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これからも映画の話をしよう!

みなさま、明けましておめでとうございます。
「映画始め」はどの作品で迎えましたか?映画館で鑑賞されましたか?それともご自宅でしたか?私は、2日の夜にフォーラム八戸さんで「あのこと」を鑑賞しました。予告編につられて軽い気持ちで見に行ってしまったもので、正月から早々に痛苦しい思いをする羽目になりました。

さて、みなさんご存知の通り、八戸市内唯一の映画館であり、市民のフォーラムとして長らく愛されてきたフォーラム八戸さんが、1月5日をもって閉館されました。今回の記事では、昨年の9月23日に弊会が主催した初めてのイベント「これからも映画の話をしよう vol.1」を振り返りながら、ご参加者のみなさまやメンバーそれぞれの「フォーラム」での思い出をここに残したいと思います。

「これからも映画の話をしよう vol.1」(9月23日(金・祝)/@AND BOOKS)

すでに知ってくださっている方も多いかと思いますが、この会は「映画の好きな友人の集まり」が活動母体となり、のちに筆者を含む2人のメンバーが加わりました。ちょうど夏頃、市の中心街にあるサロンのようなお店(と筆者は勝手に思っている)、その名も「AND BOOKS」で「映画関連の小さなイベントをやりたいね」と話している最中で飛び込んできたのがフォーラム八戸さんの閉館のニュースでした。閉館を迎えた今も気持ちの整理はつきませんが、あの当時は当時で、言葉にならない思いだったことを覚えています。

このままただ閉館を待つ、なんてことは絶対にしたくないし、何かしたいけど何をしたら良いかわからない…。でも、私たちにはその感情を素直に明かせる仲間がいました。色々と悩みましたが、ただ単純にフォーラム八戸さんの再出店や移転を嘆願するのではなくて、映画の楽しさや、過ごし方の選択肢として「映画」があることがどれだけ幸せなことか、私たちから伝えたり、共有したりしながら、これからも八戸市に映画文化の灯りを灯し続けようと思い「会」という形式での活動を開始しました。フォーラム八戸で経験した「映画のたのしさ」を忘れてしまわないように、市民が「映画館のないまち」に慣れてしまわないように。まずは、会のメンバーだけではなくて、市内の映画ファンと集い、今の気持ちを共有しようと開催したのが「これからも映画の話をしよう vol.1」でした。

ご参加されたみなさま

まちづくり関連の仕事をされている方、文化施設の職員、建築家など、さまざまなご職業の方が集まってくださいました。八戸市出身の方とそうではない方の割合は半々くらいで、それぞれに思い出の「館」があることが印象的でした。

出席者からの声

会の中では「フォーラム八戸とあなたの関係(自己紹介を兼ねて)」「フォーラム八戸との思い出」「これからの八戸に映画文化を残すアイデア」などを、参加者全員で語り合いました。ここでは、そのごく一部をご紹介させていただきます。

●フォーラム八戸との思い出
「ヨーカドーが撤退するのと、テアトル八戸が閉まるのがほぼ同時期だったので『まちなかどうなっちゃうんだろう…』っていうすごい危機感がありました。それで、ヨーカドーがチーノに生まれ変わって、そこに市民の映画館が入るということで、かなり希望感をもったことを覚えています」

「『バーフバリ』を観た後に『最高だな』ってTwitterにあげたんですよね。そしたら『実はその会僕もいました』って連絡をくれた人がいて。『じゃあ感想会しますか!』って飲みに行くことになって。そこから『この映画見た?』っていうので、その友達とのやりとりがさらに増えて、気づいたら他にも友達も増えてって感じ。そうやって、カルチャーの中で友達が増えてきたっていうのが僕の中での一番の思い出。中心街っていうのもすごい良かったです」

「元々両親が映画をすごく好きで。その影響で自分も古い映画が好きだったので、古い映画をDVDとかで見てたんですよね。こっちに(引っ越して)来てからは、フォーラムでフェリーニの映画とかをやってくださって。古い映画を大きい画面で見る機会にすごく感動して。ずーっと記憶に残るっていうか。元々好きな映画でも見え方が違ったり、新しい発見があったり。やっぱり映画っていいなって思わされたのがフォーラムでした」

「『これを観よう!』って特に決めてから行くってわけじゃなくて、とりあえずフォーラムでやっているものを見に行くっていうのが自分にとって良い時間になっていて、空間の心地良さもあってですね。スタッフの皆様のご尽力の賜物だと思います」

「『映画館って不思議な場所だな』って思うのが、劇場があってそこで没頭して一人で見ることもできるし、周りの感情を感じながら一体感を持ってみることもできる。そういう場所があったっていうのが、私の成長してくる過程ですごく大きな部分を占めているんですよね。人生の行き詰まりみたいなものを感じた時に、こういう場所があるってことはすごく大事だなと思っています」

「去年の4月にこっちに戻ってきたんですけども、その決心がついたのは、八戸にフォーラムがあったからなんですよね。学生時代からの思い出もあるし、本当に大好きな館で」

「オープン前日の『シティ・オブ・ゴッド』の上映に当選して、その時からの長い付き合いなので、もう今回の閉館は本当にどうしましょう…と。私から映画がなくなるんだなと思うとすごく寂しい思いです」

●これからの八戸に映画文化を残すアイデア
「岩手や秋田にはミニシアターっていうか、常設館ではないけど映画が見られる場所があって。やっぱり必要としている人がいるし、上映作品も選び抜かれたものなんですよね。映画を見た後に感想の共有をする時間があるっていうのもすごく良かったです。秋田のアウトクロップさんでは、実際に映画に出てくる食べ物を提供する会もあったみたいです。こういうことは、小規模だからこそできるんじゃないかな」

「小さな上映会であれば、作品と当事者意識を結びつけやすいですよね」

「これまではフォーラムさんが映画を提供してくれる側で、私たちはそれを享受する側だったんですよね。でも、映画自体が違うフェーズに入っていることもあるし、続けていくためには自分たちで場を作り出したり、撮りたい人は作品を作り出したり…みたいなことが必要なのかなと思っていました」

「テアトル八戸が失くなって、フォーラムが八戸に来るまで間が空いていたんですよ。その時に『武士の一分』だったかな?が、公会堂で上映されたことがあったんですよ。市民の上映会みたいな感じでした。その時の公会堂には、人がビシッと入ってましたよ。きっと当時は、映画館がなくて、飢えてたんですよね」

「家でこんなに簡単に映画を見られる時代でもやっぱり求められているんだと思います。多分原始的な欲求なのかなって思います。みんなで観るとか、広いところで観るっていうのは」

それぞれが大切に抱いてきた思い出や未来に馳せる思いを共有し合い、あっという間におひらきの時間を迎えました。会が主催する初めてのイベントでしたが、市内を中心とする映画ファンと熱い思いを寄せ合うことができ、先に述べた会の趣旨にも沿う大変意義深い時間になりました。ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました!(もっともっとご紹介したいコメントはあるのですが、会の音声を録音した文字起こし原稿は3万字をとおに超えるほどのボリュームのため、この記事ではほんの一部に触れさせていただきました)

むすびにかえて

発足時から表明している通り、この会はフォーラム八戸の再出店を嘆願することを目的とする会ではなく、映画ファン同士が意見を交換し合い映画文化が根付く街を目指して、土壌を耕すことを第一義に活動しています。それでも、それでも今は、いつかまた「フォーラム八戸」で映画を見られる日を願わずにはいられません。
この会のメンバーが友人になれたのも、未だ見ぬ物語に出会わせ感情の揺さぶりを与えてくれたのも、私たちの愛するフォーラム八戸さんがどんな日にでも映画を流し続けてくれていたからです。

フォーラム八戸の従業員のみなさま、さまざまな形でフォーラム八戸の運営にご尽力されてきたみなさまに、最大限の感謝と敬意を捧げます。
19年間、誠にお疲れさまでございました。本当に、本当にありがとうございました。


*トップの画像は、松浦奈々さん(Instagram: @watashino_sumumachi / note: https://note.com/korisu_seven730/ )により撮影、提供された写真をトリミングして使用させていただいております。ちなみに、1月と3月には、AND BOOKSさんを会場に個展の開催があるようです。気になる方は、Instagramやnoteなどを覗いてみてください。


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