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風に乗る春。

沈丁花の香りがかすかにする。
春だ。

ユーミンの「春よ、来い」の歌詞にも登場する沈丁花。
その読みが「チンチョウゲ」ではなく「ジンチョウゲ」と言われることが主だと知ったのはつい最近のこと。

沈丁花の香りがするよと伝えても、「どれがその匂いかわからない」答える人が私の周りには多い。
春はいろいろな香りがするから判別できないのかもしれないが、あの甘い香りは誰でも一度は感じたことがあるだろう。

沈丁花は小さい花がまるで玉のように集まって咲き、濃い深緑の葉によく映える。
私が見かけるのは、花の外側が赤紫や薄紅のような色で、内側が薄いピンクのような、温かみのある春色という感じの色合いのものが多い。

どこからともなく漂ってくる香りの正体を見つけられないことも、沈丁花の香りがわからないといわれるゆえんかもしれない。
沈丁花の香りは遠くまで届くことから「千里香(センリコウ)」「千里花(センリバナ)」と呼ばれることもあるのだそう。
春先のこの時期に生まれた子供に「千里香」や「千里花」って名付けるのもかわいいな。
その香りは甘く軽やかで、どこか上品。決してくどくなく、春の緑の力強さもありつつ、柑橘のような爽やかさやフレッシュさもある。

人に沈丁花の香りの説明をしたときに金木犀を例に出したが、あながち間違いではなかったようだ。
調べてみると、夏のクチナシ、秋の金木犀とともに三大香木に数えられているらしい。

沈丁花が咲くこの時期は梅や花桃にはじまり、いろいろな【春のにおい】がする。
どこからかふわっとした優しくて甘い、上品な香りがして来たらその香りをたどってみてほしい。
沈丁花のかわいらしい姿を見ればきっと忘れないだろう。

風に乗って沈丁花の香りがする。
春が来たのだ。

春は新しいことを始めるのによい時期だというが、それには不安や心もとなさが伴うこともある。
沈丁花の香りはそんな不安定な気持ちを落ち着かせてくれる気がする。

花言葉が「栄光」だというから、私のこの感覚は意外といい線いっているのかも…なんて少しふわつく満月の夜。


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