入院記 DAY 2

6時になると、どうやら全ての患者に一斉に看護師が様子を見に来て、点滴を取り換えたりするようだ。寝ぼけまなこでそれに応じ、また寝た。

8:30 起床。一瞬「飯食わなきゃ」と思う。次の瞬間に「そうだ食べなくていいんだ」と思い出す。空腹だけど、なんて楽チンなんだろう。必要な栄養や水分や薬は点滴が勝手に運んでくれるし、それがなくなりそうになったら看護師が取り替えてくれる。なんもしないで生きられるのだ…!

富士山は霞んでる。口をゆすいで顔を洗い、各所へ連絡したり、わからないことを看護師に聞いたり、ふらふら歩いたり、景色を確認したりした。色々やったつもりでも、まだ9:30なんだ!まだ10:30なんだ!と驚く。普段の休日は、まだ飯食ってねーとか、13時だしどっか行こうかなとか、もう16時?とか…「まだ◯◯」の対象が、時間ではなく行動に変わる。それに追われながら時計が思わぬはやさで進む。一体いつもの休日と、入院での休養の違いはなんなんだろうか。ここでは、時間が本当にゆっくり流れている。社会から隔絶されている。

富士山、首都高、マンションの部屋ですごす人、東京タワー、新宿、蛇行する川、東京スカイツリー…あらゆるものが見えて、下界を見下ろすような気分だ。

食堂(コロナで食堂として機能してない食堂)でぼーっとしてたら、主治医の先生が様子を見にきた。座ったまま触診をしてもらったが、痛みの感じ方は昨日よりはるかに弱い。腸を休ませての点滴抗生剤すごい。ちゃんと良くなってる!

何も食べてなけりゃ歯を磨く必要はないのか?と思ったが、何も食べてないときは殺菌作用のある唾液もたくさん出ないから、そんなときこそ歯磨きをした方がいいらしい。調べてよかった。


お日さんの光が、白い部屋いっぱい淡く明るくさせて、その景色にうとうとする。

13:45 尿意で起きる。水も飲んでないのに、この点滴で水分はきっちり体に入り込んでいる。血管の長さは地球一週半もあるのに、入ったものが数時間もしないうちに行き渡るのだから、人体は不思議だ。

14:00 日差しがすごくて部屋が暑くなる。景色を見に行くと、山々は霞んでいるがビル群はパキッと青々としててかっこいい!これぞ東京って感じ。東京という都市に住んでいながら、東京カッケーって思う。一つぐらいこれぐらい高いビルが広範囲に立ち並ぶ都市があってもいい。ただし既にあればひとつでいい。そして、これがあるなら不用意に増やさなくていい。まだ高いビルやタワーを建てる競争をしてる。まあ、どれぐらい高いのができるのか、ちょっと気になるけど。

妹と通話。

「暇で電話した。どう?今大丈夫?」
「こっちは忙しいんだよ〜」
「何?ゲームでも」
「いま眠い」
「あそうなの」
「寝てた」

妹が行ってたカフェのこと、ドライカレーが美味そうだったこと、内科でジャンプしたことを話した。

夕方。西陽がきれい。目を離している隙にすぐ落ちる。兄が寝巻きなどの物資を届けてくれた。寝巻き、そして何より、Macbookが来たことも大歓迎。

洗濯をする。その間に食事の時間があり、炊き込みご飯のようなとても良い匂いがふんわりしてくる。ああ、食べれないけれど、幸せな時間だ。洗濯や乾燥を終えた頃に看護師にシャワーを希望すると、シャワー時間終了まであと10分とのことで、それは諦めた。1日がめちゃくちゃ長いと思ったけど、消灯時間も考えると、1日を終えるのも早いことに気づいた。

看護師から、明日の検査などの予定を伝えられる。"採血"の横にさらっと赤字で5:00〜6:00と書いてある。

「5時って、朝ですか?」
「そうです。朝、部屋に伺います。ちょっと早いんですけど」

私には予定もくそもないため本当になんでも構わないが、いやしかし早いと思った。でも、看護師は24時間体制だから…

2日目晩にして、相部屋全員のオナラの音を知る。

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