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「弱い人を愛せる人」は「弱くなった自分を愛せる人」だと思っているなり―メンタリストDaiGo氏の発言について思うこと

先日、「ホームレスの人や生活保護利用者の命は要らない」という某メンタリスト氏の炎上が話題になりました。絶対的にダメな発言なんですが、いっぽうでぶっちゃけ、似たようなことを思っている人は少なくないと思うんですよね。

私も若いころだったら同じようなことを思ったかもしれないです。

国家運営ゲームとか好きなんで、その観点から見ると役立たない人材は斬首だし、富国強兵以外の非効率な税金の使い道はなるべくカットしたいタイプなんで。

さらにいうと、僕は親が田舎の小金持ちだったんで、金銭面で苦労したことなかったんですよ。好きな大学にも行かせてもらいましたし。

だから、ホームレスの人や生活保護利用者、に対してはぶっちゃけ「自分とは違う人達」くらいに思ってました。だから、そういうときの自分に「命はみんな平等」とだけ言っても通用しないだろうなあと考えてこの記事を書いています。

私の意識が変わったのは、大学卒業間際、母親がガンを患ってからですね。「障害者は他人事」「介護は別世界」「死は遠い世界の話」という。それがまったくの間違いだということに気づいたんですよね。

昨日まで自分とはぜんぜん関係ない世界だと思っていた「車いすの人」が急に自宅にやってまいりました。

そこではじめて、公共施設のバリアフリーのありがたさと、ちょーっとした段差のつらさを知りました。駐車場の車いすエリアに停める健常者の車を見てマジムカついたりもしました。

いかにそれまで、弱者への想像力に欠け、解像度が低い状態だったのを思い知らされたのです。

ただまあ、そういうもんですよね。そういうのは、なってみないとわからんもんです。私も、いまだに想像できていないことは多々あると思います。

とはいえ、誰でもすぐに「弱者」の側に落ちるんだよということは万人が身構えていても損はないかなと思います。ぼくも油断したらホームレスになると思って生きています。下手したら明日にでも身障者にもなるでしょうね。そんな緊張感はありますよ。

そういえば、先週の夏休みを利用して。次女の障害者手帳を取得してきました。彼女は言葉の遅れがありまして、そういう特性のもとに生きていくことを余儀なくされています。

私はそれについてあんまり気にしてなかったんですが、ちょうど近日、子どもが2歳になったばかりの元同僚と話した時に「うちの子、たくさんしゃべってくれて良かった。子どもの足が動かなくても愛せるけど、発達障害だけはどうしようもないからね」と言われて、ちょっと「うっ」って思っちゃった。(彼はわが家の事情は知らないのでしゃーないけど)

「そっちとこっち」で分ける生き方を久しぶりに見た。

そりゃね。健康で、ちゃんと教育を受けられて、頭も悪くなくてお金があって、税金を納める側で…とかの立場だと、やっぱり邪魔なものは邪魔に思えちゃうのはわからんでもないけど。

あるいはその全てを持ってない人が、下を見た時に、視線が冷たくなっちゃうのは理解するけど。

でもやっぱり、「ふつう」ってのはめちゃくちゃ危ないバランスの上に成り立った奇跡的なことだと思うんですよねえ。

自分ひとりで稼いでるツラしてても、いろんな人に支えられていまここに立っているんだよというのはちょっと考えればわかること。

交通事故イッパツですべて吹き飛ぶようなちょろいもんの上に立ってるだけなんすよね…。

いま若くて、健康で、社会に(税金などで)貢献していて、頭がよくて、異性にモテてたら、そりゃ無敵感はあるでしょうよ。

でもそんな人もいつか必ず年をとるし、身体を壊すし、社会と関わらなくなるし、頭もボケるし、容姿も衰えると思うんですよ。

そんなときに、まわりに「命は要らない」なんて思われたら辛いじゃないですか。

そしてそれ以上に、自分で自分のことを「無価値」だなんて、自分の思想で苦しめたらつらいじゃないですか。

だから、他人を大事に思うことはすなわち、自分を大事にしてあげることなんだと思いまするよ。

いわゆる「弱い人を愛せる人」は「弱くなった自分を愛せる人」でもあります。

どんなに最良の選択肢を選び続けても、笑いっぱなしの人生なんてないんでね。

泣きそうになったときに、自分で自分をいじめないでいられるように、困った人を助けたり、せめて逃げ道をふさがないようにする甘さは持ってようぜといったところ。

それをいわゆる、「優しさ」っていうんだと思うんです。

以上、よろしくお願いします。


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