「君たちはどう生きるか」北米公開。
ジブリ最新作の映画「君たちはどう生きるか」がいよいよ明日12月8日(金)に北米で公開される。
日本での評価が別れたジブリの「君たちはどう生きるか」がアメリカや世界でどう評価されるのか、とても楽しみ。
ちなみに現時点での評価はかなり上々で、韓国やフランスで高い動員数を記録しているし、ニューヨーク映画批評家協会賞ではアニメーション賞を受賞しています。(参考リンクは末尾にあります)
この作品は、いわゆる子供が見て楽しい典型的な「アニメ」というものを逸脱しているから、日本人より芸術に造詣が深い海外の人たちからのほうが評価が高いのではないかと想像しています。
大衆映画ではなく、もはや芸術作品だったと思うのだよね。
もちろん悪く言おうと思えばいくらでも言えるし、いわゆる子供が楽しめる映画を期待してチケットを買った人が憤慨するのも、おかしくない話なんですが。
ただね、歳を重ねるって、そういうことだったりするじゃないですか。
若いときはに勢いよくまっすぐ信じてた未来がなくて絶望したり、まったく予期してなかったことが起きて幸せに満ちたり。
あらゆる知識も経験も積み重なっているけど、すべてが思い通りになるわけではなくて、脳の中はどこか整理がつかずカオスだし、自己矛盾だってたくさん抱えてますよね。
そういうものを作品の中に乱暴なまでにそのまま表現して、幾重にも解釈できるレイヤーとしている構造がお見事だし、それによって商業的な「狙い」が削ぎ落とされている点に芸術性の高さを感じる。
そしてもう1点、ストーリー展開をすべて横に置いたとしても、キャラクターの1つ1つの動きや振る舞いだけでも他のアニメーションとは一線を画すリアリズムと躍動感がある。
あらゆることを加味したとき、これが宮崎駿監督の過去最高傑作だ!とは言い切れないかもしれないけれど、ここまで巨匠になったのにちゃんと「新作」で、ちゃんと「遺言」だったのは、凄いこと。深く深く胸に響いた。
「俺はこう生きた。君たちはどう生きる?」
「この世界は、色々あるけど悪くない。だから、生きるんだよ、懸命に。」
そんな宮崎監督の声が、静かに、だけど何度も聞こえてくるようだった。
かつて「となりのトトロ」が大ヒットしたあと、監督はこんなことをおっしゃった。
「『トトロを何十回も見ました!』と言われるが、そんな暇があったら外に出て森で遊んでほしい」
この作品に対しても、こんな風におっしゃるかもしれない。
「俺はこう生きた。わかったら何回も映画ばっかり見てないで、ちゃんと生きろ。」
でもね宮さん。
生きるために、見返させてください。ちゃんと生きるから。ちゃんと自分なりに、背中を追いかけますから。日本人として。誇りを持って、生きていきますから。
子供時代から20代にかけて何十回見たかわからない「となりのトトロ」に代わり、人生後半にさしかかった私は、この作品を何度も見返すことになると思う。
80代でこんなに素晴らしい作品をこの世に残してくれた宮崎監督に感謝しかない。
この作品が世界じゅうに広がって、たくさんの人の心に、温かい生命力の火をともしてくれますように。
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