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最近読んだ本:「デザインへのまなざし」by 早川克美

大学院でとっている授業の教授である早川先生のご著書。「料理も、落語も、Amazonも。LINEも、音も、おもてなしも。みんな『デザイン』です。」という刺激的な帯のついたこの本、とても面白くて読み終わるのが勿体ない!とちびちび読み進めました。

デザインというと、アップルのiPhoneとか、素敵なインテリアとか、表面的な美しさというイメージを持つ人が多いのではないかと思いますが、この本では「デザイン思考」の範囲は実に広いことが説明され、「人間がつくったものはすべてデザインと言っても過言ではない」とまで言い切っています。実際、さまざまなコト・モノがつくられた背景には、何かしらの人間の「意図」が反映されており、その意味では、デザインとは私たちの暮らしのあらゆる面に息づいていると言えるのでしょう。

大学院の授業でもカバーされたことですが、この本では「ユーザー中心主義」と「デザイン主導主義」の違いについても説明されています。ユーザー中心主義でつくられたものが、観察による「違和感」の認識から始まり、ユーザーが本当に望んでいるものは何か、という視点を使うのに対し、デザイン主導主義では、「未来のユーザー」という現状からジャンプした地点から何が可能なのか、を考えます。両者は補完的でもあるのですが、アプローチとしてはかなり違います。身の周りのもの・ことが、主にどちらのアプローチでつくられたものなのか、今週はグループ・ディスカッションをしていて、何度もこの本を参照しました。

この本では、建築家からシェフまで、7人の専門家に取材して、彼らにとってのデザインとは何か、を聞いています。この部分は特に面白かったです。強いて言えば、男性7人だったのが、女性はこの分野にはいないのか?と疑問を持ってしまいましたが。。。7人の方々はそれぞれに皆とても深いことを言っているのですが、その中でも私は料理家の中東久人さんの「デザインとは誰かのためにやること」というアイデアに強く共感しました。大学院の授業でのエクササイズにもあったのですが、やはり人間、自分のためだけに生きているのではつまらない。誰かのためになることを生み出せた時に初めて、意味がある、と感じることのできるものができるのではないかと。同じ料理家で私が大ファンの土井善晴先生の生き方も、まさにそういう感じ。

この本を読み終わって、やっぱり早川先生の下でデザイン思考を学ぶことにしてよかった!としみじみ思いました。自分がこれまで国際協力・開発援助・人道支援の分野でやってきたことと、広い意味でのアートへの強い関心が、まさに収束して行くのがデザイン思考であるような気がしています。


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