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「YouTuberってこんなに大変やったんかい」という話

好きなことで、生きていく。……ってあれもう8年も前の広告なのに、未だにYouTuberといえば「好きなことで生きていく人たちだよね」と想起させられる程には鮮烈なキャッチコピーだったよなぁ。


「生きていく」には生活が出来る、つまり「儲かりまっせ」というメッセージが多分に込められている訳で、「へぇ、儲かるんならやってみましょか」とその魔界の扉を開くフォロワーが雨後の筍のように増え、おおよその人が挫折したのである。古今東西、楽して成果を手にしたいという心理は常にくすぐられ続けているし、「食べるだけでダイエット」「聞き流すだけで英語上達」をやってみたところ課金しただけで終わった、みたいなのと少し似ている。


とはいえ、私は自分の言葉を伝えられる媒体は増やしておきたいなぁ……という目的で5ヶ月前にYouTubeを始めて、収益のことや数字のことはあまり考えずにマイペースにやっていこうと思っていた。が、


「でも今、円安だからさ……YouTubeってドル立てで収益計算するから、かなりお得なんだよね」


という言葉を小耳に挟んで、欲が出た。昨今の円安を憂いていたけれど、まさかそれが収益に直結する狩場が身近にあったのか……という衝撃を前に、「私、動画の世界観が壊れるから広告は入れたくないのよね」という崇高な理念をすぐさま捨ててYouTubeパートナープログラムに申し込んだのが先月のこと。

そして、7月14日から晴れて私のYouTubeチャンネルは収益を得られる「YouTubeパートナー」となり、過去すべての動画で一旦広告をオンにしてみた……のだけれど、そこから46日分の収益合計がご覧の通りである。

(推定収益をそのまま公表するのは規約違反らしくボカしてますが6,000円台)


なるほどですね…。

まぁ、初心者だし、こんなもんなのだろう。ちなみに、ここまで投稿した動画は7本。1本あたり、撮影、編集、公開準備……と丸3日くらいかかってしまっているので、1日を8時間として(8時間 × 3日)× 7本で168時間。単純計算すると、時給41円の世界線である。つまり祖母の肩を叩いて小銭を得ていた頃のほうが割が良かったではないですか……。


しかしこちとら、ツイッタランドでは一応11.4万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーなのである。それに加えて最初は、キナリノチャンネルで紹介していただいたり、naoさんがSNSで私のことを紹介してくださったり……と、YouTube上ですでに人気の方々からのご加護もあり、とても幸先の良いスタートであった。

そうしたアドバンテージがありながらも、現状、時給41円という事態。魔界の厳しさがおわかりいただけるのではなかろうか……。

──


とはいえ、私の更新頻度がほぼ月1と底辺レベルなので、まずはここに改善の余地がありすぎる。月5本投稿すれば、過去コンテンツも潤沢になり、回遊してくれる人もうんと増えて、ゆきだるま式に収益は膨らんでいくんだろう。けれどもそうすると、他の仕事を諦めるか、睡眠を削るかの二択になる。丁寧な暮らしを垂れ流すために睡眠を削るというのも、なかなか趣深くはありますが……


いや、そもそも前提に戻ると、私は文章以外で言葉を(誰にも編集されずに)伝えられる媒体を増やしたくって、YouTubeを始めたのだ。

その第一目的はちゃんと遂行されつつあるし、知人友人からも「見てんで!」という声が届いてとても嬉しい。肌感としては明らかに「読んでるよ」よりもその声が多くて、誰かの日常に染み込んでいるように感じる。YouTubeで存在を知って、noteをサブスクしてくれた……という人もいてくださって、本当にありがとうございます。

そして想定外に嬉しかったことが、初期の動画から、「スペイン語の字幕も入れてくださる?」という声が届き……

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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。