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私見・作家自身が営業をする事について。

 最近、筆者が公開しているコラム「営業目線のWeb小説売り込み研究」を読んで「参考になった」「ためになった」「あらすじを変えてみたら閲覧数が上がった」など、嬉しい言葉を多数いただいている。

 「営業目線のWeb小説売り込み研究」は、Web小説の売り込み方の部分に対し様々な営業手法を当てはめる事で、「元々面白いのに読まれない作品を、読んでもらえる作品にする」、その後押しをする目的で書いている。そのため、日の目を見なかった良作が、多くの読者の目に触れるお手伝いができたことを、たいへん嬉しく思う。

 しかし、こうした宣伝活動をするにあたり、二点、ご注意いただきたい事がある。

・面白い作品を書く

 一点目はごく当たり前の事だが、営業する前に面白い作品を書くという事だ。創作者ならばこれは、永遠の命題である。冒頭でお伝えした通り、営業手法は、面白い作品が読まれるためのツールであり、あなたは自分の作品が「面白くない」と思っているのに、先に売り込むことを考えるだろうか。創作者ならば、まずは面白い作品を作りたいと考えるはずだ。

 その上で「面白いと思うが自信がない」ということであれば、営業手法を駆使して自作を売り込んでみてほしい。そうして多くの読者に読まれ、ポジティブな感想が付けば自信を持つことが出来る。ネガティブな感想がついたり、いくら売り込んでも失速する様であれば、作品の質そのものを上げることを考えると良いだろう。
 営業手法で自作を売り込み、自作の面白さを再確認するのも、アップデートの参考にしたり、自信を付けることに一役買うはずだ。

・創作者は営業マンではない

 二点目は営業活動そのものについてだ。営業とは自社が作った商品を売り込むことに特化した職業であり、商品の改良を開発側に伝えることはあっても、自分で改良する事はあまり無いし、何より営業マンは「いま手元にある商品の長所、短所をよく理解し、短所があったとしてもその商品が売れる様に働きかける」ことが使命である。

 一方で商品開発者はより売れる、良い商品を開発する事を使命としており、製造者は一定以上の品質を保ちつつ製造効率を上げ、場合によってはその品質を高める事を使命としている。

 つまり、創作活動において、売り込むことに傾倒し過ぎるのは危険だという事である。
 営業マンの口車に乗せられて、良さそうな商品を買ったものの……実際使ってみるとイマイチな商品だった場合、あなたはその会社の商品を再び購入するだろうか。

 創作者は常に自分の出せる最高のパフォーマンスで作品を書いて、至らなければそれをアップデートする事でさらに面白い作品を書き、質の上がった作品はやがて読者に愛される様になる。
 創作者は営業マンではなく、商品開発者であり製造者なのだ。そこだけは間違ってはならない。プロ作家には出版社と編集が付いて営業をしてくれるが、アマチュア作家には専属の売り込み担当などいない。自社に営業部門が存在しないから、開発製造部門が営業をしているだけなのだ。

・バランス感覚

 では、専門家でもないのに営業をするのは悪なのだろうか。筆者はそうではないと考える。だからこそ営業手法を創作者諸氏にご紹介している次第である。

 根っからの創作者やアーティストは、営業をあまりしない。自作の圧倒的なクォリティがパトロンや企業の目に留まり、彼らがその創作者を、作品を売り込んでくれるからだ。故に、作品の質を極限まで高める事で、いつしか誰かに見つけてもらえる……そう考える事ができるならば、Web小説に一話ずつ公開するよりも、公募に出し続ける事をオススメする。ストイックに自作を見つめ、自分一人で作品の内容をアップデートする自信があるならば、その方が良い。

 一方で、そんな自信はないし、改稿やらアップデートは難しいしゆるゆる書きたいけど、営業手法を使ってとにかく読まれたい! という考え方を持つ方は「営業目線のWeb小説売り込み研究」の第2回を三回ほど読み直して頂きたい。筆者の伝え方が拙いということであれば力不足であるが、作品を良くしようという気概……MVV無き創作活動には、読者はつかないと断言できる。

 要するに、バランスが重要だ。ストイックに作品を研ぎ澄ますほどの自信はなく、周囲のアドバイスを貰いながら作品を作り込んでいきたいという方は、ぜひWeb小説として作品を公開し、営業活動をしてほしい。その結果として、作品に自信がついたならば、公募にチャレンジしても良いだろう。

 かつて作家のタマゴは、誰かに師事して家事手伝いをしながら創作活動が出来た。また、師匠の後押しで作品を世に出すことができた。しかし、今ではそういう事をするのは難しい時代となった。そのため、Webで作品を公開し、不特定多数の読者に無料で作品を読んでもらう事でアップデートを図っていくのは良い方法であるし、その不特定多数に読まれるための営業活動も悪ではないと考える。ただし、営業と創作のバランスを見失ってはいけない。

 あなたの創作活動が、営業を通じてより活発になり、多くの方に愛される作品が生み出される事を願う。
 

※追記
 小説の宣伝自体に疲れてしまう方も多いと気付かされる出来事がありました。そんな方は、Twitterなどの宣伝媒体は本当にゆるく使いながら、宣伝や営業に使おうと考えていた時間を作品の改稿、アップデートに使ってみてください。書いた瞬間は読まれないかもしれませんが、代わりに作品の中身が磨かれ、コアなファンが宣伝を初めてくれる……そんな風に思いました。
 私のコラムを見て実践しなければ負ける……という強迫観念にかられる必要はありません。負担になるなら営業、宣伝自体を切り捨てるというのも手です。

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