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”観光資源の活用”について

”観光資源”"地域の魅力"というパワーワード

恐らく1700ある自治体の中で、”観光資源”や"地域の魅力"という言葉を使ったことのない自治体はほとんどないんじゃないでしょうか。
コロナ禍で改めて見直そうという動きが出てきた分野でもあり、まさに巷に溢れています。

ただ、僕は以前から「観光資源の活用」「地域の魅力の発信」という言葉をそもそもあまり好きではありません。
なんというか、これらの言葉には少なからず

「魅力はあるんだよ!ただ活用し切れていないし、発信できていないから人が来ないだけなんだ。」

というニュアンスが含まれるためです。
つまり、そもそも「魅力は既にある」ということが前提になっています。

多くの自治体が掲げる総合計画にも、「豊かな自然」「あたたかいまち」「美味しい食べ物」「地域の伝統」そういった言葉が並んでいますね。
これらを見るたびに、いつも2つのことを考えます。
「それって本当にそう思ってるの?」ということと、
「それって誰にとっての"魅力"なの?」ということです。

”観光資源”と言われる最たる例:桜

本当にそう思ってる?

我ながらテキストにすると嫌な見方ですね(笑)
率直な感想なので批判は勘弁してほしいですが、行政が作る文章や議会でのやりとりで多く出てくる”観光資源”や"地域の魅力"。
例えば、古くからある神社とか山間の奥まった位置にある小さな滝とか渓流とかを指して、「こういった豊かな自然や文化財などを観光資源として有効活用して…」とかよく聞きますが、

そう言っている行政職員や議員さん達、本気でそう思ってますか?
街中の顔見知りとする他愛無い会話や、職員同士の会話の中では「ウチは特に何も無いしねぇ」とか言ってませんか?
言葉にするのが難しいですが、「なんとなくこれって観光資源っぽくない?」みたいな感覚で使っている人が多い気がしてなりません。

「別にいいじゃん。それぞれがそう思っているなら」という言も最もです。確かに個人がどう思うか、何に価値を置くか、について他人がどうこういう話ではありません。
しかし、こと観光行政においては、次の2つ目に繋がる話として、しっかり考えなければならない課題、問題になります。

誰にとっての”魅力”か

これは、日本国内貧乏一人旅をしまくっていた経験と、”ヨソモノ”として南相馬市にお邪魔している立場から、ずっと感じていたことですが、地域の方々が言う”魅力”と、外から来訪する立場として感じる”魅力”に大きなギャップがある場合があります。
地域を問わず、観光施策がうまく回っていないように感じる地域は往々にしてこのことが原因なんじゃないかと思っています。

花岡は以前からオンラインのピッチイベントなどで
「誰のための観光施策か、行政は改めて考え直した方がいいと思う」的なことを言ってきましたが、まさしく自分の言いたいことを、先日まちづくりの第一人者”狂犬”木下斉さんがnoteに書かれていました。(注:有料記事です)

他人の記事で自分の言いたいことを代弁してもらうのは心苦しいですが…

要するに、「1700全ての自治体が敵!」とまでは言わないですが、少なくとも上で書いたような「豊かな自然」とか「美味しい食べ物」ってどこでも謳っていることであって、「なぜそこじゃなければならないのか」という理由にはならない、というのは至極当たり前のことです。

観光行政の只中にいる者として中々言いづらいところではありますが、多くの自治体で「いや、それで人呼べる?」という総花的なアイテムを「観光資源」としてしまうことが多いように感じますし、そう感じている職員もいるんじゃないでしょうか?

このあたり、国内様々な地域に関わっている地域力創造アドバイザー近藤威志さんからも口癖のように「要は誰にとって価値があるものかということであって、地域側が”これが地域資源でー”ということに直接的にはあまり意味がない。」という主旨のことを言われています。


何故そうなってしまうのか

僕個人的には要因の多くは「結局観光行政として何をゴールにして、何を手段とするかが明確じゃない」ということなのかなと思ってます。

「地域の賑わいの創出ー」とか「交流人口を増やしてー」とはいうものの、「観光事業に○○円投資したリターンとしてどの程度の経済効果を見込むか」「どのくらいの来訪者増を目指すのか」といったKGI、そして「それを達成するためにAの事業を○回、加えてBを○回」といったKPIがないと、「これまで続けてきたし、観光協会には昨年と同額の補助金を出して、イベントの協賛金も予算化して、、」で1年が終わると言う「ザ・お役所仕事」になってしまうんじゃないかなーと。

そんな業務に対して、市中の人々や飲食・宿泊に関わる方から感謝と称賛が送られるとは思えないですし、そのことに行政職員はもっと危機感を持つべきだと思うのです。(自戒を込めて)

こんな景色探せば南相馬市にだってありますよ(多分)


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