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「ゆるいフットボール」

2021年2月

僕の家族は重大な問題に直面していた。

詳しくは書けないが、家族みんなの生活に関わる事でとても精神的に苦しかった。

何をしていても落ち着かなかった。

今まで楽しめていた些細な事にも、興味がなくなっていった。

それでも深夜にマンチェスターシティの試合を見るのは辞めなかった。

フォーデンとペップが抱き合うゴールシーンを見て恍惚としたりした。

Twitterを始めたのはちょうどその時期。

試合の結果についての感想を書いたり、選手の怪我を心配するようなツイートをした。

自分の抱えてるどうしようもない問題から、フットボールは距離を取らせてくれる気がした。

僕もわかっている。

重大な問題が起きてるならまずはそっちに全身全霊で向き合うべきだ。

でも四六時中そんな事を考える事には耐えられそうになかった。

フットボールの事を考えてる時だけ、その現実から別の場所にいけたように思う。

昨今ではフットボールの話をすると、中東企業のクラブ買収、人種差別問題、スポーツハラスメントなど深刻な問題がつきまとう。

そんな問題を差し置いて、応援してるクラブの優勝を喜んでいると袋叩きに会うこともある。

でもフットボールには、スポーツには、厳しい工場労働に晒された人たちに辛い現実から距離を取らせてくれる機能もあったはずだ。



僕の会ったマンチェスターのフットボールファン達は、仕事や社会の話をするよりファーデンのスーパーゴールの感想をパブで話すのが好きだった。

前にも書いたように僕は夢想的に、「子供」ようにマンチェスターを目指した。

でもそんな甘く、ゆるくフットボールが好きだった事で、僕は救われた。