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言うことなぁ~す!な休日 #キナリ杯

私はゲームが好きだ。
娯楽の少ない田舎で、ファミコンやスーファミと共に育った。

カセットをふーふーする手つきは非常になめらかで無駄がないと自負している。
時には冒険の書が消え、自分の力ではどうにもできないことがあるのだと知った。理不尽ってこういうことを言うのね。
何を言っているか分からない?そんな人も大丈夫、本題には必要じゃない情報です。

ニンテンドースイッチをご存じだろうか。
テレビにつなげて据置型ゲーム機として扱うもよし。
手元で画面を見ながらの携帯型ゲーム機として扱うもよし。という夢のようなゲーム機である。
小学生の私が見たら泣いて喜ぶに違いない。

そんな素晴らしいスイッチが我が家にやって来たのは私が妊娠中の頃。もろもろの事情でお家時間が伸びたので購入することにしたのだ。
当時もスイッチは品薄で、買いに行った電気屋で最後の1台だった。
ぎりぎりセーフ!ようこそおいでくださいました!

そうやって歓待したスイッチだが、娘が生まれてからしばらくは埃をかぶっていた。娘がちょっとばかり通院が必要な子どもだと判明して、ゲームする気持ちになれなかったから。がしかし、今年に入ってから徐々に使用頻度が上がっている。
ゲームができるぐらいの心理状態に回復したということで、単純に嬉しい。

少し前に夫と相談してニンテンドースイッチオンラインに加入したばかり。有料だけどこれでいろんなゲームで世界中の人と遊べるうえ、ファミコン、スーファミのいろんなソフトで遊べる。


さてようやく本題に入ろう。そう、今からやっと本題。

皆さま、ぷよぷよってご存じです? 

赤や黄色のスライムが落ちてくる大人気パズルゲームのアレ。
ちなみに私は小学生の頃、友人相手に負けどおしだった苦い思い出がある。
何しろ連鎖の組み立て方を知らなかったし、適当に積み上げては消す、といった戦法をとったのですぐに盤面が埋まった。ばたんきゅ~。

連休中のある日、娘が昼寝を始めたのでスイッチを手に取った。
スーパーファミコンオンラインでぷよぷよ通を選択。目に入ったキャラクターの絵が懐かしかったから。
勝てた試しがないんだよね、と夫に言うと意外そうに驚かれた。
多分だが、夫はここでひそかに決めていたに違いない。「安心しろ、俺がお前を強くしてやる…!」みたいな感じに。

その日敵と対戦したが、いわゆるぼろ負け。余裕を持って勝利できたのは骸骨相手のみという戦績だった。お茶ぁ~。
でも昔と違って2連鎖ぐらいなら組めた。ふふん。これが大人の力よ。
夫にバトンタッチしたらばよえ~んが3回か4回続いてた。

えっえっ。何今の何連鎖なの?

くいついた私に夫は嬉しそうに連鎖について実際にプレイしながら説明してくれた。
難解すぎてよく分からない。けれど私はその日1つだけしっかりと胸に刻んだ。

「3つだけ集めて、あえてそれ以上揃えない」

分からないなりにその教えを実行すると、まぐれにも3連鎖まで出せるようになっていた。まぐれだけど。何一つ狙ってないけど。


また別の日。
娘が昼寝を始めたのを確認してすぐにスイッチを起動した。
3連鎖はできるけどまぐれだし、なんだかすっきりしない。
夫に頼んで図解してもらう。(連鎖についての説明はゲームでも見れるらしい、知らなかった…)
夫が色鉛筆で色分けまでして丁寧に説明してくれて、初めてなんとなく理解した。

OK分かった!さてやってみよう、と頑張るもののいきなりそう上手くはいかない。
だって欲しい色のぷよが全然こない。
来たとしても想定外の色の取り合わせでやって来たりする。

青おまっ、お前今来るんじゃない!

連鎖の大事なスタート場所を己でふさぎ、何も始まらないことが多々あった。

何度も何度も負けを繰り返したが、何日かすると徐々に安定して3連鎖を組めるようになった。
練習相手をしてくれたのは夫だ。
夫は12~13連鎖ほど組むので時間がかかる。私が連鎖を組めるよう待ってくれていると言い換えてもいい。

敵と違ってちまちまと攻撃してこないので気持ちが楽だ。たまに夫が先に連鎖を完成して打って来て、画面上に王冠かぶったおじゃまぷよが占拠することになったけれど。
王冠かぶったおじゃまぷよなんて太刀打ちできない。死を待つ時間がそこにあった。



余裕綽々の夫が心底憎らしい。3連鎖できたと喜ぶ私を「上手上手」とあからさまにおだててくるのもまた。

ちくしょうもっと上手に連鎖組んでやるからもっと褒めろよな。

私は豚ではないので木には登らないが、ぷよぷよの連鎖の道を突き進むのだ。

かくして夫のえげつない大連鎖に幾度となく沈みながらも、私はとうとう5連鎖を組めるようになっていた。まぐれと落ちてくるぷよの色の取り合わせによっては6~7連鎖まで組める。

そして気づいてしまった。

ぷよぷよで勝つのに、何も12連鎖は必要ない。5連鎖でも十分やれるのでは、と。
(タイミングを見計らわないと逆転されるけど)
事実夫との対戦成績はかなり良い数字になった。5連鎖した後に畳みかけるようにして3連鎖を組めれば、高確率で勝てるようになったからだ。

連鎖にこだわるタイプが相手なら、私は勝てるのでは…?

そう調子に乗った私は、連鎖を組んで相手を倒したい!と塔に向かうことにした。サタンとまではいかなくても、塔の3階ぐらいまでは進めるのでは、と思いながら。
そして生まれて初めて2階に行ったものの大敗を喫した。敵は夫とは違いちょこちょこと攻撃してくるのだ。おじゃまぷよが「そこには落ちんといてぇ!」というところ目掛けて落ちてくる。

憎い。このシステムを作ったエンジニアが心から憎い…。でも面白いぞ!ふはは、やはり勝負とはこうでなければな!

サタンより魔王らしいんじゃない、と言われながらも私は夫を相手にぷよぷよに打ち込んだ。勿論、娘が寝た後の夜にも。
ゲームは1日1時間まで、と今後子どもに言わなきゃいけない場面が来たらどの面下げて言えば良いのだろう?

それはその時考えることにして。とにかくまずは5連鎖を最短で組めるようになろう。夫の盤面をひたすらおじゃまぷよで埋めた。

数日後。
よし、これならば!と私は単身再び塔に向かった。
敵は強い。油断は一瞬もできない。手に汗握る死闘を繰り広げた。
塔の3階に進むためには手段を選ばなかった。
2連鎖を繰り返してくるようなタイプはこちらの余裕がなくなるので選ばない。積み上げて積み上げて連鎖を狙うタイプを相手に勝負をしかけた。

運も味方した。欲しい時に欲しい色が来た。おじゃまぷよさえ「え。そこでいいの?いやー、気を遣ってもらってすみませんね」というぐらい全然おじゃまをしてこなかった。
ここのところ連日出勤だったもんね、疲れてたのよねきっと。

とうとう私は塔の3階に到達し、眼鏡をかけたようなナス(夫に似ている)をぶちのめしてやった。言うことなぁ~す!
3階にて私は敵を2人倒して(ナス含む)、3人目の相手に連鎖を組んだものの、倒しきれず負けた。
必死すぎて相手が誰だったか覚えてない…あれは誰なの?次こそ倒してやっかんな。


やっぱり5連鎖だとちょっと弱いのか…。と意気消沈したが夫は私を褒めた。
ナスを倒したと言うとものすごく喜び、褒めてくれた。
夫がナスに似ていたと言うと「誰がナスグレイブか!」とツッコんできたのでナスの名前はナスグレイブだと知った。

意外と立派な名前だな。


小学生の頃、ぷよぷよで勝てた試しがなかった。
連鎖について学ぼうとしなかったし、負けてばかりだからぷよぷよが好きじゃなくなっていた。

大人になった今、もったいないことをしたなあと思う。頑張れば君は5連鎖できるようになるんだよ。
子どもが何かを嫌いだ、苦手だと思う瞬間ってすごく単純な気がする。で、一度躓いたりしちゃうと遠ざけてしまう。(性格にもよるけど)

夫は上手に気持ちを上向きにしてくれる人だ。
私はぷよぷよに対して苦手意識があった。それなのに自分から夫をぷよぷよに誘うようになったし、夫の盤面をおじゃまぷよでいっぱいにしては高笑いするようになった。
それは夫のおかげに他ならないと思う。大丈夫、失敗してもいいんだからやってみようよ。そう言う夫のおかげで結婚以来ちょこちょこと苦手意識を払拭してきた(料理とか。裁縫とか)


別にぷよぷよで勝てたからと言ってボーナスが5倍になるわけじゃない。世界は平和にならないし、息をするだけで痩せるようにはならない。
おかしい、こんなに頭使ってるんだからちょっとは痩せても良い筈だ。ぷよぷよのお供に選んだチョコパイを掲げて抗議しようと思う。

でも実は、夫も知らない些細な変化があった。痩せはしなかった私の中にいる、ぷよぷよで負け続けて涙目だった女の子が嬉しそうに笑っただけの変化が。

大人になってからでもできることって増えるんだ。嬉しいな。今度の休みもぷよぷよで遊ぼう。

面白いので、ぜひ遊んでみてほしい。

そしてその日の夜に焼きナスでも食べれば、まさに言うことなぁ~す!な休みになると思う。

いただいたサポートは、車で往復4時間弱のところにある娘の病院に通う際のガソリン代や駐車場代に使わせていただきたく思います