人々は「ワニくん」の何に泣き、「ワニの件」の何に冷めたのか
お疲れ様です、pontaです。
ワニの件について。
ネット上で昨日まで「ワニくん」と呼びならわされてた彼が、今日はすでに「ワニの件」でトレンド入りしてしまったことが、このコンテンツの戦略の成功と失敗を物語っているといえるのではないでしょうか。
まず最初にこれだけは言っておきたいのですが「100日後に死ぬワニ」は素晴らしい作品です。
なんといってもアイディアの勝利で、死ぬ日を表題にすることで、そしてそれを一日一日減らしていくことで、毎日のささいな日常を、たまらなくかけがえのないものに思わせる、非常に革新的なフォーマットでした。
そしてこのマンガのすごいところは、このマンガを読んでいる我らもまた100日後に生きているかわからないという哲学的な問いをつきつけ続けられることです。
ふだん忘れている死の存在。「死ぬのに失敗した人はいない」という厳然たる事実、大切な人をいつ失うかわからないという未来を、このワニマンガは我らに思い出させてくれたのです。
「100日後に死ぬワニ」は作品の評価が上がるのにあわせ、しぜん、作者への賞賛も湧き上がってきました。
作者の人生や死生観に関心が集まり、作者の友人との思い出を描いたものだという考察も現れます。
https://twitter.com/elorap/status/1240951766008467456
そして3/20。ワニくんが死ぬ日。SNS上で大きなムーブメントがおきました。
200万いいねが集まり、その死を誰もが悼みました。
「まあ事故にあって死ぬだろうな」という大方の予想通りにワニくんは事故で死ぬんですが、これ自体は素晴らしいです。
大きなムーブメントにペースを乱されず、奇をてらわず、ちゃんと作品として期待値通りに着地することは、できそうでじつは難しいことです。おみごと。
ここまでは完ぺきでした。
しかし、死の直後がいけない。
間髪おかずに映画化発表、追悼ショップ、PV楽曲まで、続々と発表されます。この手際の良さにネット民がドン引きします。
再生数を超えるいいねがつけられたプロモも発掘されます。(削除済み)
これまで、たったひとりの天才的なクリエイターの想いと努力でつづっられてきたという物語「こみ」でコンテンツを愛していた人たちは、さーっと気持ちが引きました。
頭にわっかのついたワニくんのキーホルダー5000円ってなんだよ。
誤解しないで欲しいのですが、クリエイターが利益を得ることは誰も批判していません。彼がその才能にふさわしい正当な報酬を得て、より大きな仕事を手掛けることを応援しない人はいません。書籍化。すばらしいじゃないですか。
ビジネスけっこう。人はご飯を食べて生きているのです。無料で楽しんでいる人たちがごちゃごちゃいうなと。
でも余韻がなさすぎるだろっていう。開きかけた財布もひっこむわ。
これまでワニくんを友達のように思い、いとおしんできた人々が「いやワニくんはビジネスです。チームでやってました」という身もふたもない、当たり前の事実を突きつけられて、さすがに冷めずにはいられません。
「いやそういうの当たり前じゃんwwビジネスの何が悪いの」とシニカルに言う側の人もいるかと思いますが、本来ワニくんはそういうところから離れたナイーブさがウりのコンテンツです。
「余韻を楽しみたかった人たちがコアファン(カモ)になるはずだった」だけに、このデリカシーのない拙速さは自分の強みを消すムーブと言わざるを得ません。
金の卵を産み続けるはずだったニワトリが、いやワニがほんとうに死んじまったじゃねーか。
ここで自己批判すると「じゃあお前はこんなにすごいムーブを起こせるのか」とか「電車男のころから、いまさらじゃん」といったところになります。
まあ、夢中になったあとに冷めちゃった自分はバカだなあと思うんですが、「踊らされてバカだ」と言われてお金を落とす気にならねえよといったところであります。
もうちょっとなんとかならなかったんですかねえ。
せめて亡くなった瞬間に「一週間後にお葬式」とかさ。
「儲けるタイミングは今しかない」ってんで告知を急ぎ、利益を最大化させようとしたら長い目でみて儲けそこなった感じ。
それでいいのかっていうね。
惜しい。「ワニくんグッズをつけててオシャレ」な世界観はもうないんだよ。
RIPワニくん。楽しかったです。死因が電通の炎上による火葬とは予想もしませんでした。
以上、よろしくお願いします。
追記:作者様は電通のかかわりはきっぱり否定されました。大変失礼しました。全員が「善意で動いていた」としてなぜこんなことに。
素朴な疑問として、なぜワニくんが死ぬ前にSHOPを開かなかったのか。
死んだその瞬間に追悼SHOPを開いたのか。95日目くらいに「映画化の話が持ち上がってますー」と言わなかったのか…。
全員が良かれと思ってやったとして、タイミングが実に最悪だったなあと思います。
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