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フェムテック展に見た市場と課題2

◆国内におけるフェムテックの事業領域と課題

筆者は2022年2月16日から18日にかけて開催されたDMMフェムテックEXPOへオンラインにて出席した。そこで見たフェムテックの事業領域としては以下の五つに大別できる。

・月経 ・妊娠、不妊 ・育児 ・キャリア形成 ・更年期

フェムテック関連各社の特徴として、自身の経験を基に20-40台の若い経営者が起業したケースが多い点がある。そのため、比較的経験者の少ない更年期関連のサービスがやや少なく、出展企業185社のうち、更年期関連サービスでの出展社は13社にとどまった。更年期の症状が出やすい40-50代の女性は国内では約1700万人と、それ以下の20-30代女性約1300万人(※4)よりも圧倒的に多く、より多くのニーズが隠れていると考えられる。

また、更年期由来の体調不良による退職や、管理職への打診を断らざるを得ないといった経済活動への影響もあり、肉体面・精神面の双方で更年期に寄り添うサービス開発が今後急務である。

 

◆キャリア面からフェムテックに切り込む注目企業の紹介

フェムテックというと女性の体・健康を切り口としたサービスが注目されることが多いが、筆者はワーキングマザーということもあり、女性に向けたキャリア支援型サービスが幅広く紹介されている点が印象的であった。特に印象に残った二社を紹介する。

・株式会社fruor(フルオル)「ミートキャリア」

「誰もが自分に合った働き方ができる社会」をビジョンにオンラインキャリアカウンセリングを提供。

キャリアカウンセリングというと求人紹介が前提のサービスが多いが、「ミートキャリア」では求人紹介を行わず、あくまで中立的な立場からの「キャリア支援伴走型」カウンセリングを特徴とし、必ずしも転職をゴールとしないキャリアの長期形成をサポートしている。

代表取締役CEO 喜多村若菜氏

平日昼や週末にはカウンセラー(キャリアサポーター)らによるオンラインイベントも開催されており、TwitterやSlackを使った会員同士の交流も活発である。

筆者もここ一年、四半期に一回程度のペースで「ミートキャリア」のカウンセリングを受けている。毎回何かしらの「モヤモヤ」を持って相談に臨み、ポジティブなキャリアサポーターによるモヤモヤへの丁寧な紐解きと、新たな見方、今後の動き方を具体的に提案していただくことで、自身のキャリア形成にはもはや欠かせない存在となっている。

代表取締役CEO 喜多村氏のnote

https://note.com/meetcareer/n/nda2f8168cc14

 ・株式会社ワークシフト研究所 

「多様なリーダーが活躍する社会」「経営学で『働く』を幸せにする」をコンセプトに、主に女性リーダー育成に向けた勉強会を実施。具体的には育休中、復職後の父親、母親をメインターゲットとした『育休プチMBA』『WSIプチMBA』があり、ロジカルシンキングや交渉学などの経営学をケーススタディとして擬似的に体験することで、復職後に備えて意思決定の訓練をする。

代表取締役社長 小早川優子氏

筆者も育休中であった2018年9月頃からおよそ半年間、月に一、ニ本のペースでワークシフト社の講義を受けた。育休中は乳児との生活で孤独を覚えることも多いが、自身と同じような境遇かつキャリア形成に肯定的なメンバーと触れあえる大変貴重な場であった(当時は都内でのオフライン開催であったが現在はオンライン)。またケーススタディとして復職後に起こりがちなトラブルを体験したことで、問題解決に向けた考え方を学び、復帰に向けて自信を付けることができた。

またワークシフト社の講義に参加するとFacebook上のオンラインコミュニティに参加できる。復職後のTIPS共有や、モヤモヤを相談し合うなど、育休中に学んだ頃の初心に還る場として日々刺激を受けている。

代表取締役社長 小早川氏の新刊刊行コラム

https://workshift.co.jp/2022/01/3470/ 

キャリア支援型サービスというと大手による転職サービスも連想されるが、従来サービスは基本的にフルタイムかつ残業も転勤も可能といった人材向けの色が強く、子育て・介護中人材のような時間に制約のある人材にはフィットしない点が問題であった。これらの二社に共通するのは、必ずしもこれまでの『男性社会』に迎合しないキャリア形成をサポートしている点である。自分らしい働き方に向けたカウンセリングや、時間に制約があっても生産性高く働くためのスキル構築など、これまでの労働環境ではマイノリティであった層に伴走するサービスを展開している。これらのサービスにより労働人口低下に歯止めをかけるのはもちろん、より活き活きと働く層が増えることで経済を活性化させる面でも、きわめて注目度の高い二社と言える。 

◆まとめ

2020年ごろから注目され始めた女性特有の問題をテクノロジーで解決するフェムテックについて述べた。フェムテックが関心を集める要因としては女性の社会進出に伴うひずみと、SNSによるその可視化、また精神的な豊かさを求めるようになった風潮が挙げられる。国内に展開されるサービスの中では更年期に特化したサービスが少なく、更年期に悩むとされる年代人口の多さからも、開発が急がれる。

注釈

※1 2020年秋冬 最新国内 Femtech(フェムテック)マーケットマップ発表! https://note.com/hellofermata/n/n67de6061b478


※2 働く女性の概況

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/19-01.pdf


※3 帝国データバンク 女性登用に対する企業の意識調査(2021年)

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210805.html


※4 総務書統計局 人口推計 令和4年二月報

https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202202.pdf

ライター:Kashiwa
化学メーカー勤務。