様子もわかり、しまいに私はわかったフリをして同意書にサインをする始末だった。聞きたいことがあってもすぐには話せず、スマホで英訳を調べてから受付へ行く…スマホがあるだけ便利なものだが。
そんなことに少し落ち込み、意思疎通がスムーズにできないことの閉鎖感を初めて感じた。海外へ語学留学する人や、旅をする人(自分もしてるけど)、異国で暮らす人、日本で見かける海外の人たちは大抵こういう体験をしているのか。なんてすごいんだろうと思う。

明日は友達と会う予定がある。それに安心するし、楽しみだ。
早く寝ようと思っても、慣れない環境で寝付くまで時間がかかった。

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