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『ワイルドライフ』すべてがそこにある

日曜の夕方の実家の一人部屋、一人で昼寝していると聞こえてくる親の声を殺した夫婦喧嘩。

母親は感情を抑えきれずにたまに声のボリュームが上がる。

やめてよっ、とか、いやっうるさい!とかいうフレーズが涙声で聞こえてきて気持ち悪い。

バタバタと掴み合いの音と涙声が混ざり合うこと小一時間、あーこの家を早く出たい、別の街に行きたいよと心底うんざりしながら、そして最大限空気のようになりながら階下へ様子を見に行き、うなだれてる方の親に大丈夫?と声をかける。

家族は全員で最悪の時期を迎えることがある。

父を先頭に母、そして子供が列になる完全なる家父長制はなりを潜め、なんとなく家族が肩を並べてうすらぼんやりと今よりも少しマシな未来をボーッと見る。

私が18歳で家を出る数年前はずっとそんな感じだった。親も子供で子も子供。背中は見せてもらえなかったけど隣にはいた。

ワイルドライフの家族もみんな肩を並べてた。

仕事、プライド、お金、権力、住まい、恋、セックス、自立。

3人が肩を並べたそこに、これらもすべて肩を並べてて歩いてた。

だれかが最前列で、または最後列で盾にならなかったからこそ、全員でもろにそれらを被った。

わたしはそれから10年以上、家族からは逃げ続けているものの、肩を並べて全員で泥を被ったことを忘れない。


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