見出し画像

移民と故郷と、心の中のリトル・ジャパン





去年の夏の終わり、1ヶ月ほど十和田湖のほとりの宿で過ごしていました。そこで出会った編集者の中野和香奈さんとのご縁で、Discover Japanにエッセイを寄稿させていただくことに。タイトルは「移民と故郷と、心の中のリトル・ジャパン」

(Kindle unlimitedでも読むことができますよ)


心優しき編集部の方に許可をいただき、ここ『視点』にも転載させていただくことになりました。「そんな、もう買っちゃったよ!」という方、本誌の特集はとても充実しているので、どうかお許しください……。そして、『視点』の更新は今月もあと3本続けていきますので、どうぞ引き続きお付き合いください。


では、はじまりはじまり。



──


焦がし醤油の肉じゃが、羽根つき餃子、二度揚げ唐揚げ、豚肉のアスパラ巻き、ピェンロー鍋……ここ1ヶ月の、我が家の食卓に並ぶ定番料理たち。夫婦ともに飽きることもなく、ごはんと味噌汁をお供にこのあたりをヘビロテしている。

たまの贅沢として、2週間に1度は鮮魚の美味しい魚屋に足を運び、また2週間に1度は近所のやたらめったら旨い中華をデリバリー。中でもぴりっと甘辛いタレが絡んだオクラの豚肉巻きは悶えるほどで「旨い中華に敵うものはない」「奥行きが違う」と興奮しながらガツガツとたいらげる。


そんな夕食のお供は「プロフェッショナル 仕事の流儀」の過去放送だ。

NETFLIXやAmazon primeの番組も色々見ていたのだが、結局のところ国産サブスクのNHKオンデマンドに落ち着いた。特に日本の職人シリーズは惚れ惚れとするものばかりで、夕食の満足度はがぜん底上げされてしまう。


「楽しい会話は食事を美味しくする」だなんて言うけれど、いま、夫婦ふたりの会話なんてこれ以上ないほどに飽和している。豊かな番組選びが、隔離生活中のマンネリ化防止にも役立っているんじゃなかろうか。



──


夕食中、ドッ!!! と窓の外から大きな歓声と拍手が聴こえてくる。
「あぁ、19時か」と窓辺に近づき、こちらも大きな力で拍手を送る。


ここから先は

1,801字 / 3画像

新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。