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『これぞ我が銃、我が愛銃』第9話「イマチュアオレンジ」

 ドアの向こうから聞き慣れた声が伝わってくる。話す内容まではわからないが、何かに憤る怒りの声であることだけは十分理解できた。怒気によって沸騰した熱さがドアを隔てたこちらにまで、耳から感じられる。

「そりゃあ、おたくの立場は承知してるさ。でもな、おれにもタレントを守る義務があるんだよ」
 長谷川が手にするのは黒く四角い筆箱を思わせる携帯電話。トランシーバーさながら顎の前で持ち、回線の向こう側にいる相手に対し、まくし立て、さらにがなる。負けじとあちらからも甲高い金切り声がスピーカーを通し、室内にノイズとなって響く。
「もちろん、必要があれば脱ぐよ。こっちも合意すればな。ただ、これだけは覚えておけ。うちのタレントの脱ぎは安くねえ。タレントなんだぞ。才能があるから雇ってんだ。『とりあえず脱ごうか』ってなんだ。え? 男だからどうとかいう問題ではなくてだな。性別がどうであれ、マッパになるってのはただ事じゃないんだぞ。『とりあえず』で脱げるほど格安じゃねえんだよ」

 長谷川は吠え続ける。春奈らの存在に気づいているのかいないのか、テーブルを挟んだ向かい側の二人には目をやることもなく、入り口から最も離れた、彼の定位置となる席にどっかと尻を沈ませた。
「うん、うん。そうだな、確かにあんたが厳しい状況なのはわかる。おれもカッカきて大人げなかった。この件はオヤジを交えてまた話そう。ところで明日どうだ、行くか? もう賭けるもんがないって? なきゃないで、賭けるに値するものをこしらえればいいだろ。じゃあ明日、いつものアジトでな。宇野の珍プレーばりの技を見せてくれよ。はい、では失礼します」

 電話を切った長谷川は携帯電話をまじまじと見てから「持ち始めると便利で使っちまうよな」と独り言のように、されどその場にいる二人にも聞こえる声量で言う。
「あ、えっと、お疲れさまです」と京香。春奈もペコリと頭を下げる。
「あんたらにも支給しないとな。Pメールとかいうやつ、小野里にも役立つだろ。確か半角で二十文字くらいまで送れるんだったよな」

 長谷川の話を聞いた京香は、最近の自分の仕事におけるコール対応の変化をあらためて意識した。携帯電話やPHSの所有者が増えており、水道の開け閉め案内も器具の前で電話を持つ相手と会話しながら行える場合が多く、楽になった。その一方で、電話の保留音を聴く機会が減り、勤務中の密かな楽しみも奪われつつあった。

「あ、もう来られてるんですね」
 わずかに開いたドアの隙間に持田の顔が覗く。ベージュのコーチジャケトと白のチノパンが窓からの陽の光を吸収して保護色のように体を隠し、頭だけが空間に浮いていた。
「ビックリした。心霊写真かと思ったよ。早く入ってこい」と長谷川に言われた持田は入室する。
「なんですか、人を幽霊みたいに」
「こないだ見た映画であったんだよ。何気ないシーンで、少年の亡霊みたいなのがドアのそばに突っ立ってるんだ」
「近所の子供が見学してたんじゃないですか」
「そんなわけないだろ。きっと、昔そこの撮影現場で死んだガキの浮幽霊とか」
「この世に留まり続けるのも悪くないんじゃないですか。そんな話はいいんですが、里見君の件、どうなりました?」
「言うだけは伝えておいた。まあ、いざとなったら、おれが出向いてケリをつけるつもりだ」
「何かあったんですか?」京香が空気を読みつつ聞く。
「うちのタレントさんのことなんですが、深夜ドラマの撮影でちょっとトラブルがあったんです。台本にないのに現場でいきなり脱げと言われたみたいで」
「しかもマッパな」
「本人は当然、嫌がったのに、まだ若くて断りきれなかったみたい。結局はその場の圧力で……」
「女だったらここまではされなかったかもな。『男ならまずは脱げ』みたいな頭おかしい論理を働かせる異常者どもがおれらの業界には生息してるんだよ。そういうのは駆逐しないと」
「大変ですね」
 京香は春奈が心配になり、彼女のほうをチラと見る。

「小野里さんは安心してくださいね。Letterの活動と事務所のお手伝いだけです。他の仕事で現場には行かせません。ただ、小野里さん、存在感あるから。うちの事務所に問い合わせは来ちゃうんですけど」
「最初に交わした条件どおり、すべて断ってるから大丈夫だ」
「ありがとうございます」と京香は礼を言い、春奈も頭を下げた。
「これだけは安心しろ。篠塚も含めて、お前らにいわゆるセクハラまがいの嫌な思いはさせねえ。どっかの接待につき合わすこともしない。当たり前だが、おれが変なことするわけもないからな。だいたいがおれはお前らみたいな〈肌色〉は好みじゃないんだ。褐色がいい。早くカネ貯めて、日本をとっとと出て、移住してえ」
「最初はわりといい話だったのに、最後のほう、ひどくないですか? そういう発言もハラスメントですよ」
「そうか、悪かった。許してくれ」

 長谷川は机に頭をつけて謝罪する。彼の態度に戸惑う三人。自分の指摘が原因で空気を濁らせたと思って気まずくなり、シュンとしてしまう持田。春奈は場の流れを変えようと、メモ張に急いで書きつける。

「札野が来てたのか?」
 京香は口を開くが、春奈がメモ張に書き出し始めたので、そのまま唇を結んで黙ることにした。
「室長に相談事があると仰ってたので、Letter会議の前に来ていただく予定だったんですけど。急に難しくなったって今日の朝、連絡があったのに」持田が首をかしげる。
「キャンセルだと思ったから、こっちのミーティング時間に合わせて来たんだが。そうか、いたのか。そして、もう帰ったと。まあ偶然にでも、二人があいつに会えたのはよかったよ。小野里は前に一回会ったみたいだけど、篠塚は初めてだろう?」
「とても感じのいい人でした。もっと敷居が高い人なのかと思ってたら、すごい気さくで。ビデオのことも褒めてくれました」京香はつい先ほど自分の心に杭を打ち込み、去っていった女のことを遠い昔の恩師のように想起した。
「持ってたバッグが高級品じゃなくて、商店街で買ったものだったのもなんかいいなって。三千円だっけ?」と京香は春奈を見やる。肯定のうなずき。
「ああ、阿佐ヶ谷のバッグか。でもな、庶民派ってわけじゃないぞ。あいつ、スポーツカーが好きで、運転苦手なくせに買っちゃうんだ。この前もCMの出演料はたいて、えらく高いのを一括買いしてたよ」

 札野の意外な一面を知り、京香も春奈も不思議と気分が高揚する。その妙なテンションの中、京香は聞くべきか迷っていた質問をぶつけることにした。

「あの、札野さんは、私たちのことを知ってるんでしょうか。つまり――」
「声のことか? さあな、少なくともおれらからは言ってない。話したのか?」
「いえ、私も春奈さんも何も」
「この前、スタジオでお会いしたときも伝えませんでした」
「なるほど。どうしたものか。ただ、札野が事実を知ろうが知るまいが、あいつがあんたらに向ける顔は変わらんよ。それで十分だろ」

 長谷川の言葉に、彼自身を含めた皆が納得し、先ほどの気まずい沈黙とは異なる緩やかな空気の流れる中、ホワイトボードに貼り付いていた四つのマグネットが突如、同時に落下、バラバラと床に転がった。近くにいた春奈が赤、青、黄、緑のそれらを拾い上げ、ボードに再度貼ろうとするも、磁力が永久に失われたのか、接着することを拒絶し続けるのだった。

・・・
 
「篠塚さんにはレコーディングの日程が調整でき次第、連絡しますね。小野里さんは事務所に戻ったら、ちょっと私の仕事を手伝ってもらえますか? スタッフが減っていくのに、タレントさんの中には仕事が増えてる方もいて。私がマネージャーも兼務しなくちゃいけない状態だから、事務仕事が処理しきれないんです」
「おれはマッパの件で一本、電話しないと。長くなるかもしれんから、持田と小野里は先に戻ってろ」
「それじゃあ、私はここで。春奈さん、またね」
 レンタル会議室の入るビルから出てきた四人はこの日の集まりを解散しようとした。そのとき、金属が叩きつけられる乾いた反響音の連続が聞こえてきた。

 ぎにゃっ!
 カンカン。
 ぶびゅっ!
 カンカン。

 反響音のあとには鈍い悲鳴。豚の唸り声を思わせる。そしてまた反響音。二種類の音のコラボレート。その音源は京香たちの位置から数メートル離れた、信号機のない横断歩道の中央辺りにあった。白シャツ姿の若い男が金属バットをアスファルトに叩きつけている。金のメッキには所々に朱色が混じっていた。男の周囲には中年の男と若い女がうずくまる。バットで叩かれた体の部位に手を当て、激しい痛みに悶え苦しむ二人。

「来いやあ!」
 男はバットをサーカス団員の鞭捌き、あるいはカウボーイのロープ投げさながらの手つきで、ぐるぐると振り回す。男が被害者たちから離れた隙に、車の陰に隠れていた通行人らが助け出す。男の周囲数メートルには誰もおらず、彼は自らが獲得した狭い王国の領土を死守せんと頭上で旋回するバットと共に、彼も王国の周縁を歩き回る。

「警察を呼びます。携帯電話、貸してください」持田が冷静な口調で言う。
「ああ、頼むわ。だけど、たぶん間に合わねえよ。お前らは下がってろ。おれが行く」
「あ、ちょっと!」

 持田の制止を聞かず、長谷川は落ち着いた足取りで男に近づいていく。普段、歩く際は両手を上着のポケットに突っ込む癖を持つが、いまは肩からダラリと下げ、微かに指先を震わせたあと、ぐっと握りしめては開くを繰り返す。

「おい! 学校帰りか? 鞄はどうした?」
 ドスの利いた長谷川の吠え声に気づいた男は一瞬怯むが、バットを握り直して刀のような構えで虚勢を張る。相手は素手にもかかわらず、まるで男のほうがハンデを抱えている狼狽ぶりだ。領土に足を踏み入れ、王国を汚そうとするインベーダーを排除するため、男は長谷川の脳天めがけ、渾身の力でバットを振り下ろした。
 春奈と京香が同時に息を飲む。京香は声を漏らすが、春奈の喉からはもちろん何も出ない。持田は携帯電話を握ったまま通報することも忘れ、弧を描くバットの軌跡に釘付けになっていた。
 見切ったのか、動物的本能の偶然か、長谷川は迫りくるバットの猛襲を間一髪で横に避けた。目を丸くした男はどっと汗を噴き出させ、瞬時に濡れた頭髪はベタついた光沢を放った。二度の悲劇を避ける幸運などあろうはずもない、そう思った男は今度こそ侵略者の頭部を粉砕しようと二撃目を繰り出す。が、またも長谷川は脂の乗ったボクサーよろしく、なんなくかわして、男の脇に回り込む。動きはボクサーだが、両手の構えは柔道家のそれであり、射抜いてくるような鋭い目はアーチェリーの選手を思わせ、まるで複数のアスリートが融合した姿だった。

「なんだあ、お前!」
 男はバットを横に投げ捨てる。キンキン、カランカランと鳴るのは、役目を終えた武器の声。王国を襲う悪魔を打ち破るにはもっと強力な武器が要る。男は尻のポケットから、夕暮れの血の赤の光を受けて輝く銀の塊を取り出す。ハーモニカほどの大きさのそれを片手で振ると、カチャリカチャリと音を立てて、鋭い刃が出現する。
 長谷川はゾッとした。バタフライナイフだ。あんなものに刺されたら、ひとたまりもない。万一、食らいどころが悪ければ、一巻の終わり。バットを避ける自信はあったものの、刃物に素手で立ち向かうほどバカじゃない。彼は一歩バックステップし、距離を取ってから上着の内ポケットに手を入れ、対抗できる武器がないか探った。
 突き出した魔除けの筒からは赤い粒子が噴射される。真っ赤な霧を顔面に浴びた男は刃を落とし、くずおれ、のたうち回った。目から涙があふれ、鼻水と共に洪水となって地面に滴り落ちる。

「危ねえな! 光り物は反則だろ! おいたじゃ済まなくなるぞ」
 長谷川は安堵のため息をついたのち、男の足元から拾い上げたバタフライナイフを慎重な手つきで折り畳み、内ポケットにしまう。
「水! 水くれよ!」男が懇願の叫びを上げる。
 長谷川は仁王立ちで男を見下ろす。「水なんかかけてみろ、余計に沁みる。お前のしでかしを清算する時間だと思って苦しめ」顔を手で覆い、足をバタつかせ、駄々をこねる子供のような男のシャツに、校章が縫い付けてあるのを長谷川は目に留めた。
「やっぱり、学生だったか。とんだ課外授業になったな」少年を見る長谷川の顔つきに変化があった。憐みに加え、ある種の優しさも伴うようになり、強張る表情は柔和になっていく。しばらく見下ろしたあとに一度、空を見上げてから、アスファルトに膝をついて、少年を抱き寄せた。昨日、仕立てられたばかりで、数時間前に初めて袖を通したスーツが少年の涙と鼻汁で台なしになる。

「鈍器に刃物。十分、人を殺せる武器だよ。銃のある国だったら、それも使う気だったろ。今日、他の場所でも暴れてたのかは知らねえが、おれが見た限りでも、お前は二人も傷つけてる」長谷川は離れた場所で通行人に介抱されている被害者たちを見た。視線を少年に戻す。「何の助走も滑走路もなく、こんなぶっ飛べるわけねえ。ここに至るまでには長い長い道のりがあったろうな。でも、世間様から見りゃ、お前さんは電波でイカれた少年にすぎない。インターネットって知ってるか? パソコン通信とは違うぞ。もっと簡単に誰でも情報交換ができる優れもんだ。あんなのが一般に広まった時代には、お前の顔も住所も家族の名前だって、すぐに晒されちまう。まったく、恐ろしい世の中になっていくよ」

 大事な王国を蹂躙した男が、わずかの間だけ王であった自分をがっしりつかんで拘束している。少年は眼前にある男の股間がうっすら滲んでいるのを、自らも滲む目で見ていた。

「未成年だけど、それなりのお尻ペンペンは覚悟しとけよ。それでな、ちゃんと罰を受けて、謝って、ケジメつけたあと、おれのところに来い。一緒に面白いことやろうぜ。合法の範囲でな」
 長谷川は名刺を少年のシャツの胸ポケットに差し入れ、白髪一つない十代の黒々した頭髪をぐしゃぐしゃとかき回してから立ち上がった。転がったままのバットを拾い、春奈たちが待つ場所へ疲労した様子でトボトボと戻っていく。わずかだが失禁したことを隠すためにジャケットのボタンを一番下まで留めてから。

「約三分か。三分間の戦いだったな。あいつとおれの」腕時計を見て、そうつぶやく長谷川は、何かを言いかけた持田に手のひらをかざして彼女を黙らせた。「今日はもう何も言わないでくれ。疲れたよ」
「わかりました。とりあえず、これを」
 持田はリュックから取り出したペットボトルを彼に渡す。受け取った長谷川は330ミリリットルのミネラルウォーターを一気に飲み干した。
「あー、うまい! やっぱり、カネ出して飲む水は違うな」
 それから京香と春奈のほうを向く。「しっかし、今のガキは皆、ナイフ持ってんのかね。この前見たフランスのドキュメンタリー番組じゃ、日本の女子高生はどいつもこいつも売春やってるとか言ってたし」
「それは……偏見でしょう」
 持田が突っ込む。が、その口調はいつもの鋭さを欠いていた。
「文句はフランス人に言えよ。ま、とにかくだ。壊れゆく十代に明けない不況。去年は震災やら毒ガステロもあったし。九十年代はヤバいな。いよいよ人類滅ぶんじゃないか。それに比べりゃ、あんたらのやってることはかわいいもんだ。憶することなく、もっとガンガン暴走してけ」
「無責任な」と持田。
「じゃあ、帰るわ」
 バットを見物人の一人に押し付け、長谷川は雑踏の中に消えていく。バタフライナイフはポケットの中に入れられたままだった。

・・・
 
 片手におにぎり、もう一方の片手にリモコンを持ち、夕食とテレビのザッピングを同時にこなす。品がいいものではない。そばアレルギーの春奈は年越しそばを食べることもなく、大晦日といっても特に変わりのない夜を過ごしていた。
 しかし、『紅白歌合戦』を見て感じるものは違っている。これまでは単なる娯楽として、また歌手への羨望を抱かせるものとして存在する歌謡番組だったが、インディーズとはいえ音楽業界の末端に籍を置く者となったいまでは、純粋にただ楽しむというわけにはいかず、自らの立場から向き合うべき対象となっていた。歌うフリをし続けることへの拭えない罪悪感を伴って。心の平穏を求め、他のチャンネルに変えるも、民放でも歌謡番組にぶつかってしまう。最終的に無害なバラエティを放送する局にたどり着き、リモコンから解放された片手は茶碗に伸びた。

 テーブルが振動を吸収して鈍い震えを伝わらせる。春奈はPHSを手に取り、ショートメールをチェックした。京香から届いた年の暮れのあいさつ。あちらはちょうど、休憩中のようだ。年中休みなく二十四時間稼働のコールセンター業務に従事する京香を労い、メッセージを打つ。ポケベルは好きになれなく、互いに持つことのなかった二人は、PHSという利器を得たことから遠隔でのコミュニケーション機会が増えた。もっぱら、春奈にはショートメール送受信専用機だったが。

 今年も残すところ十五分となり、テレビでは各地で新年を迎える人々の模様を伝えていた。春奈はテレビを消し、急に思い立って、何度も読み返した手紙をまたも読む。十四歳の少女が綴ったファンレター。Letterの歌唱力とビデオに映る澄んだ瞳に勇気を与えられていると語った彼女の文体は、少女にしては筆圧が強く、鉛筆の黒鉛が染み出すように紙の裏から透けて見えるほどだった。
 第二弾のビデオがリリースされたあとも彼女からの便りは届いた。第一弾のビデオはすり切れるまで再生を繰り返したせいで、デッキを傷めてしまい、親からこっぴどく叱責されたと、悲しい顔をした少女のイラスト付きで書かれていた。この少女からのファンレターは京香に了解を得て、春奈が預かっていた。返事を書きたいと長谷川、持田に伝えたこともあったが、リスクを考慮した結果、それは認められなかった。

 気づけば零時を過ぎていた。一年前といまを比べ、その変化の激しさを思い返す。人の自死を目撃し、友人を得、人に暴力を振るいかけ、仕事を失い、声を失い、新しい仲間たちと出会い、新世界に足を踏み入れ、顔の知らない誰かを騙し、その誰かから憧れられ……。

 一九九七年が始まった。寿命診断ゲーム機が測定した春奈の没年は一九九六年。今年、春奈はもう存在していないことになる。

(第10話へ続く)

#創作大賞2024 #お仕事小説部門

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