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解けない魔法にかかったワケ。


 ひとつ前の記事でしれっと「就職活動をしている」と書いたのだが、就職活動で必要になってくるのが「自己PR」などといった自己分析を必要とする文章の執筆である。

 これをするには、過去のあらゆる経験を思い出して、解析していく必要があると思う。特に私は全国レベルの部活動に所属していたとか、学校で片手で数えられる順位の成績を取っていたとか、分かりやすい功績はないので、小さなひとつひとつの行動について、「どう考えていたのか」「どう動いたか」みたいな所をじっくり掘り下げて説得力のある話にしていかなくてはならない。

 そうなると、色々やりきれない思いをした出来事も、その感情もいろいろと思い出すわけで。センチメンタルな気持が再燃して、ため息まじりに何かをぼやきたくなってTwitterとにらめっこを始めてしまう。


 でも、悪い事やネガティブな気持ばかりじゃなくて、それを経たからこそたくさん「救われたな」「幸せだな」と思えた瞬間に出会えた。


 そのひとつであるTrignalの思い出について、ゆっくり書き記しておきたいなと思う。



 Trignalというのは、声優の木村良平さん、代永翼さん、江口拓也さんから成るユニットの名前である。お三方とも、今をときめく超売れっ子声優さんで、いわゆる「乙女向け作品」界隈で彼らを知らない方はいないのではないかと思う。特に、木村良平さんは『満月をさがして』の英知くん役でお名前を存じていて、私がこの界隈に足を突っ込んですぐの頃からいろんな作品でお芝居を拝聴していた。

 なので、Trignalという存在を知るにも時間はかからなかったし、曲を聴いてみようと思うに至るまでも早かった。キャラソンを拝聴していても、お三方の歌がとても好きだったから。

 そんなTrignalが九州初上陸果たすこととなったのが、2016年7月のこと。少しずついろんなライブやイベントに足を運ぶようになっていた頃で、大人気のお三方のライブなのに一般でチケットが取れることに大変驚きながら、チケットを購入したのを覚えている。初めて行く会場での初めてのTrignalのライブ。最新ミニアルバムを聴きこみながら、本番を楽しみに待っていた時のこと。


 当時付き合っていた相手から絶交され、その相手と一緒に所属していたサークル・バンドも上手く行かなくなって、サークル自体も辞めたのだ。

 フレラジDX風に言うなら、好きな人が仲良しグループにいたので、そのグループから離れ、友だちも好きな人も失くしたことは勿論、叶えたかった夢も志半ばで失いました、という状態である。

 私がどんな思いでサークルいたのか云々は長くなるのでまたの機会にしたいと思うが、サークル以外に交友関係がほとんどなかった私にとって、その喪失感はあまりにも大きかった。特に、人間関係のために自分が持っていた、掴みかけていた明確な目標まで捨ててしまった事に対する不安や後悔がとてつもなく大きかった。


 これがライブ本番の数日前の出来事だったのだから、当日予定していた時間にも目を泣きはらしたまま家を出られなかったとしても、仕方ないと思う。本当にお昼頃まで、本気で行くのをやめようかと思っていた。こんな顔で、気分で、ライブに行って何になるのだろうかと思っていた。

 けれど、チケットは約束なんだという天くんの言葉を思い出したり、キャンセルしても戻ってこないホテル代の事を思って、ようやく重い腰を上げて会場へ向かう事にした。物販にはすでに長蛇の列ができていたけど、最悪パンフレットがあれば良いと思っていたから、最後尾に並んでじっと順番を待っていた。待っている間も、ライブの緊張ではなく不安と後悔でそわそわしていた。本当に険しくて情けない顔をして並んでいただろうと思う。


 そんな気持ちがようやく溶けたのが、会場に入った時だった。その時は一階席の最後列だったけれど、ハコが良くてしっかりステージが見えていた。「SECRET GARAGE」というツアータイトルをそのまま形にしたようなセットを見た時、これは楽しそうだ、と初めてわくわくしたのだ。

 そしていよいよ、ライブが始まって三人の姿が見えた時。私はわぁっと心の底から喜んだ。嬉しくて、楽しくて、笑っていた。その時、「あぁ、私は笑いたかったんだ」とようやく気付いて、切なくなって泣いた。だけど、泣いている暇なんてないくらい、Trignalのステージはポップで明るくてハッピーに溢れていて。そこからはめいっぱい、楽しい気持ちを返したいばっかりだった。ペンライトも持ってなくて、聴きこんでない曲もたくさんあって、それでもやっぱり楽しくて、その笑顔を三人に返したい気持ちでいっぱいで、ずっと手を振っていた。

 あの幸せな時間がなかったら、私はずっと立ち直れないままだったんだろうな、と思う。笑いたいという気持ちを思い出させてくれて、めいっぱい笑顔になれる時間をくれたのが、Trignalの三人だった。アンコールですぐ横の扉から江口さんが出てきてびっくりしたこととか、斜め前方で良平さんがファンの方にがっちり囲まれて歌ってらしたこととか、忘れられない思い出がずっと私の胸には残っていて、セトリをリピートするのが私の「元気が出るおまじない」になっていた。


 そんなTrignalがまた福岡へ来てくれると聞いたら、それは行きたくなってしまっても仕方ないと思う。アイナナライブとダイナーライブの最速抽選と被ってチケット代がかさばる時期だったとしても、一般で買えると言われて買わずにはいられなかった。今回は三階席の最後列という、前回よりもはるかに遠い席になってしまったけれど、ハコはaikoライブで通い詰めている絶対信頼のサンパレスだし、何よりあの三人のステージがとても楽しいことを知っていたから、なんの不安もなかった。むしろ、滑り込みでチケットが取れてセーフだったと安堵したものだ。

 だから、今回は持参したペンライトをめいっぱい活用して、ひたすら楽しんでいたのだ。前回から約2年が空いて、リリースされたCDも全部購入して追いかけていたから、知らない曲の方が圧倒的に少ない。知らない曲ばかりだった前回よりも、楽しさと嬉しさが割増だった。

 そして、あっという間の楽しい時間の後で、アンコールがやってきたのである。私は彼らのサービス精神に感服した。前回のことがあったので、もしかすると…とは思っていたが、本当に三階まで来てくれたのだから。三階席中央の通路をこちらへ向かってくる江口さんを見ながら、その距離に感動しつつめいっぱい楽しんでいたのだけど。

 その後、である。

 江口さんに続いてやってきた良平さんが、私の真横の階段を上ってきてくださったのは。


 正直、びっくりしすぎて情けない顔をしていたと思う。口元を抑えた手を下せなかった。目の前に良平さんがいて、しっかり目が合っているという事実に、驚きでいっぱいだった。驚きしかなかった。

 3月のBig Bang Fes.で前から4列目というステージの近さに緊張していた私は、まさか一般チケットの三階最後列でこんな出来事があるなんて思っていなかった。こんなこと人生でもう一度あるのかわからない。そんな思いが今でもしている。


 こうして、「SECRET GARAGE」で”解けない夏の魔法”にかけられた私は、約2年を経た「Jack in The BOX」で”決して解けない魔法”にかかってしまったのである。

 そして、もやもやっと「箱推し…」と誤魔化していた頃を卒業し、「みんな好きだけどやっぱり赤推し!」と言う決意をした。


 そろそろ、公式ファンクラブに入ってもいい頃だと思っている。5周年ライブにもお邪魔したいなぁ。

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