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PRADA 2021-22 FW MEN’S ミウッチャプラダとラフシモンズ、才能の融合

少し日が空いてしまいましたが、先日行われた2021-22年秋冬メンズコレクションから気になったブランドをいくつかご紹介していきたいと思います。
この状況下、通常のランウェイショーを中止し、デジタルムービーでコレクションを発表するブランドが増えました。ランウェイショーができないという逆境に立たされましたが、その反面、各ブランドがデジタルムービーに様々なアイデアや表現を凝らし、より世界観やクリエイションへの想いが色濃く見えた、という良い側面もありました。

個人的な感想としては、ランウェイショーだとデジタル配信されていても開始時間が押してしまう事が当たり前でしたが、デジタルムービーはオンタイムでスタートするので、しっかり集中して見る事ができ嬉しかったです。SNSなどと連動して大きな話題になったブランドもあり、この新しい表現方法の模索は、今後のファッションウィークの流れにおいて、重要なターニングポイントになったと思います。

PRADA 2021-22 FW MEN’S COLLECTION

それではまず今回のファッションウィークの中でも1番のトピックだった、ミウッチャプラダ×ラフシモンズによる初のプラダ・メンズコレクションを。これは僕も含め、本当に待ちわびていた人が多かった。そして皆の期待に応える素晴らしいコレクションだったと思います。

ラフシモンズは2016年4月にあのカルバン・クラインに指名され、クリエイション全般に権限のあるチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任しました。大きな話題となった一方で、カルバン・クラインのブランディングとラフシモンズのクリエイションに相乗効果が得られるのか?という疑問を僕も薄々抱えながら、ラフシモンズのリブランディングを楽しみにしていました。

しかし結果としては、わずか2年4ヶ月という短期間で退任。ラフシモンズは新生カルバン・クラインのヴィジョンをランウェイやショップデザイン、刷新したブランドロゴで指し示し、新たなケミストリーを更新していく意思を示していましたが、彼のクリエイションはカルバン・クラインの顧客にはあまり響かなかった、そして新しい顧客を掴む前に志半ばで頓挫してしまった。そのような形になりました。
モダンな薫りのするプレッピースタイルやユニフォームスタイル、ラフシモンズのフィルターを通したアンディウォーホルなど、ニューヨークの空気感を目一杯表現したアートな雰囲気が素晴らしかった。
しかしカルバンクラインのビジョンの中では少し、ハイセンスすぎたのか‥最終的にはビジネス的部分(アンダーウエアやデニムの売上)など全体を鑑みて、評価されなかったようでした。

長年のラフシモンズファンとしては、悔しい。
とても悔しい。僕だけではなく、皆さんそう思った事でしょう。そしてこんな事で終わるはずがない‥
そんなタイミングで舞い込んできたのが、このプラダの協業クリエイションのはなし。
もちろんシグネイチャーもあるので、ファンとしてはそれだけでも十分楽しめます。しかしビックメゾンとの仕事の中で、よりスケールの大きいビジョンを描くラフシモンズが見たい。
カルバン・クラインのリベンジ的な意味合い、そしてその有耶無耶を晴らすにも申し分ないステージが、プラダとの協業クリエイションという形で用意されました。

パートナーがプラダとなれば、その期待は否が応でも高まります。ミウッチャとラフ、お互いをリスペクトし、各々の目線を認識し合える良好な関係なので、きっと良いものが生まれるはず。そう確信していました。
しかしこれだけ個性のあるクリエイターが共同でひとつのものを作り上げるという事は、本当に前代未聞のこと。
あとはどういった形で2人の良さがしっかりと際立つのか、全ての焦点はそこにありました。

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そして今コレクション。正直なところ、革命的な新しさや、強烈な個性のぶつかり合いの末、凄いものが生まれた、とまではいかなかったかもしれません。しかし両者の特性や才能がガチッと噛み合った素晴らしいものになったと思います。
そして思ったよりもラフシモンズ色が強い。ラフシモンズがやや主導権を握ったのか。とは言っても、ストリート色がほぼ皆無なのは潔い。そして、ミウッチャの繊細さや知性、美学、プラダのファブリックやテクノロジーなども光り、言うなればラフシモンズのシグネイチャーをグッと上品にしたような、息を呑む美しさと躍動感。カルバン・クラインでの鬱憤を全て跳ね返すほどの魅力がここに詰まっていました。

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まず全体を通して印象的だったのが、ジャガードニットのボディスーツ。
インパクトのある幾何学模様と、身体に纏わりつくようなフェミニンなシルエットからは、ミウッチャらしいセンスが感じられ、そこにラフシモンズ的なテーラードやオーバーサイズが重なっていきます。
特に格好いいなと思ったのが、ジャケットやコートを二の腕まで捲ってボディスーツを見せているところ。
このレイヤードのアイデアはラフシモンズ2021年春夏でも披露されていましたが、プラダのフィルターを通してより洗練度が増していました。
袖を捲ってリラックス感を出しているはずなのに、とんでもなくエレガントです。このバランス感覚が堪らなく好きでした。パンツの裾からも柄を合わせてレイヤードしていたり、細かい部分にもグッときます。

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アイテムとしてはやはりMA-1 に目がいきました。2000年前後のあの名作が思い浮かびますが、今回はあくまでも上品に。
野暮ったくなりすぎない程度のオーバーサイズ。色鮮やかなレザーはもちろん、再生ナイロン「プラダリナイロン(Prada Re-Nylon)」にジャカードニットを重ねたモデルも良さそう。袖の長さが絶妙です。
モード感あるボンバージャケットはトレンドになりそうな予感。

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ダブルのノーカラーコートに襟を後から付けたようなPコートも素晴らしい。可愛らしい柄とボリュームが強調された襟、首もとには細いベルトのような付属もあって上品でいいなと思ったポイントです。プラダマークの刻印が入った大きいボタンも素敵。

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ラフシモンズらしいモッズコート。こちらも裏地にジャカードニットを重ねたモデル。ロングジャケットにモッズコートをレイヤードしたスタイルはとても格好いいなと思いました。柄×柄の合わせもお見事。

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バルキーなコートを使用した後半のスタイリングは、個人的に今コレクションのハイライト。
釦を上まで留め袖を捲ったコート×ボディスーツにワイドパンツ、加えて大きめなバックパックを抱えているところもまた可愛らしい。3枚目、素材感も雰囲気あるバルキーなコートにタイトなレギンス風、ボリュームのある厚底シューズでバランスを取ったスタイリングも好き。コーディネートの参考にしたいです。

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会場はミラノにあるプラダの複合施設、フォンダツィオーネ・プラダ内に設置された、建築家レム・コルハースによる色鮮やかな空間。この空間自体がダイナミックな抽象画のような美しさを放ちます。
そしてサウンドトラックは、ラフシモンズが「今日のKraftwer(クラフトワーク)だ」と絶賛するテクノ界の重鎮Richie Hawtin(リッチーホウティン)。緊張感のあるミニマルなサウンドは、静かに、そして終盤に向けジワジワと高揚感を高めていきます。
ショーの後にはファッションや建築、哲学などを学ぶ世界の学生たちからの質問に答える場面も。

ミウッチャプラダとラフシモンズの挑戦は始まったばかり。エネルギーのあるクリエイションで、新たな時代の扉を開いてくれる事をこれからも期待しています。


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