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ナノシートを活用した革新的なバイオセンサーの開発

東京工業大学の早水裕平准教授と弘前大学の関貴一助教らによる研究チームが、一般的なバイオセンサーよりもはるかに高感度な新型センサーを開発しました。その秘訣は、わずか0.5ナノメートル(ナノは10億分の1)の厚さを持つ素材「ナノシート」を用いたことにあります。この極薄のシートにはペプチドが広がっており、それによって検出時の電気的な変化をシートに伝えることが可能となっています。この技術によって、麻薬物質の探知、災害救助、病気の診断など、幅広い分野での活用が可能となると予想されます。


高感度なセンサーの開発

この高感度なセンサーは、二硫化モリブデンという物質をシート状に加工し、その上にアミノ酸が10個ほど連なったペプチドが1ナノメートルの厚さで広がることで実現されました。このペプチドの一部には、特定のたんぱく質と結合する分子が付けられています。このたんぱく質を含む液をシートに垂らすと、シートの電気的な状態が変化し、それによってセンサーがその存在を検出することが可能となります。

驚くべきことに、このセンサーはたんぱく質の濃度が1フェムト(フェムトは1000兆分の1)モル濃度であっても検出することができました。これは、東京ドームを満杯にする水量に約0.4ミリグラムだけ溶かした砂糖を検出できるレベルに相当します。

ナノシートの利点

通常の半導体を用いたバイオセンサーでは、表面に存在する酸化膜が微量の物質の信号強化を妨げ、検出が難しくなるという課題がありました。しかし、ナノシートにはこのような酸化膜が存在しないため、より高感度な検出が可能となります。

幅広い応用可能性

ペプチドは目標とする物質を捉え、それをシートに結びつける役割を果たします。また、アミノ酸の配列を工夫し、加熱などの特別な処理を必要とせずにシート上に広がらせることができます。これにより、製造コストを大幅に抑えることが可能となります。

このセンサーの応用可能性は非常に広範で、麻薬や爆発物の探知、災害時の救助活動、病気の診断などに利用できます。また、バイオセンサーとして、人体から出る特定の物質を検出することで、早期治療や診断につながる可能性があります。

早水准教授は、「今後はナノシートに様々な分子をつけることを試し、将来的には人間と同様に匂いを判別できるセンサーを実現したい」と述べています。この画期的な研究は、センサー技術の新たな可能性を提示し、未来の科学技術の進化に対する期待を高めています。

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