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想像の夏

「蝉時雨、古びたバス停のベンチに
 君と二人で座って
 なかなか来ない次の便に
 少し遅いねと笑って
 どこまでも青い空を眺めていた...」
想像だけで良かったんだ
そんな想像だけで

「昼下がり、風のよく入る窓際で
 君と二人で横になって
 ふんわりと揺れるカーテンに
 何にも無いねって笑って
 遠くを流れる雲を眺めていた...」
想像だけで良かったんだ
そんな想像だけで

また夏が終わっていく

「夕立、古びたバス停のベンチに
 君と二人で座って
 今日も来ない次の便に
 何かを呟いた其の声も雨の音に飲まれて
 ただ互いに濡れた髪をいじっていた...」
想像だけで良かったんだ
そんな想像だけで

「夕涼み、縁日の人で賑わう河原で
 夜の空に花が咲くたび
 浮かび上がる君の横顔の
 其の緩んだ口元を見つめては
 繋いだ手をぎゅっと握り直した...」
想像だけで良かったんだ
そんな想像だけで

また年を取っていく

もし本当に其れが全て想像だったのなら
今、こんなに悲しくはならなかったのだ
夏の終りに、温い涙が頬伝う
置き忘れたさよならを前に

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